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エデン〜創造と破壊〜  作者: 近山 流
第1章 出会い
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Cランク昇格試験−鉄鋼蟹、そして急変−



リョウはこの世界に来てリズと出会うまでの半年間を森で一人孤独に過ごしていた。


しかし、それは決して一人が好きというわけではない。


どちらかというと賑やかな方が好きだった。


だから今この状況はリョウにとって非常に耐えがたいものだった。


何がいけなかったのかと考え昨日の記憶にたどり着く。



昨日あまりの疲れに相手に≪破壊≫を使ってしまったこと。


あの時もっと平和的な解決をすれば良かったといまさらながらに後悔する。



何故今こんなことを考えているのかというと、


現在の状況


討伐地点に向かう馬車の中、試験官であるゼス、マルタ、ネルは一言も喋らず、時々リョウに警戒心に少し恐怖を孕んだ視線を向けてくる。


そしてその三人視線を見て、不機嫌になり何も話そうとしないリズとレナ



(気まずい。非常に気まずい。何か話題を考えなければ……)


リョウはそう思い必死に話題を探す。


「あ、あの〜〜」


リョウが声をあげるとギロリと目を向けてくる五人。


「いえ、何でもないです」

その視線にヘタレボーイであるリョウは咄嗟に緊急避難をしてしまう。



しかし、やはりこの気まずさに耐えれないリョウは勇気を振り絞ってとりあえず会話を繋げる。


「いや、何でもなくなくて、甲殻獣ってどんな魔獣なんですか?」


緊張してしまい、敬語に なるリョウ。


「甲殻獣は体表面が非常に強化された防御力が高いのが特徴の魔獣だ」


ゼスが答える。


リョウは返答が来たことが嬉しく、この空気を打開できるのではないかと思ったが残念ながらその後会話が続くことはなかった。




それから馬車で走ること10分、ついに鉄鋼蟹が出没するというポイントに到達した。


確かにそこには情報通り三体の鉄鋼蟹がいた。


「じゃあ行ってきます!」

リョウは伸びをしながらそう言うと鉄鋼蟹へ向けて走り出す。


そして≪破壊≫で右手の生命エネルギーを活性化


ザコ魔獣程度であれば一撃で葬ることのできる拳が鉄鋼蟹へ向けて放たれる。


ガキン!!


鉄を叩いたような音が周囲にこだまする。


「ザコじゃないってことかww」


鉄鋼蟹の体には傷一つついていなかった。


リョウは苦笑いしながら考える。


「うーん。

どれくらいなら割れるかな」


今度はさっきの二倍の生命活性を行い、再び殴り掛かる。


再び鉄を叩いたような音が響く。


今度はほんの少しだけ傷がついた。


オー、とリョウが感動していると、二匹の鉄鋼蟹がリョウを視認し、向かってきた。


それを冷静に見ながらリョウは唱える。


 アクセル

「《加速》」



結果、難無く避けることができた。


蟹の攻撃はたいして速くはなかった。


今はアクセルを使ったが、使わずとも回避できるほどのスピードだ。


リョウはこれらの事を総合して、こいつらは己の脅威にはならないと判断した。


「もうお前らには用はない

行くぞ!」


そう言って足の生命力を活性し、ジャンプする。


蟹の頭上5メートルくらいまで跳び上がり、降下の勢いをのせ、一気に拳を振り落とす。


瞬間、今までで一番大きい音が周囲に鳴り響いた。


しかし今度はこれまでと同じ鉄を叩く音ではない。


鉄を打ち砕く音だった。


体を覆う鋼鉄の殻を砕かれ、そのまま体に大きな穴が空け、その鉄鋼蟹は生き絶える。


仲間の死を知った二匹の蟹が唸り声をあげリョウに迫る。


だが、リョウはあくまで冷静に頭上に跳び拳を振り落とし蟹を容赦無く叩き割る。


これらが蟹と遭遇してからたった2分で行われた出来事だった。




−−−side 観客−−−−


この戦いの観客であるリズ、レナ、ゼス、マルタ、ネルはそれぞれ異なる反応を見せていた。


リズは当然だという表情を浮かべている。


レナは最初はリョウの規格外な実力に何度目か分からない驚きを感じていたが、だんだん落ち着き、ただただ凄いなぁ〜という表情を浮かべていた。



そしてゼス、マルタ、ネルの三人は仲良く一緒に目を大きく見開き、顎が地面に着くんじゃないかと思われるほど口をあんぐりと開けていた。


それは当然のことかもしれない。


ここで魔獣について少し説明しておこう。



BからDランクの魔獣は主に三種類あり、それぞれ特徴的なパラメータを持っている。



パラメータも力・スピード・防御力の三種類がある。


まず一種類目は巨爪熊などの剣獣と呼ばれる種族


この種族はスピードと力のパラメータが高く、防御力は低い。



そして今、リョウが余裕で叩き潰していた鉄鋼蟹を含む甲殻獣という種族は、力と防御力のパラメータが高く、スピードは低い。



Cランクの鉄鋼蟹だがその防御力はBランク並なのだ。



本来の戦い方はスピードが遅いのを利用してヒットアウェイで同じ部分を攻撃しまくるというものだ。


もちろん、時間はかかるが、命がかかっている以上冒険はできない。


あくまで堅実に、が冒険者の鉄則なのだ。


だから最初三人はリョウがふざけているのだと思っていた。


いくら、ギルドで正体不明の技を使ったと言っても、所詮は人間。

腕力で鉄を割れる訳がない。


しかも防具も着けていない。


完全に初心者のガキだと、三人は結論づけた。


鉄鋼蟹を甘く見ているのだと


しかし、その考えは数分後改められていた。




驚愕という形で……



リョウが素手で鉄鋼蟹の殻を叩き割ったのだ。


魔法のアシストを使ったのかと、必死に魔法の残滓を探すが見つからない。


リョウが魔法を使った形跡は無いのだ。


≪破壊≫の存在を知らない三人にとって、魔法のアシストも無く、グローブのような武器も見当たらないこの状況。


リョウが己の腕力で鉄鋼蟹の殻を叩き割ったという結論しか出せなかった。


そして、そんなことは有り得ないという思いと、たった今自らの目の前で起きたんだから現実だという正反対の思いが、頭の中で駆け巡り、思考が混濁し、フリーズしてしまっていた。


そしてその硬直が溶けたのはリョウのこれまで聞いたことのないほどの鋭い声を聞いた時だった。



−−−side out−−−−



リョウは鉄鋼蟹を叩き潰した後も安心していなかった。


まだ何かいる………


そしてそれは充分脅威と言ってもいいほどの威圧感を放っていた。


しかも恐らく一匹じゃない。


リョウは二もなく撤退を選択した。


リョウは森で効率の良い職滅の方法と自分を守ることだけを極めてきた。


途中からリズもいたが、充分戦力になり、足手まといにはならず、心配する必要は全くなかった。



何を言いたいのかというと、リョウは自分以外の誰かを守りながら戦う事には慣れていないのだ。


リズは心配ない。

レナも暗殺魔法の隠密性を発揮すれば逃げることは可能だろう。


問題は試験官の三人だ。


それなりに実力はあるようだが、まだ弱い。


流石に三人を守りながら戦うのは難しいだろう。


そう考え、リョウはみんなに聞こえるような鋭い声で、早く馬車に戻れと言った。


リズも気配は察知していたようで、一瞬でリョウの考えを把握し、頷く。


そして馬車に連れていこうと先導する。


だが、フリーズしていた三人は何がなんだか分からずアタフタしてしまい、馬車に向かうのが一瞬遅れてしまった。


そしてその一瞬が命取りだった。


気配が、リズほどではないが、かなりのスピードで接近し、リョウ達と馬車の間にあたかも阻むように現れた。


「うそ………だろ」


その姿を見てゼスが呻く。


レナ、マルタ、ネルは顔を青くしている。




そこにいたのは、剣獣の王と呼ばれているAランクの魔獣、王獅子だった。






今回の話で魔獣について触れましたが、あと一種類はこの先出すのでそれまでお楽しみにということで(笑)



明日は投稿できるか分からないのでご了承ください。



次回

リョウ達の前に現れた王獅子、そして次々に現れる高ランクの魔獣達。


リョウ達は生きて帰れるのか…………



では、

感想・評価・アドバイス・質問お待ちしております。

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