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エデン〜創造と破壊〜  作者: 近山 流
第2章 天界
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天狼の姫−天界到着−



これはちょうどリョウ達の元にリオルガルドが現れた頃。


「リオルガルドが消えただぁ?

お前自分が何を言っているのかわかっているのか!」


「は、はい。食事をお持ちしたところ、既に部屋はもぬけの殻で」


侍女のような服を着た天狼の女性は豪華な服を着ているがっしりとした体型の男にそう告げる。


「たく、あのやろう。

娘のこと棚に上げやがって。明らかにお前の血じゃねーか」


悪態をつく男。


その時また新しい男が駆け込んで来る。


「レガルス様!

ゲートに使用形跡が!!」


「ゲートだとぉ?」


甲高い声で驚きを表すするレガルス。


そしてハッとする。


「まさかあのバカ、リズちゃんを連れ戻しに下界に行ったのか!?

常日頃放浪癖に悩まされていたがまさか………それは予想外だった………」


深くうなだれているレガルスを見て、兵士の男と侍女の女はあたふたしている。

そんな二人を見て冷静さを取り戻したレガルスは咳ばらいを一つ。


「とりあえずリズちゃんの居場所は分かってるんだ。アリオレスも向かっているしそう長くはかからないだろう。

幸いまだ時間はある。それまでにできることをやろう」


レガルスの言葉に頷く二人。その後レガルスに指示を与えられた二人は足早にその場を後にした。



それから1時間…………


再びレガルスの元に駆け込んでくる先ほどの男。


「レガルス様!!」


「今度はなんだ!」


「またゲートが開いています!」


「なにぃ?

まだ1時間しかたってないんだぞ!まさかもうリズちゃんを連れ戻したってのか?」


あの父親に似て強情なリズちゃんが?と半信半疑ながらゲートへと急ぐ。


程なくしてたどり着いたゲートは淡く発光していた。これは使用されている証拠である。

ゲートとは天界から下界におりるために使うものだ。だからといって誰でも使うことができるわけではない。

天狼の中でもゲートを使用できるものは限られている。現在はリオルガルドとレガルスの二人。

そして、さらに現在レガルスは使用することができない。


以前勝手に開いてしまい、それがかなりの問題になったのだ。

なんせ、リオルガルドの娘が無断で下界に降りる手助けをしてしまったのだから。


そんなこともあり、現在ゲートを使用できるのはたった一人。天狼の長であるリオルガルドだけである。



発光しているゲートの中からいくつかの影が見えはじめる。


数は1…2…3…4……………13!?


明らかに多い影の数をいぶかしみながら出てくるのを待つ。

最初に出てきたのはやはりリオルガルド。


「おお。レガルス!なんだお出迎えか?随分と殊勝なことをしてくれるじゃねーか。やっと俺の偉大さに気づいたってか?」


「ふん、馬鹿も休み休みにしろ」


「おうおう。レガルス君は怖いねぇ」


リオルガルドの軽口をばっさりと叩き切るレガルス。一見仲の悪いような二人だが、そこにはなんとも深い絆があるようだった。


続いて現れたのはアリオレス達。アリオレス含め五人の内、何故か三人が肩に担がれている。

どうやら気絶しているらしい。

そのことにさらに眉を潜めながら次に現れる影を待つ。数は7。


あとはリズだけなはず。明らかに数がおかしい。

7つの影がゲートから出てくる。まず最初に目についたのは銀色の髪を持つ凛々しい女性。

レガルスが溺愛しているリズだった。

リズの姿を見たことで満面の笑みを見せるレガルス。だが、次の瞬間その表情は凍りつく。


リズが腕を組んでしな垂れかかっているのは、男。


「リ……リズ……ちゃん?あの…それ……はどう…いうことなのかな?」


情報処理が追いつかず言語能力が一時的に低下してしまう。


「お久しぶりですレガルスおじ様。リズ、ただ今帰りました。

そしてご紹介いたします。この男は私の主であり、私の全てを捧げた男でもあります」


何を言っているのかわからないという顔をするレガルス。

その頭の中では、「私の主」という言葉と「全てを捧げた」という一言が意味もなくリピートされる。


「何を言っているんだいリズちゃん。いくら嘘でも言っていいことと悪いことがあるんだよ」


優しく諭すように言うレガルス。だが非情にもリズは首を横にふる。


「おじ様、今言ったことは嘘ではありません。全て本当のことです」


そう言って少し顔を赤らめるリズ。この時隣にいる男−リョウがいつもとキャラ違くない?と心中で思ったことは本人だけの秘密だ。

もし口にだしたりしたらどんな凄惨な地獄が待っているのかわからない。人間とは学ぶ生き物なのです。


リョウが心中で一人芝居をやっている中、レガルスの視線が完全にリョウに向く。

リョウはそこにセルシオの影を見た。


すぐさま緊急離脱しようとするも時既に遅し。



「…………おい小僧」


静かな声。だがそこには凄まじい怒りがこめられているのを感じる。


「はい」


だが、もうリョウもこのようなことに慣れはじめていた。


「お前はなにもんだ。リズちゃんとどういう関係なんだ」


「だからおじ様。先ほど申したように」


「リズちゃん。ごめんね。俺はこの小僧に聞いているんだ」


リズの言葉に割り込みそう告げる。リズは再びなにか言おうとするが、リョウに制される。

リョウは組まれているリズの手を優しくはずし、一歩前に出る。


「俺、いや私はリョウ・エンドウといいます。リズは私の仲間です」


「ほう。ではリズちゃんが言ったことは嘘なんだな?」


勝ち誇ったようなレガルス。それと対照的な不満に満ちた瞳と目が合う。


(毒を喰らわば皿までってことか)


リョウはどこか開き直った調子で告げる。


「はい。確かに私はリズの仲間ですが、リズの主と言うのも事実です。

リズは私のものです。誰にも渡しませんよ」


ニコリと笑って爆弾を投下する。これにはさしものリズも呆然としていた。してやったりと満足げな顔をしているリョウ。


だが、すぐにそれは後悔にかわる。


「おい小僧」


地の底からはいでてくるような声音にビクッと体を震わせる。

凄まじいほどの魔力の奔流が見える。


リオルガルドと同レベル。一瞬でそう判断した。


レガルスは右手を払うような動作をする。

するとそこには風でできた巨大な剣が出現していた。

それが台風の目にでもなったかのように室内なのにもかかわらず、ひどい暴風がリョウ達に襲い掛かる。


「貴様、その罪万死に値する。

今ここで叩き切ってやる」


そう言い、風の巨剣を振りかぶる。


「おい、レガルス。そこまでにしとけ」


暴走するレガルスを抑えたのはアリオレス。


「止めるな。俺はこいつを叩き切ってやらねーと気が済まない」


「おいおい。だからったってこんな狭い密室で《カリバーン》を使うことはねーだろ。

下手すりゃ城がぶっこわれるぞ」


「うぐぐ………」


リオルガルドの言葉に渋々と《カリバーン》を消す。


「リオルガルド、なぜこの場に下民がいるのか詳しく聞かせてもらうぞ」


「そんなこと言わなくったってきちんと説明するから心配するな」


「わかった」


「話は俺の部屋でする」


ついて来いっといって歩きだすリオルガルド。リョウ達はそのあとについていく。


そうして着いた部屋にリョウ達は入っていく。


天狼の長に相応しい豪華な部屋。その奥にある玉座に座る。

部屋にいるのはリョウ達7人とリオルガルド・レガルス。

兵士の男達が数名ついてこようとしたがリオルガルドに断られたのだ。

大事な話しだから、悪いがお前達にも聞かせることはできないと。

そう言われた兵士達はもちろん反論した。反論と言っても口答え程度の可愛いものだ。

曰く、何故下民達を連れていくのか。いくら私達天狼に遠く及ばないとは言え、何をするかわからない。危険だ。ということだった。

それをリオルガルドはレガルスも連れていくという条件で無理矢理飲ませた。

最後の、下民は下民でも俺と対等な関係を結んだ下民だからな。という言葉でフリーズした兵士達を置いて部屋に入ったのだ。


「まぁまずはそこにでも座っとけ。長い話になるからな」


そう言い指を指す。しかしその指し示した空間にはなにもない。


リョウ達が首を傾げている中、アリシアは何食わぬ顔でそこに腰を落とす。そのまま後ろに倒れると思いきや、ちょうどいい高さで止まる。


それはまるで椅子に座っているようだった。

リョウは恐る恐るそこに腰をおろす。

重心が後ろにいき、倒れると思ったとき、尻に柔らかいクッションのような感覚が広がる。


よくみてみると魔法が使われている。空気椅子が実現された瞬間だった。


すげえと叫びながら場も忘れてはしゃぐリョウ・ネル・ミーヤの三人。

レナやエリアはその光景を呆れたように見ているが内心自分達も楽しんでいることがよくわかる。


「たく、お前にもあいつらみたいに可愛いげがあればなぁ」


「いえいえ私も十分喜んでいますよ」


「ほんと可愛いげのないやつだ」


リオルガルドの嫌みを華麗に受け流す。


「あなたたちもそろそろ落ち着きなさい。

ここははしゃぐ場ではありませんよ」


いつになくお姉さんモードのアリシア。

リョウ達も恥ずかしかったのか若干顔を赤くしておとなしく座っている。



「それで話していただくますか?」


「ふ、随分強引に本題にはいるんだな」


「いつまでやっていても埓があかないでしょう?」


「そりゃそうだな。だいぶ長くなると思うから心して聞けよ。

途中で寝たりしたらみじん切りになるからな」


「やっぱりそうだと思いました」


「ほう。気づいていたか」


「あたりまえです。こんなのおかしいですからね」


「じゃあなぜ座ったのだ?知っていて何故?」


「座らなければあなたは始めなかったでしょう?」


アリシアの声は確信に満ちている。


「まったくもって面白い女だ」


「アリシアさん?どういうことですか?」


レナが尋ねる。みんな同じ事を聞きたかったのか後ろでウンウン頷いている。


「その椅子は風の魔法でできているんです」


「はい。それはわかります。すごいですよね」


ただただ感心しているレナに内心謝りながら話す。


「そして、ここは長の部屋。にもかかわらず護衛の兵士一人いれない。

そんななかにこんな魔法があって何も細工がないわけないでしょう」


その言葉に驚いて跳び上がって空気の椅子から離れる。

それをニヤニヤ笑いながら見ているリオルガルド。レガルスは呆気に取られたような顔をする。

それを見てさらに笑みを深めるリオルガルド。


「おもしろいやつだろ?」


「こいつらはなんなんだ?」


「そういや、お互い自己紹介がまだだったな。まずは知ることが大事って言われてるしな」


そう言ってリョウ達の方に向き直る。


「俺はリオルガルド・フォン・ワーウルフ。天狼の長をやっている。こっちは−−」


「レガルスだ。小僧、リズちゃんをお前の毒牙から守って見せる。首を洗って待っているんだな」


「毒牙って…………」


げんなりするリョウ。そんなリョウにリズが補足する。


「主殿、天狼の長である印、把ーウルフの称号を貰えるのは一番強いものなんじゃ。そしてレガルスおじ様は父様の幼なじみであり側近」


「それって……」


「そうじゃ。ここには天狼のナンバー1とナンバー2が揃っているのじゃ」


唖然とする一同。天狼というただでさえ別格の存在のナンバー1とナンバー2が目の前にいる。夢だと思っても仕方がないような状況だった。


「でだ。リオルガルド、そろそろ説明してもらうぞ。下民を天界に連れて来た理由を」


「そんなだいそれた理由でもないんだがな」


リオルガルドはしかめつらをしたレガルスにあの時のやり取りを説明する。

途中さらに顔をしかめるようなことがあったが、最終的にはどこか諦めたような顔でため息をつく。


「一つ聞いていいか?」


頷くリオルガルド。


「そこの小僧がアリオレスの部下三人を瞬殺したことはまだしも、お前の拳を受け止めたってのは本当なのか?」


「ああ、そうだよ。この野郎片手で受け止めやがった」


「そうか…………ならばわかった。実力は認めてやろう。だがだからといってリズちゃんは渡さないがな」


「おいおいリズの親は俺だぞ」


「リズは立派な私の娘だ」


どちらも譲らない一進一退の攻防がしばらく続く。


しまいにはリズの小さかった頃の話を持ち出しはじめる二人の親バカに、羞恥心が上限をふりきったリズの怒声が響き渡るまでそう時間はかからなかった。


「まったく本当に父様達は」


リョウは未だプンスカ怒っているリズの姿を可愛らしく思いつつ、本筋に戻そうとする。


「では、私達も自己紹介を。私はリョウ・エンドウと言います。種族は人間族です。そしてそこにいるのが−−」


「レナです。人間族と似ているように思うと思いますが私は暗夜族です。」

エリアが一歩前に出る。


「私はリョウと同じく人間族でエリア・デル・ライトリードと申します。以後お見知りおきを」


「俺はネル。人間族だ」


「猫人族のミーヤ。必ず借りは返す」


リオルガルドに見破られたことがよほどくやしかったようだ。リオルガルドは楽しそうに笑う。


「おう。いつでも待ってやる」


そして最後。


「エルフ族のアリシアと申します。あなたたちのような素敵な方々とご一緒できるなんて光栄です」


「お前というやつは」


リオルガルドは苦笑する。


「受けた期待を裏切らないのが私の信条ですから」


信条か、としばらく爆笑しているリオルガルド。ようやくおさまり再び玉座に座る。



「自己紹介も終わったことだ。そろそろ天界大戦の説明をはじめるか」


リオルガルドは厳かに口を開いた。





やっと天界までこれた^^進みが遅いのが最大の原因。


天界大戦の説明は次回です。


ちなみにリズがどうやって下界にきたのかが明らかになりました。


では、

感想・評価・アドバイス・質問お待ちしております。



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