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虚構の扉  作者: 緑町坂白
4/5

4話

4話

  週一の散歩から帰って直ぐに、居間へ来るようにと言われた。

 何かしただろうか。いや何もしていないことがダメなのだけれど。


「沙織、単刀直入に聞くわね。あの扉なんなの?」


「え?お、母さん勝手に入ったの?! いつも言ってるよね?勝手に部屋にはいらないでって! 」


「だって貴方最近部屋にこもりきりじゃない! 心配にもなるわよ……。食事もたまにだし、お風呂にも入ってないみたいだし…」


「……別に、ちゃんと食べてるし、お風呂も入ってる」


「いつ?」

 

「扉の中の世界でちゃんと食べてるよ」


「あの世界はなんなの?」


「わかんない。けど私が好きにしていいんだって」


「そう……もうあの世界に行くのはやめにしたら?」


「なんで?」


「貴方はもっと世界に目を向けるべきよ。扉の先以外にも楽しいことは沢山あるわ」


「私はあそこがいい」


「どうしてそんなに意地を張るの?少しはお母さんの言うことを聞いてよ……」


「知らない、もう部屋に入らないで」


 バタン。

 

 真っ直ぐ自室へ向かう。お母さんはわかってない。私の好きな世界を作り出して何が悪いの?

 扉を開けくぐる。あぁ、ようやく息ができる。


 お母さんはどうしてあんなことを言うのだろう。私はこの世界が好きなのに。どうして否定するようなことを言うんだろう。

 

「この世界に色をつけてはいけないってことに関係してるのかな……」


 そもそも、どうして色をつけてはいけないんだろう?なにか不都合でも起きるのだろうか?あのメモは誰が置いたのだろう。

 ……少し、少しだけなら色をつけてみてもいいだろうか。そうだ、猫に色をつけてみよう。白や黒よりミケの方がカラフルだし。


 三毛猫を捕まえて色を付ける。

 

「あれ、そういえば色ってどうやってつけるんだろう?」


 指先に意識を集中させても、触れてなぞっても色はつかない。


乱雑にポケットへしまったメモ紙をもう一度見やる。


『この世界は君のもの。君の思うままに創り出せる。色をつけてはいけないよ。モノクロだから良いんだ。』


 1度見た時には気が付かなかったが、裏面にもなにか書いてある。


 『色は魔法。付けるのは禁忌。杖と呪文があれば途端に色づくだろうさ』


 杖と呪文……

 それがあれば色を付けることが出来る。

 まずはそれを探そう。


 でもどこを探しても杖も呪文も見つからなかった。

 メモ紙が落ちていた場所も、初めて作った街並みも、最初に作った家にも、どこにもなかった。


 あぁ、ならば作ればいいのか。杖と呪文を私が作ればいい。

 杖は山菜のわらびのような形で、渦の中心には青い宝石をつけよう。材質は木でいいかな。

想像すると、それが出てくる。思ったものと同じ杖だ。

 

 次は呪文。王道の開けゴマ では色づかないだろう。そもそもあれは扉を開ける時の呪文だし。

 テクマクマヤコン?あるいは、アロホモラか?

 呪文、呪文……。杖を手に取り振ってみる。


「”色付け”」


 唱えると、途端に色付いた。呪文というより、ただ命令すれば良かったのか。


 これでピースは揃った。この世界を色付けよう!

 

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