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エデン〜創造と破壊〜  作者: 近山 流
第1章 出会い
27/73

武闘大会−予選決勝−



『さぁはじまりました。予選もついに決勝。

決勝出場によって、両者の本選出場が決定しました。

しかし、そこは冒険者、我が最強であることを示すため、力いっぱい戦っていただきましょう』


予選決勝からは実況が入る。


リョウは苦笑いしながらも実況の前説を聞いている。


リョウの率直な感想はどこもかわらないな〜だった。


元の世界と今の世界、全く違うのに人の心理は同じらしい。


『では、予選Cブロック決勝まで上り詰めたのはこの二人、人間族のリョウ選手と獣人族のミーヤ選手です』


すると歓声が上がる。


リョウは思った。


少々大袈裟すぎやしませんか、と。


本選の決勝ならこの盛り上がりは分かる。


しかし、まだ予選だ。


この先ずっとこのような騒々しい声を聞き続けると思うと少し憂鬱になった。


対戦相手、ミーヤを見るとリョウと同じように顔をしかめている。


リョウがミーヤを見つづけていると、目があった。


「人間族だからって手加減しないわよ」


「まぁお手柔らかに頼むよ」


『両者の間には既に火花が散っているようです。

それでは始めましょう。

Cブロック決勝、開始!!』


戦いの火蓋は切って落とされた。




ミーヤは開始の合図と共にリョウに向かって駆け出す。


同様にリョウもそれに答えるように駆け出す。


そのまま距離を詰め、両者が交錯し、拳がぶつかり合うと思った瞬間ミーヤはリョウの視界から消えていた。


ミーヤはリョウの真後ろにいた。


≪破壊≫によって強化されてはいないが、それでもリョウの動体視力は人間離れしている。


要するに、人間では視認することすら難しい速度で移動したということだ。


ミーヤはリョウの背後から獣人族特有の強靭な爪で切り掛かる。


しかし、リョウは後ろを振り返ったり、防御したりすることなく、そのまま前方へと走り抜ける。


これにはミーヤも多少驚いたようだった。


後ろを取られれば振り返ってしまうのはほぼ無意識の行動だろう。


それを後ろを確認せず、そのまま走り抜けるなんて相当の精神力がなければ難しい。


ミーヤはバックステップで距離をとり、再び畳み掛ける。


リョウの右前方から来たと思えば、左後方から爪で切る。


爪を防いだと思った時には既に、ミーヤの体は頭上にあり、強烈な踵落としをくらわせる。


リョウは回避は無理だとして、頭上に腕を交差し衝撃を受け止める。


受け止めきれなかった衝撃によってリョウの体が軽くのけ反る。


そしてがら空きになったリョウの腹部に思いっきり拳を打ち込む。


この日始めてリョウが攻撃をくらった瞬間だった。



リョウは後ろに吹き飛びながらもなんとか体制を立て直す。


「流石にちょっとなめてたかな。

まさか獣人族のスピードがこれほどとは……」


リョウはミーヤのスピードは獣人族だからだと思っているが、実はそれだけではない。


ミーヤは風属性の下位魔法ウィンドブーストを併用しているのだ。


獣人族はたしかにあまり魔法には向いていない。


しかし、使えないというわけではないのだ。


「こりゃ、

《加速》使わないとダメかな」


リョウが呟いた時、ミーヤが口を開いた。


「なぜあなたは剣を使わない」


声質からしてどこか怒っているようだった。


「剣?」


「しらばっくれるな。あなたの後ろにある剣ことだ」


ああこれね、とリョウは大太刀に手を触れる。


「で、これがどうしたの?」


「っつ!!

おい、あなたは人間族だろ。何故武器を使わない」


「え、だってそっちも武器使ってないし」


「あなたは馬鹿なのか?

それとも私を舐めているのか?」


ミーヤの尻尾が不機嫌そうに揺れる。


「人間族のあなたが獣人族である私に武器を使わず勝てるわけないだろう」


ミーヤのその言葉にリョウはニヤリと笑う。


常識をぶち壊す。


これ以上に楽しいことはないだろう。


「ああ、そうだな」


と言って、リョウは大太刀を地面に置く。


「なんのつもりだ」


ミーヤの語気が荒くなる。


「何のつもりも何もない。

俺は素手で戦う」


「あなたはやはり私を舐めているようですね。

後悔させてあげます!!」


そう言って、《ウィンドブースト》を発動し走る。


ほんの数秒でリョウとミーヤの距離はゼロになる。


ミーヤが手を振り上げた時、リョウは小声で呟くように言った。


 アクセル

「《加速》」


そしてミーヤの爪がリョウに届くかと思われた瞬間、リョウの体がぶれ消える。


次の瞬間、ミーヤは右側から強い衝撃を受けた。


完全に予期していなかったため、小柄なミーヤはかなり吹っ飛ぶ。


それでも流石というべきか、空中で体勢を整え着地する。


ミーヤの視線は自分を吹っ飛ばした人物、リョウに向かいつづけている。



「あなた、今何をしたの」

「なんだろうな」


「くっ!!」


ミーヤはリョウ、そして攻撃に気付けなかった自分に苛立っていた。


より、ミーヤの攻撃は加速していく。


そのかなりの速度を持つ攻撃をリョウは全てかわす、まるで攻撃をみきっているかのように。


そしてまたリョウの姿が一瞬ぶれたと思ったら、後方からかなりの衝撃を受ける。



−−−Side ミーヤ−−−


一体どういうことだ。


攻撃が全然あたらない。


突然だった。

ついさっきまでは完全にこちらが優勢だった。


たかが人間族。

人間族の数倍の身体能力持っている獣人族の足元にも及ばない…………はずだった。


しかし、現に私は押されている。


さらにこいつは武器を使っていない。


人間族のもっとも優れた点である武器を使っていないのだ。


そして、魔法も使っていない。


いくら魔法には才がない獣人族でも、私は一応、魔法を使える。


私の目は今だ魔力を捕らえていない。


要するに魔法を使っていないということだ。


この男は純粋な体術だけで戦っているのだ。


何が起こっているのかさえわからず、ひたすら攻撃を受け続ける。


「強い」


その言葉は自然と口から出ていた。


これほどの相手となんて戦ったことがない。


最初の苛立ちはどこえやら、私は喜びでいっぱいだった。


こんな強い相手と戦っていることに、

自分が初めて全力で戦える者が現れたことに。


今は予選決勝だ。


本来であれば、すでに本選出場は決まっているのだから、ある程度は手を抜き、本選に備えるというのがセオリーだ。


私も最初はそのつもりだった。


だけど、私の目の前にいるこの男の舐めた言葉を聞いたとき頭に血が上り、ついついやりすぎてしまった。


しかし、今はそんなことどうでもいい。


予選?そんなこと知ったことか。


本選で再びこの男と戦える保証はない。


だったら今ここで私の全身全霊を持って叩き潰す。


人相手に使うのは初めてだ。


なぜなら相手が死んでしまうから。


しかしこの男なら、

この常識外れの男ならもしかしたら私の全力を受け止めてくれるかもしれない。


だんだん思考がクリアになっていく。


さぁはじめよう。


 ビーストアウト

「《獣化》!」



−−−Side out−−−−



「なんだ?」


リョウは《加速》を巧みに使い、次々と攻撃を与えていた。


普通なら顔が険しくなるはずだ。


しかし、どうしたことか今、距離をとった彼女は笑みを浮かべている。


「なにかするつもりなのか?」


リョウは警戒心を強める。


そして、彼女、ミーヤは言う。


 ビーストアウト

「《獣化》!」


その瞬間、ミーヤの体は毛で覆われ、爪がかなり伸びていく。


まさに獣だった。


「なに!?」


リョウが驚いたのも束の間、獣化したミーヤが凄いスピードで突っ込んで来る。


さっきまででさえ充分速かったのに、今はその数倍のスピードで迫って来ている。


≪破壊≫によって動体視力も格段に上がっているリョウには見えるが、観客には視認すらできていないだろう。


そう思いながら、リョウは体を捻り最小限の動きで攻撃をかわす。


かわされたミーヤは一瞬驚きの表情を見せるが、それもすぐに笑みに変わる。


そこからは本当に光速のインファイトだった。


獣化したミーヤと本格的に《加速》を発動させたリョウ。


リョウが距離を詰めるため腰を落とした、と観客が思った瞬間、すでに二人の体が衝動していた。


あたりにたくさんの砂埃を巻き上げながら、


観客がこうとしか認識できなかった間に、リョウはミーヤの爪(爪といってももはや小さな剣に近い)に対抗するため、腰からサバイバルを引き抜き、三度切り結んでから、鍔ぜり合いを行う。


観客が認識できたのは鍔ぜり合いを行っているところだけだった。



『何が起こってんだ?』


『全く見えねー』


『速すぎだろあいつら』


観客席からはこのようなコメントが飛び交いつづけている。



そのかんにも、リョウとミーヤの猛攻は続く。


ミーヤが足を振り上げ、ハイキックをする。


それを上体を少し後ろに下げる事で回避する。


そして上体を戻す勢いを乗せ右ストレートを放つが、しゃがんだミーヤにかわされる。


ミーヤはリョウの足を刈るようにしゃがんだ体勢のまま回しげりを放つ。


リョウはバック転の要領でそれをかわし、ついでに蹴り上げる。


ミーヤはバックステップでかわす。


そしてある程度離れた二人は再び駆け出す。


何度目かの衝突が起きると思われた………しかし、そうではなかった。


二人がぶつかる寸前ミーヤは足を止めしゃがみこむ。


普通なら足が粉々になるような所業だが、獣化によってさらに強化されたミーヤの肉体には何の問題もない。


突然しゃがんだことによってリョウの拳は空を殴る。


ミーヤは完璧にリョウの懐に潜り込んでいる。


ここで初めてリョウの顔に焦りが見える。


そんなリョウにミーヤの渾身のアッパーが炸裂する。


リョウは咄嗟に強化を施した左手で受け止めるが、大きく宙に弾き飛ばされる。


この程度ではリョウを倒すどころか傷一つ付けられない。


しかし、これは布石にすぎなかった。


空中では回避ができない。


それがねらいだった。


ミーヤの全力の一撃を与えられるのだ。


ミーヤは跳び上がる。


リョウの元へ一直線に


ミーヤの右手が風を纏う。


さらにスピードで生じた力を全て右手に注ぐ。


獣体術奥義インパクト!!」


ミーヤの必殺の一撃が回避のままならないリョウへと届く。


否、届かなかった。


リョウの交差した腕によって止められていたのだ。


アイアン

《鉄壁》、防御力を格段にあげる技だ。


本来であれば全身に作用する力を手だけに集中することによってミーヤの一撃を防いだのだ。


ミーヤは驚きと喜びが入り混じったような顔をする。


そして必殺の一撃が防がれ硬直状態になっているミーヤに落下の勢いを乗せた右ストレートを放つ。


それはミーヤに当たり、二人そろって地面に落下する。


舞い上がった砂埃が二人を隠す。


砂煙を断ち切って現れたのはリョウだった。


『Cブロック決勝

リョウVSミーヤ

勝者、リョウ!!』


アナウンスがあり、突如、歓声が鳴り響いた。





ついに予選が終わった。


長かった………



次回

予選が終わり本選前日をやります。



では、

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