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エデン〜創造と破壊〜  作者: 近山 流
第1章 出会い
26/73

武闘大会−予選準決勝−


「やっぱり準決勝はお前が相手か、リョウ」


予選準決勝、リョウの対戦相手は予想どうりガジルだった。


「みたいだな」


「手加減は無しだぜ。

本気で行くからな」


ガジルの言葉に挑発的な笑みを浮かべつつ答える。


「おう。返り討ちにしてやるよ」


そう言ったところで、試合開始の合図がなった。


その瞬間、ガジルは己の武器であるメイスを背中から勢いよく抜き去り、その勢いを利用し、リョウへと突撃を仕掛ける。


リョウはまずは様子見と、後ろに下がりメイスを避ける。


避けられたのにもかかわらず、ガジルは尚も特攻を仕掛け、リョウにメイスを何度も振り抜く。


ガジルのメイスを避けながらリョウは疑問に思っていた。


ガジルの攻撃は決して洗練されてはいない。


どちらかと言えば粗いと言える程だ。


メイスはただでさえ攻撃力は高いが、小回りが利かず、隙が出来やすくなるという弱点を持っている。


本来であればもっぱら対魔獣戦用の武器で、対人戦には向いていない。


対魔獣戦でもメイス使いはパーティーを組んで出る。


隙がでかすぎるため、防御ができず、隙を埋めてくれる仲間が必要なのだ。


にもかかわらず、ガジルはどんどん突撃を繰り返し、メイスを振るいまくる。


考えられることは二つ、ただの馬鹿か何らかの罠かだ。


頭がいいというわけではないが、馬鹿ではないというのがガジルに対するリョウの認識だ。


だとすると考えられるのは罠だ。


もちろん本当になにもないただの馬鹿の所業かもしれない。


その場合は別に困ることはない。


ただ嬉しい誤算ということだけだ。


リョウの結論は用心に越したことはないということだった。


リョウがそう考えている最中にも、容赦無く大振りの攻撃が襲い掛かっている。


明らかに誘っている攻撃。


おそらく突っ込むと何かが発動するのだろう。


何らかの罠はあるだろうが、このままだと防戦一方になってしまう。


遅かれ早かれリョウから仕掛けないと、形勢は動かない。


リョウは思い切って攻撃することにした。


ガジルが横凪ぎにメイスを振るうのを、少し後ろに下がり避ける。


そして、メイスを振るった直後で硬直し身動きがとれないガジルの懐に飛び込む。


しかし、リョウは飛び込む寸前、ガジルの顔に笑みが浮かぶのを見た。


瞬間、闘技場に爆音が轟いた。


ガジルの狙いはこうだった。


まず、メイスで攻撃することによってわざと隙を作る。


そして、その隙をついて攻撃してきたものに、メイスに付加させた火属性の下位魔法ファイアーボムを発動させる。


このように魔法を付加させた武器を魔剣と呼ぶ。


メイスなど剣ではないものも、魔法を付加させることで魔剣の位置に置かれる。


魔剣には中位魔法以上は付加させることはできず、さらに付加できる下位魔法は一つだけだ。


よって魔剣を使おうとするものにとっては、どのような魔法を付加させるかが大きな分かれ目となる。


ガジルが付加させた魔法、《ファイアーボム》は非常に簡単な下位魔法だ。


誰でも使える下位魔法の中でも初歩魔法と呼べる程だ。


《ファイアーボム》は威力は高いが、距離も短く範囲も狭い。


最初は使うが、新しい魔法を覚えたら使わなくなるというものの典型だ。


だが、ガジルの戦法にこれ以上合う付加魔法は他にはないだろう。


まず、距離の短さについては自分の体の周りだけなので問題はない。


範囲についても先に述べた理由でたいした問題にはならない。


これがどういうことかというと、距離、範囲という欠点は無くなり、威力という長所だけが残る。


能力をふんだんに使うことができるのだ。


付加した武器がメイスというのも、ガジルの計算によるものだった。


本来、魔剣と呼ばれているように、付加するのは剣が普通だった。


もちろん剣以外には付加できないというわけではない。


しかし、剣は受け止めることができる。


メイスは受け止めることができない。


絶対というわけではないが、剣の数倍の威力を持つ攻撃をわざわざ受け止めることはないだろう。


メイスは剣に比べ動きも遅く、隙も大きい。


普通は避けるだろう。


そして、それこそがガジルの狙いだった。


隙ができれば懐に潜って来る。


そこに《ファイアーボム》を発動させる。


避けつづけるということはひたすら防戦に徹するということだ。


いくら避けやすいといってもいつかはメイスが届く。


もし受け止めたとしても、多かれ少なかれ体勢を崩すことになるだろう。


崩れ、回避が間に合わないところで《ファイアーボム》を発動すればいい。


まさに攻撃こそ最大の防御という言葉が似合う戦法だ。


あの状況で避けれるはずがない。


例え、直撃したにもかかわらず立っているという状況に陥ったとしても、ダメージはかなり負っているはず、慌てず追撃をすればいい。


勝利を確信したガジルは次の瞬間、驚愕の事態に目を見張った。


それは………


いない


だった。


この戦法を考えるにあたり、ガジルは様々な対抗策への対策を考えていた。


先程述べたのがそうだ。


しかし、数ある可能性の中で唯一つガジルが対策を考えなかったものがある。


考えなかったというか、現実的に不可能だと思い、考慮していなかったもの、


《ファイアーボム》が発動した瞬間避けるという可能性だ。


付加魔法は自らがその付加させた魔法を唱えるか、発動条件を設定することで発動する。


条件設定の場合は発動までに少し誤差が生じる。


しかし、いくら発動させるのと、実際に発動するのに誤差があるといっても、たったの0.1秒。


その間に魔法を察知し、避けるなんて人間の反応速度では不可能だ。


人間の数倍の身体能力を持つ獣人族でさえ、まず無理だろう。


よって、対策を考えるまでもないというのがガジルの結論だった。


ガジルがリョウを舐めていたのではない。


リョウの実力が上記を逸しているのだ。



「いない!?」


と、驚きの声を上げつつも冷静に周囲を見渡す。


右、左、後ろ、どこにもいない。


だとすると………


「上かぁぁああ!!」


ガジルは叫びながら上を見て、迎撃しようとする。


しかし、時既に遅し。


リョウの全体重を乗せた拳がガジルに襲い掛かる。


満足な回避もできず拳の直撃を受け、ガジルは気を失った。


しばらくして


『Cグループ準決勝第一試合を終了します』


というアナウンスがなりリョウとガジルの決着はついた。



リョウVSガジル


勝者、リョウ




「俺の完敗だ」


目を覚ましたガジルの第一声がこれだった。


しかも満面の笑みで、


「あんな綺麗に負かせられたらもうグーの音もでないさ。

たく、お前なにもんだ?


あの反応速度は人間技じゃねーぞ」


「はは、そうかな」


「そうかなじゃねーよ、まったく」


実際リョウはたいしたことをしたつもりはなかった。


ガジルの笑みを見た瞬間、ほぼ反射的に≪破壊≫で足の生命エネルギーを活性し、思い切り跳び上がったのだ。


リョウからすればただジャンプしただけなのだ。


剣獣の森での一年に渡る命懸けの修行がこのようなズレをもたらしたのかもしれない。


「俺を負かしたんだからな。

本選でも負けたら許さねーぞ」


「まぁ、頑張ってみるよ」


「おう。優勝してこい、優勝」


ガジルは満面の笑み、リョウは苦笑いと試合の結果から見たら、いささか不可解な状況が広がっていた。


「そういや、第二試合はどうなったんだ?」


「そうだね。見てくるか」


「よし、行こうぜ」


そう言って、二人は第二試合を見に行った。



第二試合はまだ続いていた。リョウ達の試合が3分で終わった事を考えれば当然だろう。


ここらへんからどんどん強者ばかりになっていく。


こんな短時間での決着はそうとう稀なのだ。


「あ、あの子は」


リョウが呟く。


リョウが言うあの子とは、Cブロックの集合場所で見かけた獣人族の女性のことだった。


女性といってもまだ顔立ちに幼さが残っており少女から女性になる途中というような感じだった。


年はおそらくリョウと同じ位だろう。


「へー、ミーヤっていうんだ」


リョウは対戦表を見て名前を知る。


ミーヤの対戦相手、リータスと言うらしい人間族の男性は手に片手剣を持っている。


一方、ミーヤは素手だった。


「なんであの子は素手なの?」


リョウは素朴な疑問を投げかける。


「お前が言うのか」


ガジルはため息をつく。


それはそうだ、リョウは背中に吊ってある大太刀を今だ抜刀すらしていない。


今のところの全ての試合を己の拳で終わらせているのだ。


まさに人のふり見て我がふり直せだ。


「いいじゃんか、別に」


リョウが口を尖らせると、ガジルは笑いながら説明を始める。


「獣人族は身体能力がかなり高くて、人より獣に近い存在だ。


人は弱い。だから武器を持つ。


だが獣人族は己の体こそが最大の武器なんだ。

もちろん武器を使う獣人族もいるが、ホントに少数だ


獣人族の誇りみたいなもんらしい」


「なるほどね〜」


リョウは試合を見るが確かに強い。


リータスの剣を華麗に避け、距離を詰め攻撃を与える。


リータスも強いがミーヤはその上を行っている。


リョウは次の対戦相手はミーヤだろうと確信していた。


程なくして、Cブロック準決勝第二試合終了のベルが鳴り響き、ミーヤの勝利を告げるアナウンスが入った。


ミーヤVSリータス


勝者、ミーヤ


Cブロック決勝はリョウVSミーヤという結果になった。





今回はガジルとの戦闘を通して、魔剣について書きました。


全体的に短い気もしましたが区切りがいいのでここでストップさせました。


まだ戦闘という感じはしない気がしますが、どんどん入れていくつもりです。



次回

予選決勝

リョウVSミーヤ


かなり戦闘描写を多くするつもりです。



では、

感想・評価・アドバイス・質問お待ちしております。


誤字修正しました。



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