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『上のじいさまと下のじいさまと犬とプレスマンと雁』

作者: 成城速記部

 上のじいさまと下のじいさまは、よく一緒に同じことをした。というか、下のじいさまが負けず嫌いで、上のじいさまがやっていることをやりたがるのであった。

 あるとき、川に仕掛けを沈めて、魚を捕ろうとしたとき、下のじいさまは、夜のうちに上のじいさまの仕掛けを引き上げて、木の根っこを詰め込んでおいた。次の日、上のじいさまが仕掛けを引き上げると、木の根っこしか入っていなかったが、がっかりするふうでもなく、こんなものでもたきつけにはなる、と言って、持って帰ることにした。

 上のじいさまが、拾って帰った根っこを、一晩乾かしてから、細かく割ろうとすると、どこかから、ゆっくり割れ、という声が聞こえたので、何だろうと思いながら、ゆっくり割ると、とても小さな犬が出てきた。上のじいさまが大層かわいがって飯をたらふく食わせると、犬は食うだけ大きくなるのだった。

 ある日、その犬が、上のじいさまを山へ引っ張っていくので、上のじいさまは、引っ張られるままに引っ張られていくと、犬は、とんでもない数の鹿をつかまえてきたので、何とか町まで運んで売ると、そこそこのもうけになった。もうかった金で、米やら着物やらを買って帰ると、下のばあさまがうらやましがって、下のじいさまに、犬ころを借りてきて、山に行って鹿をとれと言うので、下のじいさまは、嫌がる上のじいさまから引ったくるようにして犬を借り、もっと嫌がる犬を縄で引っ張って、山に入っていった。山の奥に入ると、犬が、縄を解けという仕草をするので、解いてやると、犬はあちこち走り回り、下のじいさまが座って待っているところにとんでもない速さで戻ってくると、大量の蜂を連れてきたので、下のじいさまは一回り大きくなってしまった。

 犬が戻ってこないので、上のじいさまが、下のじいさまの家を訪ねると、下のじいさまは、誰だかわからない面相で、とんでもない犬ころだから、殺してコメノキの下に埋めてやった、というので、上のじいさまは驚き慌てて、山に入ってコメノキの下を掘ったが、何も出てこなかった。

 上のじいさまは、コメノキで速記シャープをつくり、床の間に祭って拝んでいたが、なぜだか天井から小判やら真珠やら速記シャープの芯が降ってきて、上のじいさまは裕福になった。これを見て、下のばあさまがうらやましがって、コメノキの速記シャープを借りてこいと言うので、借りてきたが、天井から汚いものや臭いものが降ってきたので、頭にきて、コメノキの速記シャープを燃やしてしまった。

 上のじいさまは、コメノキ速記シャープを返してもらえないので、下のじいさまを訪ねると、かまどにくべてしまったという。上のじいさまが灰だけでもと思って持って帰ると、家に帰り着く前に強い風が吹いて、灰が舞い上がった。その灰が空高く舞い上がって、ちょうど真上を飛んでいた雁の目に入ったものか、ぼたぼたと雁が落ちてきた。とても食い切れるものではないので、町へ売りに行くと、結構なもうけになった。

 下のばあさまがうらやましがって、下のじいさまは引ったくるように灰をもらっていき、雁に少しでも近づくようにと、下のじいさまを屋根に上がらせると、それももどかしく、下のばあさまが下から灰をまいた。灰が目に入った下のじいさまは、屋根から真っ逆さまに落ち、目がよく見えない下のばあさまに、雁汁にされてしまったということだ。



教訓:雁とじいさまは間違えないと思うが、速記シャープを焼くようなやつは、まあ、これでいいと思う。

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