武闘大会−本選開始−
おそくなりました
『これより武闘大会本選を開催します!!』
その瞬間、ヒュードーン、とたくさんの花火が空へとあがる。
『予選を勝ち残った32人の猛者達。
ついに大陸一を決める時が来ました!
どんな戦いを見せてくれるのか。
盛り上がっていきましょう!!!』
「「「おおおおおおお!!!!!」」」
歓声があたりに立ち込める。
『それではまずは第一回戦。
第一から第四試合までの出場者は集まってください』
「じゃあ行ってきます」
そのアナウンスを聞きミーヤが立ち上がる。
ミーヤはトップバッター、第一試合目なのだ。
対戦相手はエリア。
ちなみにレナは、第八試合。
ネルは第十試合。
仮面の男は第十一試合。
ライアンとマルタは第十五試合。
リョウは最後第十六試合だった。
「おう、頑張って」
リョウのエールにミーヤは嬉しそうに頷き、集合場所へと向かって行った。
『武闘大会本選第一回戦エリア・デル・ライトリードVSミーヤ、開始!』
アナウンスと共に戦いの始まりを告げるブザーが高らかに鳴り響く。
ミーヤは同時に獣人族の身体能力を生かし、一気に距離を詰めていく。
一方、≪千光≫ことエリアは腰の鞘からレイピアかと思われるほどの細い刀身を持つロングソードを音高く抜きさる。
しかし、その場から一歩も動こうとはしない。
その間にもミーヤはどんどん距離をつめ、二人の距離は数メートルというところまでせまった。
リョウはミーヤと戦ったことがあるからこそ言えることがある。
ミーヤは速さだけじゃないと。
おそらくエリアはミーヤの攻撃を受け止められると思っているのだろう。
しかし、あのスピードから放たれるパンチはもはや自動車事故並だ。
ところが、エリアは恐るべき行動をとった。
ミーヤが攻撃に使用した右手の横に剣の腹をぶつけ、綺麗に受け流したのだ。
リョウは驚愕する。
今の芸当は相当の腕、そしてなによりも絶対的な自信と度胸がなければ不可能だ。
ほんの少しでもタイミングがずれていたら大怪我だっただろう。
エリアは体勢を大きく崩したミーヤに、そのまま剣で横一文字に切り付ける。
しかし、そこはミーヤ。
流石としか言いようのない、恐ろしい反応速度で後ろに下がり剣をかわす。
ミーヤも含め、誰もが攻撃を完全にかわしきったと思った。
だが………
何故かミーヤはそのまま倒れてしまう。
皆は唖然とし、そこで初めて気づく。
ミーヤの腹から背にかけて光の鎗が貫通していることに。
事実、リョウも気付いていなかった。
「………うそ……だ…ろ」
リョウの口から小さな声が漏れる。
『エリアVSミーヤ
勝者、エリア』
アナウンスを聞き、リョウはあらためて呆然とする。
一体いつのまに?
どうやって?
そういった疑問が頭の中を支配していった………
その間に大会運営係がミーヤを担架で医務室へと運んで行った。
「………う……ううん」
あれから数十分程たち、ミーヤは目を覚ました。
徐々に明確になっていく視界の中で、こちらの顔を心配そうに覗き込んでいるリョウの顔をとらえた。
「大丈夫か!」
ミーヤが目を覚ましたことに気づき、リョウは少々大きな声で言う。
基本、武闘大会では殺しはなしだ。
しかし、これまで死人が一人もいないというわけではない。
数人の死亡者がでている。
だから、リョウは気がきでなかった。
ついこの間初めて会った少女だが、リョウの中では親しい人の分類にはいっているのだ。
医者の話によると命に別状はないらしい。
が、それでも安心できず、目を覚ますまで付き添っていることを許可してもらったのだ。
「はい。なんとか」
そう言ってミーヤは薄い笑みを浮かべた。
「ふ〜」
リョウはとりあえず安堵の息をもらす。
そして、改めて真剣な顔で尋ねる。
「で、何がおこったんだ?」
ミーヤは申し訳なさそうに首を横にふる。
「すいません。
それが私にもよく分からないんです。
避けたと思ったらいつのまにか…………」
そこで自分を突き刺した光の鎗を思い出し、口を閉ざす。
「そうか。わからないか」
「はい。ごめんなさい」
「いや、大丈夫。何はともあれミーヤが無事で良かった」
リョウはミーヤの猫耳をなでる。
ミーヤは気持ち良さそうにし、頬をそめ、
「……あ、ありがとうございます」
と、消え入るような声で、最後は尻つぼみになりながら恥ずかしそうに礼をいった。
リョウはもう大丈夫と判断し、リズに念話を送る。
これはリョウが≪創造≫で造った通信機を介して思考のやりとりをするものだ。
(おう、主殿か)
(ミーヤが目を覚ましたよ。
大事はなかったみたい)
(それはよかったの)
(で、そっちはどう?)
(レナとネルの試合は終わったぞ。
二人とも勝ったようじゃ)
(うん。それはよかった)
(で、今から仮面のやつの試合が始まるんじゃがどうする?)
(そうだね。結構気になるし、ミーヤももう大丈夫みたいだから俺も見に行くよ)
(了解じゃ)
リョウは念話を切り、ミーヤに今から試合を見に行く主旨を伝え、観客席のリズのもとまで行った。
ミーヤは安静にしていなければならず一緒に行くことはできなかった。
「リズ」
「おう。早いの。ちょうど今から始まるところじゃ」
「よかった」
そう言ってリョウは闘技場を見る。
そこには拳に鉄鋼をつけている(おそらく拳闘士なのだろう)男と、何も武器らしきものを身につけていない、仮面に黒ローブを着た男がいた。
『さぁ、まいりましょう。
第十一回戦、開始!!』
ブザーがなり仮面ではない方の男、ザイが拳をふりあげ、《ウィンドブースト》で距離を詰める。
一方仮面の男は何もしない。
ただぼんやりと立っているだけだ。
ザイは右から、左から次々と拳をふるう。
しかし、仮面の男はなんでもないように軽々とよける。
痺れを切らしてきたザイの動きがだんだん雑になっていき、隙がではじめる。
しかし、その隙をつこうとはしない。
完全に遊んでいるのだ。
遊ばれていることに気づき、ザイも悔しさで顔を歪ませ、さらに鋭い攻撃を放つがそれでも仮面の男には届かない。
リョウは思った。
レベルが違いすぎる、と
この男はさっきのエリアとほぼ同等の力を持っている。
その時、遊びに飽きたのかザイの腹に仮面の男の拳が突き刺さる。
たった一撃でザイは崩れ落ちた。
何も分からないやつらはこの試合はザイの一方的な試合だと思っていたのだろう。
皆、唖然としている。
アナウンスも少し遅れた。
『ザイVS仮面
勝者、仮面』
仮面てwwとリョウは少し吹き出してしまう。
しかし次のアナウンスでリョウは気を引きしめることになる。
『十三から十六試合に出場する方は集まってください』
ついにリョウにも召集がかかったのだ。
リョウは歩きだす。
『これより第十六試合を始めます』
召集場所からは試合が見れないようで、いつの間にかリョウの出番がやってきていた。
リズによるとマルタはライアンに敗れてしまったらしい。
よってリョウがこの試合に勝てば、二回戦で優勝候補の一人である、リシュテイン公国、近衛大隊隊長(実質リシュテイン公国最強)、ライアン・ドラ・バシュリアドと戦うことになるのだ。
リョウとしてみれば勘弁してくれという話である。
何はともあれこの試合を勝たないことには何も始まらないのだが。
リョウの相手はクロードというローブを羽織った男だった。
立ち振る舞いから見て、剣士タイプではない。
おそらく魔法メインなのだろう。
リョウが今まで戦ってきたものとは違うタイプのようだ。
『一回戦もついにこれでラスト
第十六試合、始め!!』
リョウは様子見のため、その場を動かない。
本選に出るほどの実力者だ。
用心にこしたことはない。
すると、クロードが動いた。
魔法の詠唱を始めたのだ。
「祖は水、全ての物を流したまえ《ウォーターウェーブ》」
クロードの手から大量の水が沸き起こり、リョウに襲い掛かる。
リョウはそれを5メートルを超える垂直大ジャンプでかわす。
「祖は雷、かの者を貫きたまえ《サンダーランス》」
間髪入れず、空中のリョウに雷の鎗が飛んで来る。
リョウは腰からナイフ抜いて弾き、着地する。
それを見計らったかのように、クロードは魔法をはなつ。
「祖は土、かの者を押し止めよ《サンドロック》」
リョウが着地した地面が形を変え、リョウの足を固定し、動けなくする。
ちなみに魔法の詠唱だが、これまでのものでもわかるように、まず、祖は〇の所に属性を入れる。
その後は自由だ。
自分がイメージを明確にできるものであれば問題ない。
イメージさえできていれば詠唱など正直どうでもいいのだ。
だからこそ無詠唱というものがある。
リョウが身動き取れなくなったことを確認し、クロードはさらに魔法を放つ。
「祖は炎、全てのものを燃やし尽くせ《ヒートバースト》」
高出力の炎(火の派生属性)がリョウに襲いかかかる。
しかし、炎はリョウに届かなかった。
リョウの前に突如現れた水の壁に阻まれたのだ。
「なに!!」
クロードの顔が驚きで覆われる。
この世に魔法を使えないものはほとんどいない。
それは分かっていた。
しかし、これまでの試合でリョウは体術のみ、つまり魔法を使わずに勝っていた。
クロードは超近接タイプのリョウ対策に遠距離から攻めるという方法を取っていた。
一番大切な、リョウが魔法を使う可能性を考えていなかったのだ。
リョウの行動を押さえている足元の土を同じ土魔法で中和し、土から抜け出す。
足枷が取れ自由になったリョウは右手をあげる。
その瞬間、リョウの手から炎弾がはなたれる。
「祖は水、我を守る壁となれ《ウォーターウォール》」
クロードは急いで水の壁を作り上げる。
それはかなりのスピードだったが、詠唱有りと詠唱無しには絶対的な差がある。
それは発動速度だ。
いつもであればそれはさして問題になることはないのだが、この状況に関してはそのほんの少しの差が命取りになる。
それでもクロードは(流石本選に出場しただけはある)間一髪、《ウォーターウォール》によって炎弾を防ぐ。
クロードの顔に安堵の表情が出る。
しかし、《ウォーターウォール》が消えた瞬間、表情は凍りついた。
すぐ目の前まで接近していたリョウによって………
クロードは直ぐさま詠唱を開始しようとするが、この距離では、魔法より拳の方が届くのが早い。
クロードは鳩尾に重い一撃を受け、意識を失ったのだった。
『リョウVSクロード
勝者、リョウ』
アナウンスがなり、一回戦全ての試合が終了した。
まずはお詫びを、
そろそろ定期試験が始まってしまい。
投稿が遅れる可能性があります。
なので、できるだけ早く投稿するつもりでいますが、3月までは不定期投稿にさせていただきます。
それでは今回の話について、
今回はエリアについていろいろ伏線?を入れてみました。
鎗の謎について分かった方も何人かいるかと思います。
解明はもうちょい先になると思います。
次回、
リョウVSライアンです。
これで一話かけるかな
まぁがんばります
では、
感想・評価・アドバイス・質問お待ちしております。




