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虚構の扉  作者: 緑町坂白
1/5

1話

1話

 ふと、思った。思ってしまった。

 

「あれ、私って必要ないんじゃない?」


 それは唐突だった。居間からの楽しげな声を聞いた時そう思ってしまった。それからは早かった。自分はここにいてはいけないと、自分は早く死ななければいけないと、強迫観念に襲われた。徐々に学校へ行けなくなった。授業を受けていても、目に映るものでどうやって死のうかと考える日々だった。だから、何も目に入れないようにした。扉を閉ざし、カーテンを閉め、自室にひきこもった。


 ただただ携帯を弄り、ゲームをし、動画を見て過ごす毎日。何も考えたくなかった。必要のない自分など早くいなくなってしまえばいいと思っていた。ただ思うだけで行動はしなかった。そうするだけの勇気はなかった。


 必要ないのなら、早く死ぬべきだと思った。だからまず部屋の掃除を始めた。死ぬ時に荷物が沢山あっては家族が困るだろうと思ったから。


 まずは、机周辺から取り掛かる。学校のプリントや教科書、メモ帳にペン立て。引き出しにはごちゃごちゃと様々なものが入っている。1つづつ取り出し、いるものは避けておき、要らないものはゴミ袋へ捨てる。

 プリントは……。まぁ要らないか。教科書は念の為取っておこう。メモ帳は……、保留。ペン立てはあってもいい。


 次は本棚。そもそもいらない本なんてない。死んだ後どうするかを決めた方がいいか。中古で売れそうなものは売ってもらって、残りは図書館に寄贈できるようだったら、そうしてもらおう。それでも余るのなら、資源ゴミに出してもらおう。できれば他の読みたい人の元に行けるといいんだけど。


 最後はクローゼット。タンスと小さな本棚も入っている。先にタンスの片付けをしよう。服の他に、アニメのグッズや過去のプリント、あとはイヤホンの空箱とか、旅行用のジップロックが入っている。プリントは廃棄していいか。服はよく着てるもの以外は全て捨ててしまおう。アニメのグッズは……、どうしよう。まとめて中古屋さんかな。空箱は捨ててしまおう。多分使わないだろうし。ジップロックはそのままでいいだろう。

 小さな本棚には単行本が入っている。全て取りだして、クローゼット内の配置を少し変えよう。あ、この本懐かしい。小学校の時に初めて読んだやつ。後半に衝撃的な展開があって、未だに覚えている。おばあちゃんの家で読んでから忘れられなくて、自分でも買ったんだよな。火葬の時って本は一緒に燃やせるんだろうか。机の上にでも置いておこう。


 本棚をずらすと、後ろに扉があった。こんな所に扉があった覚えはない。茶色の板扉は、まるで板チョコのような模様をしており、上部には扇状にガラスが嵌っている。至って普通の扉だろう。ただ1つ違う点があるといえば、それは通常の扉よりも大分小さいということだけだ。高さは80センチ程だろう。四つん這いでならギリギリ通れるサイズだ。


 少しウロウロとしながら考える。入るべきか、見なかったことにするべきか。

 私は好奇心に負け、その扉を開けた。酷く眩い光が目を刺し、思わず目を瞑る。ようやく光が収まり、目をそっと開ける。そこには、白黒の世界が広がっていた。

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