VS剣帝−日常−
新章突入
武闘大会が終わって翌日。
リョウは宴会の中にいた。
多くの冒険者、大会関係者がいる中で、リョウの周りには、リズ、レナ、ネル、マルタ、ガジル、ゼスのいつものメンバーに加え、ミーヤとアリシアそして何故かエリアまでいた。
優勝したリョウと四帝とのエキシビションマッチは武闘大会終了から二日後、つまり明日だ。
リョウはもちろん勝つつもりだが、その思いに比例して鬱屈とした気分になっていくのだった。
何故か、それは国とのいざこざに他ならない。
武闘大会の優勝者、つまり四帝を除く冒険者の中で最強の称号を手に入れてしまったのだ。
そんな人物が国に所属すれば一瞬で今のところ均衡が保たれていた国同士のパワーバランスが一瞬で崩壊してしまうだろう。
だからこそその人物を己の国に率いれるために各国躍起になっているのだ。
ところで、優勝者の勧誘に対し注意事項がある。
それはエキシビションマッチが終わるまで、一切の勧誘を禁ずるというものだった。
もちろんこれを破る国もいる。
その場合どうなるか。
四帝が動くのだ。
そもそも四帝というのは全ての国に対する抑止力として存在している。
どの国にも属さない。属してはならない。
たかが四人の冒険者ごときに国が倒れるはずがないと思うだろう。
だが四帝はそれをなすことのできる力を持っているのだ。
そもそも四帝に認定されるということは各国からたった一人で国と相手することができるということを認められたのと同意である。
だからこそ四帝は尊敬され崇拝までされるのだ。
しかし、四帝といえども人間だ。
祖国を擁護したりすることもあるだろう。
だから四帝は全ての人種(人間族、エルフ族、獣人族でという三大人種ではあるが)から選ばれるのだ。
さらに、もし四帝は何に属するかと聞かれた場合、こう答えるだろう。
冒険者だと。
四帝を敵に回すということはつまり冒険者全てを敵に回すことにもなるのだ。
そんな暴挙を犯すはずもないだろう。
しかし、残念ながらこの禁には穴がある。
あるといっても屁理屈のようなものだが。
勧誘を禁ず、であって干渉を禁ずではないのだ。
よってこの時期、国は自国の好感度上げに躍起になるのだ。
リョウとて例外ではなかった。
たった一日でかなりの使者が接触してきた。
その対応で恐ろしく大変だった。
以下はその中の一幕である。
「君が武闘大会で優勝したリョウさんですか?」
道端も道端、多くの人が行き交う商店街の中でリョウは突然声をかけられた。
しかし、リョウは特別緊張してはいなかった。
ほんのさっきまで会う人会う人に握手やサインを求められていたのだ。
人々のきらきらと輝いた期待に満ちた目を見せられるとどうにも断り切れず、了承しているうちに行列ができてしまっていたのには驚かされたが…………
そしてその行列をようやく捌き終えて一段落着いたところだったのだ。
リョウはまだ残っていたのかとばかりにリョウは疲労が少し滲んだ顔で応対しようとする。
そこでリョウは初めて気付いたのだった。
その男の雰囲気が今までの人とはまるで違うことに。
リョウは一気に警戒心を引き上げる。
リョウですか?と聞かれ、違いますと言える状況ではないためリョウは、はい、そうですが。と答える。
改めてリョウはその男を見る。
歳はリョウからすれば確実に年上だろう。
しかしまだ若さが窺える。
二十代後半あたりかと目星を付ける。
その男が身につけているのはスーツ。
しかも相当高級そうな物だ。
そこからもこれまでの人達とは違い、上流階級の人間かはたまたその使者か。
国からの勧誘が来るという話は聞いていたが、いざ対面してみると、独特の威圧感を感じる。
「そう強張らないでもいいですよ。
おっとすみません。
自己紹介が遅れてしまいました。
私はケイン、レヴァン王国に使えるものです。
ちょっとお茶でもしませんか?」
いかにも突然だったが、ケインの浮かべる温厚そうな笑みがそれを感じなくさせている。
その笑みだけを見ればとても悪い人には見えない。
しかし、リョウの直感は油断するなと告げている。
どうするか………
リョウは思案する。
本音を言えば行きたくない。
しかし、今後のことを考えるとできるだけ国とのいざこざは避けたいのも事実。
そもそもリョウはどこの国にも所属するつもりはない。
ただコネクションを持っておきたいというのもある。
リョウは考え、結果・・・・・・・
「わかりました。この後用事があるので余り長くいれませんがそれでもいいのなら」
行くことにした。
「ええ、もちろん構いませんとも」
ケインは満面の笑みを浮かべていた。
舞台は変わりレストランの中。
いかにも高級そうな店だった。
リョウが自分が場違いだと強く思うほどの高級感。
そこでケインは切り出した。
「まずは改めて、優勝おめでとうごさいます。
剣帝との試合も楽しみにしていますよ」
「はい。がんばります」
「私も見ていたんですがなんとも素晴らしい戦いぶりでした」
「それはどうも………」
その後も会話はどんどん続いていった。
実際リョウは拍子抜けしていた。
もっとがっつり勧誘の話が来ると思ったのだ。
しかしその手の話は一度もない。
終始世間話やらの当たり障りのない話。
ただそのところどころに自国アピールが入っていたのにリョウは気付いていた。
エキシビションマッチが終わるまでは直接の勧誘はないという話はどうやら本当のようだった。
ケインは本当に話し上手だった。
会話が途切れることがなかったことからその手腕が窺える。
「ではまたお会いましょう」
「ああ、では」
しかし、一方で別れの言葉がでるまで終始ケインのペースだった気がしなくもない。
ただ悪いことばかりではなかった。
ケインとの対談で気持ちに少し余裕ができたのか。
そのあと次々と現れた、数多の国からの使いとの対談ではさほど緊張せずに行けたと思うのだ。
だがそれでも心的疲労は拭えなかった。
そして今に至るのだ。
「おい!リョウ!」
後ろから突然声がかかり振り向くと、そこにはネルが立っていた。
「どうしたの?」
リョウは尋ねる。
するとちょっとこっちにきてくれ、と神妙な顔つきで言われたのだ。
リョウも何か重要な話なのかと身構える。
二人は皆が騒いでいるところから少し離れたところに行く。
そして、ネルが重々しく口を開いた。
「リョウ………一体何がどうしてこうなっているんだ」
何一つ明らかになっていない問い掛けにリョウは首を傾げ疑問符を浮かべる。
「なんで………なんでお前ばっか美女、美少女に囲まれてやがるんだちくしょう!!」
そう言ってネルは壁を思い切り殴る。
かなり反動がきたようで手をブラブラと振っていたが………
「え、はい?」
リョウは思わず聞き返す。
「てめぇ、この期に及んでとぼけやがるか………
あーそうかいそうかい」
「いや、だから………」
リョウはなんのことだか分からず再び聞き返す。
「こんにゃろう。
俺から言わせるつもりか。
ああいいよ。言ってやるよ!
ただでさえリズさんにレナという美女が揃ってんのに、それに加えてミーヤにアリシアさんに千光まで!
おいおい、こりゃあ一体どういうことなんでしょうかねぇリョウさんよ。
ハーレムでもつくるつもりなのか?あん?」
リョウはチンピラのような口調でネルが言わんとしていたことにようやく気付いた。
というかもう言われているのだが。
たしかにリズ、レナ、アリシア、ミーヤ、エリアは百人中百人が認める絶世の美女、美少女だろう。
「いや、あはは。
別にそういうつもりじゃ………」
リョウは曖昧にごまかそうとする。
その瞬間ネルの目がきっと細まった気がした。
その瞬間真空刃が飛んで来る。
リョウは慌てて撃ち落とす。
その刃には明らかに殺意が篭っていた。
「おまっ!ネル!
今殺す気だっただろう!!」
リョウはネルに猛抗議する。
しかし、ネルの口から放たれたのは
「ち、防ぎやがったか」
舌打ちと悪態だった。
それにリョウもかちんとくる。
「おいおい。ネル
何してくれてんだ。
やんのか?」
「はっ、いいぜ。やったろうじゃねーか。
ここらでどっちが強いか教えてやるよ」
「お前誰に言ってんだよ。
俺は武闘大会優勝者だぞ」
「だからなんだ。
俺がかったらお前のハーレムは俺が貰う」
「は?意味わかんねーぞ?」
お互いチンピラのような口調になりながら言い合う。
しかしどうやらネルに誘導されていたらしく、もし勝負にネルが勝ったらリョウのハーレム(リズ、レナ、アリシア、ミーヤ、エリア)がネルの物になってしまうらしい。
そもそもリョウはハーレムだなんて認めた覚えはないのだが。
勿論、ハーレムという響きは男の夢のようなものだろう。
この世界に来る前にもそうならないかな〜と思ったことは一度や二度ではない。
ただ実際そのような状況に陥ってみると話は別だ。
何故だか5人と一緒にいると殺気に晒されているような気分になるのだ。
なにはともあれ、ハーレムを認めるわけにはいかない。
そう簡単にいくようなものでもないのだし。
しかし、それをネルに伝えたところでこの男はとまらないだろう。
この男は全ての男の怨念を背負って仇敵(ハーレム持ち)を消すつもりなのだ。
それならばその仇敵として受けてたとうではないか。
気付くとネルは剣を抜き、風を這わせている。
どうやら《纏い》を放つつもりらしい。
それならとリョウはナイフを抜き放ち(太刀は持ってきていない)、炎を纏わせる。
しかし二人が前傾姿勢になり踏み出そうとした瞬間、横から強風が吹き、吹き飛ばされる。
リョウとネルは勢いよく壁に衝突し、へなへなと倒れている。
「一体こんなところで〜何をしているんですか〜?」
風を放ち声をかけてきたのはアリシアだった。
「何を」
リョウは思わず声を出していた。
いくら熱くなっていたとはいえ攻撃に気づかないなんてことはありえない。
気配を無意識に感知し反射的に防御または迎撃をするはずだ。
そしてその疑問はアリシアの後ろから現れた人物によって解決された。
「アリシアさんの魔法にユニゾンして私の暗殺魔法を追加したんですよ」
その人物とはレナだった。
暗殺魔法、完全に気配を消すことができるその魔法ならリョウに攻撃を感じさせないことも可能だろう。
しかし、この短時間でユニゾンを成功させるほど仲良くなったのだろうか。
複数人と行うユニゾンはよほど息があっていなければ難しいのだ。
威力、魔力量など少しでも違ければユニゾンは成功しない。
「いつの間にそんな仲良くなったんだ?」
リョウは思わず聞いていた。
そしてそれにこたえたのはリズだった。
「利害が一致していたからじゃろう。
ところで何故こんなところで戦闘沙汰になったのかと我らは聞いておるのじゃが」
「いや………」
リョウは口ごもる。
何故か。
それはリズの背後に阿修羅のオーラが見えているからだった。
リョウはがちがちと噛み合わない歯をならしながら震える。
そして視界の端にゆっくりと逃げようとしているネル姿を見た。
刹那、リョウは《加速》を発動し、ネルに拳を食らわせ、逃がさないようにすると同時に自らも離脱を試みる。
しかし、それは叶わなかった。
腕が誰かに掴まれていたのだ。
ミーヤだった。
さすが獣人族というべき反応速度だ。
この時ばかりはその反応速度を怨むほかない。
ミーヤは首を申し訳なさそうに横にふっている。
その表情はもうあきらめてくださいといっているようだった。
しかしまだ生を諦めらめられないリョウはミーヤの腕を振りほどこうとする。
だが体が動かなかった。
何かに拘束されているような感覚。
しだいにそれがなんなのかわかっていった。
「エリアか………」
リョウは悔しそうに呟く。
するとリズの後ろからエリアが現れ、嬉しそうに言った。
「今から『おしおき』だそうだ。
死なない程度にしてやるつもりだから、まぁ安心しろ」
「安心できるかぁぁぁあああ」
リョウの心からの叫び声が店の中にこだました。
その後、無事『おしおき』は完遂されたそうだ。
今回思ったことなんですけど…………
頭脳戦が書けねぇorz
なんかすごい中途半端になっちゃったきがする。
バトルの時はあんなにすらすらかけるのに。
書けるようにがんばんないとなぁ。
ところで今回は四帝について具体的に説明してみました。
人物がでるのは次回ということで
では
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