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エデン〜創造と破壊〜  作者: 近山 流
第1章 出会い
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番外編 レイリー 前編

番外編投下 レイリーさんのお話です。





「そうか。あいつは国をでたか」


「ええ。そのようですね」


「おいおいどうしたんだよレイリー。やけにあのガキが気になるみたいだが」


「ふ、気になる、か。ああ、そうかもしれないな」

「なんだよ。あのガキに惚れちまったのか?」


「ライザー、下品ですよ」


「はいはいすみません。これからはもっと上品を心掛けますよ」


「んもう」


なぜ俺はあいつの事が気になるのだろう。

いや、理由なら分かってる。


それは、あの時の自分に少し似ているから……………






「くそっ、なんてはえーんだ」


こっちはさんざん攻撃してんのにいつもギリギリの所で避けられちまう。

さすが獅子王、剣獣の中でも最強を誇るだけはある。


こうなったら出し惜しみしていられない。


「召喚!」


右手に鎗を召喚する。


動きが速くて攻撃があたらないのなら確実に当たる状況を作り出せばいい。


獅子王が爪を大きく振り上げ、まっすぐに突き刺して来る。

だが、それはすでにお見通しだ。


ガキーン!という甲高い音が鳴り響く。


「ぐぁぁぁぁぁ」


苦渋の声を上げたのは獅子王の方だった。


俺の十八番、召喚による空間固定現象を利用した一時的な絶対防御。


それによって獅子王の爪は粉々に砕け散る。


そしてその瞬間大きな隙ができたのを俺は見逃さなかった。


手に持つ巨大な鎗を獅子王に突き刺す。

見事に脳天から突き刺された獅子王はビクビクと震え絶命した。



「ふう。終わった」


獅子王を含む5体の魔獣の死骸を見ながら呟いた。



ここは冒険者ギルドの受付。

依頼の受諾や、報告などが行われるところだ。


「レイリーさん、おめでとうございます。

これよりあなたのランクはAとなります。

これでAランクまでの依頼は全て受けることができますが、Aランクから難易度が跳ね上がるので充分に気をつけてください」


その中で俺はAランク昇格試験の報告を行っていた。

試験の内容は獅子王、巨爪熊など、4体の魔獣の討伐。

最後の獅子王のスピードには多少苦戦したが無傷でやり遂げた。




俺が了解の意を唱えて、立ち去ろうとすると、受付嬢の言葉が耳に入ったのか、周囲がざわめく。


「レイリーだと!」


「おいおい誰だよそいつ」


「しらねーのかお前。無限剣のことだよ」


「なに!?無限剣だって!

あの、冒険者になって数週間でランクを跳ね上げてるって噂のか?」


「ああ、そうだ。そいつが今日Aランクになったんだってよ」


周囲から抜かれた、という悲痛な声が聞こえてくる。


その言葉に俺は内心ほくそ笑んでいた。

一言で言ってしまえば優越感。

これまで俺は最強だった。

否、そう思っていた。

誰も俺には勝てないと。


その思いがあのような結果を引き起こしてしまったとは思えない。

事実あれは運命だったのだろう。

ああなるべくしてなったという必然かもしれない。

ただあの時少し違う判断をしていれば未来は少し違ったのかもしれない。そう思わずにはいられないのだ。




その日は久しぶりの里帰りだった。

俺の故郷は『ど』がつくほどの田舎で大都市とはかなり離れていた。

そして俺は冒険者として生計をたてるためにその大都市を拠点としていた。


そこで俺は1ヶ月足らずでAランクの冒険者となった。


俺が魔法について学んびはじめたのは今から6年ほど前、12の頃だった。


最初はごく簡単な下位魔法から教えられた。

しかしごく簡単とはいっても魔法が使えないやつがいきなり使えるようになるほど人生そう甘くはない。


できるようになればあとは楽だが、それまではやはり努力をしなければならないのだ。


俺もそうなる……………はずだった。



俺はものの数分で下位魔法を会得していた。

それからどんどんレベルと難易度をあげていき、1ヶ月たったころには中位魔法をマスターしていた。

そして学びはじめてから1年後には指導者である父が持つ全ての魔法が使えるようになっていた。

まあその3年後、オリジナル魔法である召喚魔法を生み出すことになるのだが。


ただでさえ狭い村だ。

その噂は瞬く間にひろがっていった。

逸材だの、天才だの、村の救世主だのと持て囃され、連日村中がお祭り騒ぎだった。

もちろん俺は悪い気はしていなかったし、どちらかというと嬉しかった。


だから俺は冒険者となることを決意した。

頂点まで上り詰める。

それがこの人達の期待に応える一番の方法だと思ったからだ。

思い立ったが吉日。俺はすぐに両親に話した。

最初はしぶっていたが最後には了承してくれた。


俺はしぶったことに内心驚いていた。てっきり二つ返事で了承してくれると思っていたからだ。


主にしぶっていたのは母親のほう。

危ないことはしないでくれとしきりに伝えてきた。いくら天才的な力を持っていたとしても息子をわざわざそんな危ないところに送り出すのは親としては複雑な思いだったのだろう。

だから俺は絶対に傷一つつけないで帰ってくるという約束をした。

そして現にその約束は守られている。

これまでの戦いで傷ついたことは一度もない。

それどころか、俺自身があみだした魔法である召喚魔法から、無限剣などという二つ名までついている始末だ。


召喚魔法。その原理については恐ろしく長くなってしまうため割愛するが、簡単に言ってしまえば物質を転移させるというものだ。


どの属性にも属さないこの魔法はよほど稀少らしく、知り合った全ての人にやり方をきかれたほどだ。

だが、誰も召喚魔法を会得していないのが現状。

そんなこともあり、俺は召喚魔法の生みの親であり、この世界で唯一人の召喚魔法の使い手として成功をおさめていた。


そして今日は冒険者になるために村を出て以来初めての里帰りなのだ。



道中特に何もなく、時々襲って来る魔獣達を、蹴散らしながら二日かけて故郷へと向かう。





俺が村に到着したとたんに村は大歓声に包まれた。

Aランクの冒険者になったことは既に伝えていたため、結構な歓迎は受けるだろうとは思っていたが、これほどのものは予想しておらず多少めんくらう。


「「「「おにーちゃーん」」」」


村の子供達が俺の足に抱き着いて来る。

聞いた話しだが、俺は村の子供達のあこがれらしい。

なんとも恥ずかしい限りだが悪い気は全くしない。


そうして子供達に笑いかけていると、ふと視線を感じる。父と母だった。


俺はゆっくりと子供達を自分から離し、両親のもとへと向かう。


離された子供達は不服そうであったが、俺があとでいっぱい話しを聞かせてあげるというと目を輝かせて頷いた。



「父さん、母さん、ただいま帰りました」


「ああ、おかえり、レイリー」


「レイリー、あなた怪我はしてないんでしょうね!」


父の温厚な声とは反対の母の口調についつい笑みを浮かべてしまう。


「ああ、怪我どころかかすり傷一つおってないよ」

そう言うと、母はよかったと顔を綻ばせる。


母はその歳を感じさせないほど若々しく、俺と並んでいるところを知らない人が見れば姉弟に間違えられるほどだ。

もちろん分かっているかと思うが、俺が歳よりも老け顔ということでは決してないので悪しからず。


そんなこんなで久しぶりの再開に喜びを分かち合いながら我が家で母の作った料理を食べる。


「いつまでいられるの?」


「うーん。そうだなぁ。3日くらいかな。それ以上は厳しいかも」


「ええ!3日しかいられないの!

別にもうちょっといてもいいと思うわよ」


「う〜ん。次の仕事を受けないといけないからそんな長くはいられないんだよ」



そんな俺の言葉に母は不服そうに口ごもる。

俺の言い分は分かるが頷きたくないのだろう。


「レイラ、レイリーにもいろいろ都合があるんだから」


そうして食い下がる母を父がたしなめる。

これが少し前までの俺の日常だった。


「もう!あなたはそんなこと言って!

レイリーと一緒にいたくないの!」


「そんなことはないよ。俺だってレイリーと一緒にいたいさ。

でも冒険者っていう職業は一番自由なようで、あまりそうではないということだよ」


もと冒険者である父の言葉に渋々ながら納得したようだ。


「ぶぅ」


母はむくれながら黙ってしまう。

こういう時、ほんとに子供っぽいと思ってしまうことは秘密である。




そうして瞬く間に時は過ぎ去っていった。


村に帰ってきてから2日がたった。

村の子供達に冒険の話をしたり、建設業をやっている父の手伝いをしたりと充実した時間を過ごしていたレイリーに、それは唐突に訪れた。


「魔獣の群れだー!!」


村の西側から全力で走ってきたその人は開口一番そう叫んだ。


普通であれば、逃げ惑い統制がとれなくなり…………全滅。という結果に陥りかねない。

だが、彼等は落ち着いていた。

もちろん魔獣の襲撃になれていた、というのはあった。

だがそれだけでは命の危機に落ち着いてはいられない。


ならば何故か。

それはこれまできた魔獣の群れ全てを迎撃殲滅してきた自信だ。

自信は過信にならなければ絶大な力になる。


そしてこんなとき統制をとるのが、


「ライルさんは防壁を固めてください。ニアさんは子供達の避難をお願いします」


俺の父カリヤだった。


父、カリヤは先ほど述べたように元冒険者だ。それもAランクという一流の冒険者である。

依頼で訪れたこの村で母、レイラと恋に落ち、結婚、それからこの村で暮らすことにしたらしい。


そのカリヤを筆頭に他にも冒険者ではないが実力者ぞろいである。

冒険者ランクに換算すれば平均Cランクというのが父の読みだ。


元よりそれで間に合っていたのに加えて今は俺もいる。


世の中には絶対はないというが、よっぽどのことがない限り俺達の勝ちは確定していると言っても過言ではない。



バリケードを固め、魔獣を迎え撃つのに万全の体制となった。


だが………


双眼鏡であたりを探る係をやっていたラスカルが突如叫ぶ。


「もう一つの魔獣の群れだと!!」


その言葉にラスカルの周りにいたものもぎょっとする。


「お、おい!どういうことだ!」


「どうもこうもねえよ!

さっき確認した魔獣の群れと正反対の所にもう一つの魔獣の群れがあったんだよ!」



「う………うそだろ……」


「囲まれたってこと………?」


後方からも来るのであればバリケードをもはや意味を成さなくなる。


バリケードを作り、そこで足止めされた魔獣を各個撃破していくというのが基本スタンスだったため、それを封じられた後に残るのは、敗北。すなわち絶望。


「どうすれば………どうすればいいんだ!」


「な、何か方法がるはずだ!!」


瞬く間に統制を失っていく。


そんな中俺は声を張り上げた。



「後ろの魔獣達は俺一人でやります」


あたりが静まり返る。

そして俺のその言葉に驚いたのは母。


「無理だわ!魔獣の群れをたった一人でなんて!」


「母さん………。この状況、そうするしかないんだよ」


「だからってあなたが行かなくても!」


「母さん、俺はもう冒険者で、父さんと同じAランクなんだよ。

魔獣を倒すの俺達の仕事なんだ。

大丈夫だよ。あんなやつらすぐに倒して帰ってくるから」


母は押し黙る。

そのまま俺は父へと目を走らせる。


父は普段の優しい様子からは見えない絶大なる威厳を持ってそこに立っていた。

だが、俺も負けじと見つめ続ける。


折れたのは、父だった。


「ほんとに大丈夫なんだな、レイリー」


「はい、任せてください」

簡潔な言葉。だがこの状況ではそれで十分だった。


「分かった。ではそっちは頼んだぞ」


「父さんも死なないでください」


「ふ、息子のお前に言われるまでもない。

さっさと終わらせて母さんのおいしい料理を食べよう」


「はい、必ず」


そうして俺の未来を大きく変えることになる戦いが始まった。




番外編前半を投稿しました。


帝になる前のレイリーの話です。



詳しい後書きは後半で。

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