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3

 2頭のユニコーンは、とうとう怪物の頭付近に到達した。


 そこには、ガシムが呆然としている。


 リーザは左手から鋼線を放った。


「ちぃぃぃ!」


 ガシムが短剣で、刃を弾く。


 リーザはユニコーンの上から跳んだ。


 短刀で斬りつけるが、ガシムの短剣がまたも(はば)む。


「邪神様! 我を助けたまえ!」


 呪術師の頼みに、虫肌が鋭い(とげ)をリーザに伸ばした。


 走り抜けた馬上から、ラファンタが投げた円盾が、それらを弾き防ぐ。


 短刀で2撃、3撃と続けたリーザは、フェイントの後、掌中(しょうちゅう)に戻した鋼線を再び、投げつけた。


 ギリギリで外したように見せかけ、刃を旋回させ、鋼線でガシムの右手首を絡め取る。


「うあぁぁ! このゴミ虫めが! 我は死なぬ! 邪神様とこの世界を」


 そこまで言いかけた仇の喉を、リーザの短刀が斬り裂いた。


 ヒュッと呻き、呪術師は倒れた。


 仇を討ったリーザをラファンタがユニコーンに乗せ、ペプシアとチャミの乗った一角獣と並び駆けだす。


 目指すは巨虫の(くち)だ。


 召喚者が死んだことなど、意にも(かい)さない怪物は、大口だけの頭をもたげた。


 急角度で敵を振り落とそうという意図か。


 しかし、2頭のユニコーンは、いかなる魔法か楽々と巨獣の肌を駆け昇る。


 またも襲ってくる棘を、聖女コンビは銀槍と銀盾でなぎ払った。


 巨虫は、いよいよ頭を返し、突き進む小さな敵を呑み込もうと無数の牙を揺らし、おぞましいよだれを垂らす。


「ラファンタ!」


 ペプシアが呼べば、盾を持つ聖女が頷く。


 彼女は輝くシールドを怪物の大口へと投げつけた。


 回転する円盾は襲いくる巨牙を苦も無く折り飛ばし、巨虫の口内を丸見えにする。


「ペプシア!」


 呼び返された聖女は、銀色に光るスピアを勢いよく放った。


 猛スピードの投槍は、恐ろしい生物の口中に消えていく。


 そして、次の瞬間。


 怪物の頭が膨らみ裂け、体内から強烈な光を発した。


 それは2聖女のまとうオーラと同じ輝きだ。


 巨虫は断末魔の悲鳴をあげ、邪体を粉々に霧散し始めた。


 飛び戻る各々の聖武器をキャッチしたラファンタとペプシアは、ユニコーンの首を優しく撫で、騎乗のまま地上へとダイビングした。


 2頭の一角獣は2人ずつを乗せた状態で、半ば宙を駆け、地上へと見事に着地する。


 ガシムの呼び出した邪悪な存在は、この世界から完全に消失した。


 ユニコーンたちが、脚を止めた。


 2聖女は、リーザとチャミを降ろした。


 2人が馬上の聖女たちを見上げる。


「では、聖宝を回収しましょう」


 ラファンタが右手を、儀式台上のアイテムに向けた。


 それらは温かい光を放つ球となって、彼女の(てのひら)に吸い込まれる。


「これで大丈夫。もう、この地に敵は現れないでしょう」


「感謝しろ!」


 ラファンタとペプシアが、揃って笑う。


「オレは仇を討てた。礼を言う」


 リーザが頭を下げた。


「私たちの使命は、あなたたちを守ること。気遣(きづか)いなく」


 ラファンタが頷く。


「いいや、ありがたがれ。お前たちは、すぐに謙虚(けんきょ)さを忘れるからな」


 ペプシアが、ニヤッと笑った。


「ああ! 聖女様! (きも)(めい)じます!」


 チャミが土下座し、額を地につける。


「さあ、それでは行きましょう。ミリンダルと合流しなければ」


「あの娘、ちゃんと聖宝を回収してるかな?」


「きっと大丈夫。ミリンダルも、もう1人前です」


「だと、いいけど」


 微笑み合った聖女2人が、リーザとチャミを見つめる。


「愛すべき者たちよ、私たちは行きます。あなたたちに幸運のあらんことを」


(ちから)なき者たち。無茶はするなよ」


 2頭のユニコーンは駆けだし、聖女2人はいつの間にか訪れた夜の(とばり)へと消えた。


 残されたリーザは仇を討った達成感と、父母の形見を失った寂しさに胸を満たされる。


 地に這いつくばったままのチャミは、魔杖を持ち帰れずとも、不服は無さそうだが。


「聖女様! しかもお2人も! こんな近くで!」


 大粒の感涙をポロポロと(こぼ)している。


 リーザは幸せそうな彼女を残し、歩きだした。


 久しぶりに故郷に帰り、父と母の墓参りをするつもりだ。


 気のせいか、月明かりは温かく、夜風はとても優しかった。




 おわり























 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)


 大感謝でございます\(^o^)/

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