転生?チート? いや、結構です
神様が言う。
「あなたには、まだ寿命が残っていました。不運な事故に見舞われましたが、善良で善行を行うあなたには、異世界に転生して、残りの人生を送ってもらおうと思います」
そう、私はついさっき死んだようだ。道を歩いていたら、バキッと大きな音がしたので上を見た。巨大な看板が落ちてきた。頭に強い衝撃を受けたところまでは覚えている。
目を開けたら、白い空間にいる自分と、目の前にぼんやりと人らしき人がいたことに気づき、その人が「私は神です」と話したのだから、神様なのだろう。
まだ高校三年生だったが、心臓の病で働けなくなり鬱病となった母親を介護しながら、バイトで家計を支え、すべての家事を行って暮らしていた。母を愛していたので苦ではなかった。なので善良と言われて納得は出来る。
神様が続けて言う。
「異世界にいる5歳の女の子が、まもなく病で亡くなります。その子の魂が外れた体に、あなたの魂を入れようと思います。異世界での生活に困らないように、その子のそれまでの記憶を授けます。転生特典として、その世界で崇められている聖女としての能力を与えます」
「え?、いや、結構です。そんな人生大変でしかないじゃないですか。今の世界で逆行とか生まれ変わりは出来ないのでしょうか?」
「一度死んでしまった魂は、同じ世界にその魂のまま存在することは出来ません。成仏して、新たな魂となります。ですが、他の世界でなら今の魂を存在させることが可能なのです」
「いやいや、まだ同じ年くらいならともかく、5歳って…下の世話をされないだけマシかもですけど、精神年齢18歳が5歳の子として生きるって、ただの拷問ですよね?5歳のふりして生きるって、大女優でも出来ませんよっ?たたえ出来たとしても苦行以外の何ものでもなくないです??」
「それでは、同じ年の子が亡くなるまで待つことといたしましょう」
「いやいやいや、同じ年の子に転生しても、それまでのその子の生きてきた性格とか環境があるんだから、それに合わせるようにひたすら演技しなきゃならないじゃないですか?めっちゃ疲れますよね?
しかも聖女って、、、酷使して生きなきゃならないのが分かりきってるし…そんな大変な人生いやですよ」
「なので、普通に成仏させてください。どんな死に方であれ、死んでしまったらそれが運命なんですから」
「はい……わかりました」
神様はしおれた。
が、受け入れてくれたようだ。