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道交わる各々 2




 帝都闘技場(コロッセオ)、本日の試合が始まる僅かな隙間時間にて。

 俺とクイン、ミラ婆ちゃんにシスター・ブランと孤児院の子供達という、少々予想だにしなかった面子で相席することになった訳だが……女性陣が皆、礼儀もしっかりした真面目な方々というのもあって説明や挨拶は極々穏やか且つスムーズに進んだ。


「なるほど、魔族領の……かの公爵殿の名代とは、お若い身でありながらとても優秀なようですね」

「いえ、帝国に向かえない主の代わりに、あくまで代理で皇帝陛下にご挨拶した、というだけですので……僕のほうこそ、あの四英雄筆頭にお会いできて光栄です」

「私はそう持ち上げられる様な身の上ではありません。為した功績、という点でみればレティシア様やアリア様、この子の方が余程大きいでしょう」

「……っ、ふふっ……あっと、笑ってしまって申し訳ない。なんというか、彼の姉弟子というのはやはり本当なんだな、と実感してしまって」


 えー……そらどういう意味やねんクインさんや。

 にしても、まーた出たよ、ミラ婆ちゃんの自称・いちシスターアッピル。

 お前のようなただのシスターがいるか! と散々に色んな人に言われてるでしょうに。若い頃からこんなんだったって話だし、付き合いの長い教皇(爺様)やガンテスなんかは大変だったやろうなぁ。

 流石に後が怖いので、口には出さんけどな!

 姉弟子と友人に挟まれ、時折会話のネタにされつつ両者が親交を深めているのを黙って聞き入る。


 とりあえず、この場にいる人達が俺の視点からどういった知り合いなのかだけ大雑把に説明し、あとは当人同士が軽く自己紹介する流れになって。

 クインなんかは一応は女公爵に命じられる形で仕事としてやってきているので、帝国に来てからも色んな工房にお邪魔して技術交流のお誘いや見学に精を出している。

 彼女の気質も含めて生真面目なミラ婆ちゃんには中々に高ポイントだったらしく、それなりに両者の会話は弾んでいた。

 んで、俺の方も姉弟子殿の隣に座るシスターと意外な繋がりがあった事を知って、彼女とちょいちょいその事について語り合う。


「あの時、オフィリを連れて来て下さった方が《聖女の猟犬》……ミラ様の弟弟子だったとは……奇妙な縁を感じますね」

「わんわんとおねえちゃんは、すごくなかよしだったんだよ? オフィーもいっしょにごはんたべたの!」

「そうですね、仲良しなのは良い事です……それはそれとして、貴女はここ最近、はぐれて迷子になる事が多いですからね。気を付けないと駄目よオフィリ?」


 ちょこちょこと動き回ろうとする子供達を手際良く抑えて席に着かせながら、俺の膝の上に座った幼女の言葉にシスター・ブランは苦笑する。

 まー、俺も俺で結構驚きましたよ。前に偶然保護した迷子の保護者さんが、ミラ婆ちゃんの教え子的な人だったとはなぁ。

 実は婆ちゃん、休日とかはあの孤児院に顔をだしてたりするらしい。なんつうか、お互い凄いニアミスだな。まさしく奇縁ってやつだ。


「それで……貴方がかの《猟犬》だと言う事は、あのときご一緒していた彼女は……?」


 此方を伺うように問いかけてくるシスター・ブランに、今度は俺が苦笑して向かいの観客席へと顎をしゃくる。

 視線の先には最前列にある来賓用の特別席――そこには何やら俺と膝上のオフィリを見て手拭い咥えて引き千切ってる《魔王》と、それを呆れて見てるシアとリアの姿があった。

 ちなみに昨日はいなかった《狂槍》とリリィもあっちに同席してる。《魔王》が引き千切った手拭いを咀嚼しながら立ち上がろうとして、後ろの席にいる《狂槍》に膝裏へと槍の石突をぶちこまれ、強制的に着席させられていた。

 人目もあるだろうに、何をやっとんねん魔族領の連中は……まぁ、衆目の眼を気にして生きてる様な奴らじゃないのは今更なんだけどさ。

 シスターもその光景――特にリリィを自分と(おとうと)の間に座らせて変態不死鳥から庇う様な位置に移動させてるシアを注視して、悪戯っぽく笑った。

 あんときゃシアは髪の色を変えて伊達眼鏡なんて掛けていたが……まぁ、こうやって見直せば気付くわな。変装してようがしていまいがとんでもねー美少女なのには変わりない訳だし。

 騙したって程大袈裟な話でもないだろうか、お忍びだったって事で許して欲しいです、ハイ。


「いえ、他にも変装していらっしゃる教皇猊下(おきゃくさま)はいらっしゃいますし、特に問題はありませんので、気になさらないで下さいね」


 そう言ってニコニコと笑顔のままだった彼女の双眸が、改めて俺をじーっと見て穏やかに細められる。


「今になって思えば、初めてお会いしたときに奇妙な既視感……懐かしさを感じたのですが……()()()()()だったのですね、納得が行きました」


 こちらに向かって語り掛けるというより、殆ど独白の様に零れ落ちた言葉。

 何処か噛みしめる様な響きを伴った声色は、ひどく懐かしい、そして大切な記憶を思い返した者のそれだった。

 何時の間にやらクインとの会話を止めて俺達の会話に聞き入っていたミラ婆ちゃんが、シスターと顔を見合わせて同じように眼を細め、穏やかに頷く。


 ふむ、言葉の内容は気になる処ではあるが……彼女もあの大戦で戦い、生き残った身だ。

 多くの人がそうであるように、シスター・ブランにも相応の過去がある、という事なんだろう。

 指摘して根掘り葉掘り聞くのも無粋ってレベルじゃねぇし、ここは口を閉じておくとしようか。世の中、沈黙と多弁では前者の方が多分に金足り得るってな。

 迂闊な発言で怒られることが多い奴が言っても説得力にかける、というツッコミはしてはいけない。イイネ?


「……不躾とは思いますが、一つ、お願いが」


 俺の膝上にいるオフィリをひょいっと持ち上げると、自身の膝に移動させて抱き締め、シスターは丁寧に頭を下げる。


「聖都に戻ってからで構いません、一度貴方の魔鎧を――貴方の相棒を、間近で見せて頂けませんか?」


 うん? 鎧ちゃんを?

 ドワーフみたいな特殊武装大好きな連中と同類って訳でもないだろうし、なんでやろ?

 正直、ただの興味本位ならお断りする話なんだが……目の前のお姉さんはそういった礼節には厳しい人だというのは、短い付き合いのなかでも十分に察せられる。教会御意見番の薫陶篤いのはもう雰囲気からして感じ取れるしね。

 何より、遊びや気紛れでの発言、なんて欠片も思えない程度には、その表情は真剣だった。


「――私からもお願いします。一度、ブランに貴方の相棒を見せてやってください」


 うーん、ミラ婆ちゃんまでそう言ってくるか、なら俺に否は無いな。いや、まぁ、真面目なお願いっぽいから元から断るつもりはなかったんだけど。

 おkよ~、じゃ、約束ということで。と敢えて気軽に返答してみせると、シスター・ブランはなんだかホッとした様子で少しばかり強張っていた肩から力を抜いた。

 シスター二人が礼を言うのに対して、軽く手を振って気にしない様にと返して、肩車してる子を下ろして膝の上に移動させる。

 俺が別の子を膝に載せたのが御不満なオフィリから抗議の声があがるが、そっちはシスター・ブランに宥めて貰って――そこで隣に座るクインからちょいちょいと服の袖を引っ張られた。


「ねぇ、あれ……レティシア殿が物凄いアピールしてるけど、どうしたのかな?」


 ちょっと困惑してる様子の友人に言葉に、向かいの観客席へと視線を向け直す。

 クインの言う通り、そこには席から立ち上がって身を乗り出し、親指で自身をビシィッ! っと指さしてものっそいアピールしてる聖女(姉)の姿があった。


 流石に声は届かないが、きっぱりと言い放っているソレを唇の動きから読み取るのは容易だ。

 えーと……あ い ぼ う は オ レ だ ろ う が、か。

 いや、こっちの会話聞こえてるんかい、地獄耳かお前さんは。

 この話題になるとエラい超反応を示すシアに、隣のクインと顔を見合わせて苦笑いした俺である。







◆◆◆




『どもー、解説のシャマだよー。さぁー、今日も快晴! 絶好のお祭り日和! 闘技大会第一回戦の後半の始まりぃーっ! ――この仕事終わったら今日はフリーだし、ちょーアガるぅ!』

『はっはっはっは! 実に率直ですな! 拙僧も空いた時間に有名各所を見て廻っておりますが、帝都の広大さと各所の催しの数を考えるに、どうあっても時間は足りなくなるは必定。皆々様も巡る場と催しは吟味する事をお勧めいたしますぞ』

『ちなみに今回の解説には、引き続きグラッブス司祭様と、もう一人の特別ゲストをよんでるからねー!』


 拡声の魔具を用いた実況解説二人の声が、大会二日目の開始を告げる。

 聖女や《魔王》といった錚々たる面々が座る、来賓用の席とはまた別方角に設置された最前列の実況用の席は、シャマの言葉通り今日は三名が腰を下ろしていた。


『ど、どうも。大陸中央部の大森林よりやって参りました、サルビア=エルダと申します』

『サルビア様はエルフの最長老様――ぶっちゃけ一番エラい人だからねー。しょーじきこんな仕事頼んでいいのかって気はするけどおもしろそーだから問題無し!』

『うむ! 拙僧もサルビア殿とはここ帝都で再会しましたが、魔法全般に対する知見と考察は流石の一言。我らでは見逃すやもしれぬ試合の機微を語って頂くのに、実に適した御方であるかと!』

『い、いえ! その様に大したものでは! あくまで後衛型の魔導士の視点で語るべき部分が出れば、補足を入れる、程度だと思って下さい!』

『ってゆーか再会ってことは司祭様とサルビア様は顔見知りなん? そっちはそっちで気になるんですけどー』


 慌てた様子で顔の前で手を振っているのは、先日まで来賓席にいたサルビアである。

 初日は来賓席で観戦に徹していた彼女であるが、本日から実況解説に参加するようだ。森から出てきたばっかでこれ程の大規模な祭り――その中でも最大規模の催しでの解説とは、聊かハードル高いとは思われる。

 が、緊張はあれど、積年の想い人たる筋肉司祭の隣に座って共同作業ってことでご満悦らしい。恋する乙女は強し、というやつのかもしれない。


『ゲストの二人の関係は気になる処だけど予定時間だし、先ずは第一回戦の後半、いってみよー!』


 魔道具によって拡声されたシャマの宣言に、観客席から待ってましたとばかりに歓声が上がった。

 武舞台脇に設置された巨大な銅鑼が打ち鳴らされ、竜の方角から小さな――おそらくは今大会の中で最も小柄であろう選手が入場してくる。


『本日の初戦、その片割れは魔族領の若手の戦士! 《風兎》選手だー! めっちゃ可愛いけどかの《災禍の席》の直属にまでのし上がった実力派だぞ! めっちゃ可愛いけどー!』


 前のめりで可愛い可愛いと連呼する実況の声に、ムスっとした不機嫌さが丸分かりな雰囲気で歩を進める《風兎》であるが……確かにその姿は世間一般でいう処の愛らしい容姿であった。

 とはいえ、この場合は美醜的な意味ではなく、小動物的な意味で、だ。

 祖となる獣の特徴を引き継ぐ獣人であるが、その因子の強さには個体差がある。

 耳や手足にその特徴が少し残る、程度の者もいれば、限りなく先祖返りに近いレベルで因子を強く発言させた者もおり、《風兎》は後者――ほぼ最高深度の因子を有しているのが一見して見て取れた。

 端的に言ってしまえば、彼の姿は少しだけ人間的なフォルムをした二足歩行のウサギである。

 子供の背丈程度の大きさのウサギが、服を着てのっしのっしと二本足で歩いているのだ。どう言い繕おうが見目が愛らしいのは否定のしようが無かった。本人は凄まじく不本意そうだったが。

 己の内の獣としての因子をある程度抑える事が可能な者であれば、獣寄りか人寄りか、その外見と身体性能を随時切り替え可能なのだが……獣人にとって極めて高難度の技術である為か、習得者は少ない。

 おそらくは《風兎》もまだ習得には至っていないのだろう。魔族の中でも若手に類されるのであれば、それも仕方の無い事ではあった。


 年若い女性や小さな子供といった、小動物を好む観客層から一際大きな声援が上がり、「かわいい!」「ウサギさんがんばって!」と舞台に向けてやや黄色い声が飛ぶ。

 降り注ぐマスコットを愛でるかの如き声援に、限りなくウサギな顔であるというのに明確に怒りを感じさせる面相となった《風兎》が咆哮した。


「……うるせぇぇぇぇっ!? 誰がカワイイってんだコラ! そこのオイラの描かれた団扇持ってる奴! いつそんなモン作った!? ぶっ飛ばすぞぉ!!」


 童話に出てきそうな姿をしたウサギさんが、頭に乗せていた革の帽子をむしり取って石畳にたたきつける。

 彼の怒り自体は紛れも無く本心であり、本物なのだろうが……耳をピコピコと立て、高い声で上げる怒鳴り声の合間に本物のウサギの如くプゥプゥと鼻を鳴らす様は、残念ながら迫力というものが一切ない。

 益々可愛いと、特に子供を中心に歓声を浴びせられ、地団駄を踏んでいる獣人の若者を眺め、来賓席の《狂槍》が珍しく気の毒そうに呟いた。


「あの小僧、《万器》の部下だったか……あの性格であのオヤジが上司じゃ噛みつく事も多くなりそうだ、馬鹿笑いしてイジってるのが目に浮かぶしよ……」

魔族領(ウチ)を飛び出して帝国に来たっぽいですからねぇ……頭領(ボス)、彼が戻って来るなら所属を移してあげたらどうですか? 《赤剣》さんの処なら空いてるでしょ?」

「俺もウサギに生まれたかった……」

「ガチ泣きしてる!? キモッ!?」


 小さな観客達から大人気の《風兎》を見つめ、心底から羨望の瞳を向けて落涙している《魔王》を見てドン引きした《不死身》が嫌そうに距離を取る。


「《魔王》様は何故泣いていらっしゃるのでしょう……慰めた方が良いのでしょうか?」

「気にしなくていいぞーリリィ。アレはただの持病の発作みたいなもんだからな。それより、ほら。《風兎》選手を応援するんだろ?」

「はい。聖地でも、ウサギさんは小さくて可愛くて好きでした。あの大きなウサギさんが勝ち進めるように、リリィは応援します」


 同じく来賓席に座る聖女とエルフの少女のやりとりを聞いて、《魔王》が落涙を血涙に変えて「ゲフゥ!」と呻きながら吐血した。

 図らずも最近の推したる『姫』にトドメを刺された形の魔族の頭領を横目に、聖女の片割れであるアリアが困った様に微笑む。


「うーん……確かにモフモフしてそうだし、可愛いし、リリィが応援したくなるのも分かるけど……ボクとしては複雑だなぁ――《風兎》選手の対戦相手が友達だし、個人的にはそっちを応援したいんだよね」


 銀麗の聖女がそう呟いたのと同時、解説のシャマがもう一人の選手の紹介に入った。


『さぁ、お待たせしました! 魔族領のキュートな戦士に相対するは、我が国最精鋭の一人! 《刃衆(エッジス)》ローレッタ=カッツバルゲルだぁーっ!』


 今度は老若男女関係なく、観客が客層問わず一斉に歓声を上げる。

 怒号のごとき声援――取り分け地元である帝国民からの熱烈な応援を受けながら、獅子の方角より現れたのは豪奢な金髪巻き毛の少女だ。

 魔装処理の施された布製の騎士服に、これまた隊の正式装備たる魔装処理された黒い外套(コート)

 攻防を兼ねた魔装の手甲に包まれた両拳を打ち合わせ、その瞳には闘志の炎が燃え上がっている。

 か弱く、見目麗しい御令嬢。といった容姿ではあるが、意気揚々と進む姿は揺らぎや迷いなど無く、纏った装備に相応しい一廉以上の戦士である事が見て取れた。


 観客のカワイイコールに憤慨していた《風兎》だったが、真っ直ぐに自身を見据えて武舞台に上がって来る少女を見て直ぐに意識を切り替える。


「いい面構えしてる……流石は帝国で一番つえー奴らの一人って事か」


 腕を組んで不敵に笑う獣人の若者の言葉に、少女――ローレッタは無言で頷くと拳を構えた。


「まずは語るなら拳で、ってかい? いいね。オイラもそういうのは嫌いじゃないぜ」


 戦士としての本能を刺激され、益々笑みを深める《風兎》であったが。


(……滅茶苦茶愛らしいですわね……お部屋に置いてあるジェームズ君とそっくりですの。殴りづらくて困りますわ)


 腕組みして見上げて来る、自室に置いてあるぬいぐるみとそっくりなウサギの青年。

 それを見つめ返すローレッタは、今まで体験したことのない種の苦戦の予感に、内心で困惑を覚えていたのだった。







『何はともあれ、試合開始! さぁーて、かたや拳、かたや脚と、どちらも五体を武器とした戦闘スタイルの両者! 必然、至近距離(クロスレンジ)の攻防が多くなりそうだけど……ゲストの御二人はどうみますー?』

『そうですな……確かに両選手、有効打の間合いが近距離でありましょう。が、兎人である《風兎》選手の脚に追いつくは至難。必然、御令嬢は迎撃を以て打倒を図る機会が増える事になるかと』

『保有魔力的には《風兎》選手の方がやや上ですが、全選手でもっとも小柄な彼はリーチで不利が生まれそうですね。相手が長柄とかなら潜り込めばいいですが、ローレッタ選手も徒手ですし、切り返しは速いでしょうし』


 実況の三人がそれぞれに試合展開を予測しているのを聞き流しながら、《風兎》がその場で軽く地を蹴って舞台の硬さや感触を確かめる。


「さて、出し惜しみするガラでもない。初っ端からいく――ッ!?」


 いざ、その自慢の脚力を披露しようとした矢先、向かい合う少女が弾かれた様に突進を開始した。


「ッシャオラァッ!!」


 年頃の乙女が叫ぶには聊か以上に豪快な気合の叫びと共に拳が繰り出され、《風兎》はそれをかろうじて回避する。

 不発に終わった"真っ直ぐいってぶっ飛ばす"であったが、獣人の若者は楽しそうにピスピスと小鼻を鳴らした。


「ヘヘッ、いいね! 正面から全力でぶっ飛ばしにくるか!」

「どうも! こちとら二重の意味でやり辛くて四苦八苦してますわ!」


 ローレッタの言葉に嘘はない。眼前の対戦相手がお気に入りのぬいぐるみとそっくりで全力で殴るのに躊躇いを覚えるのも事実だが――それ以上に、自身より小さく、小柄な相手というのが思ったより厄介であった。

 これまで戦ってきた相手が基本、体格で上回る男性や魔獣といった見上げる相手であったのに対し、《風兎》は子供と然して変わらぬ背丈。

 必然、ローレッタの攻撃の軌道は殆どが打ち下ろしになる。

 それが苦手、というような温い訓練は積んできてはいないが、これまでの戦いの定石(セオリー)や連撃パターンが活用できないのは、少々問題だった。


(小兵相手の経験不足……ならこの試合で慣れるだけですわ!)


 だからといって、それで気後れを見せる様な娘ではない。

 徒手の間合いで軽業士の如く彼女の拳を回避する《風兎》だったが、横殴りの一撃を屈んで避けると同時にローレッタの脚が跳ね上がり、顔面に向けて膝蹴りが飛ぶ。

 だが、ローレッタが不慣れであるのとは逆に、この兎人の若者にとって現在の状況は数多く経験してきたもの。

 膝や蹴り上げる軌道の爪先は、対処に慣れているといっても過言ではない。《風兎》は少女の膝を更に身を低くして躱すと、地を刈る水面蹴りを打った。

 彼は獣人の中でも脚力自慢の種だ。受ければ足を刈られて転倒どころか足首をへし折られかねない。

 相手は咄嗟の回避に前に出した脚を強引に引っ込めるか、思い切って飛び上がるか。

 これまでの経験から、それを狙い打ちにする算段を立てて《風兎》が蹴り足を振り抜こうとすると――。


「ふんぬっ!」


 これまた下っ腹に力の籠ってそうな気合の声と共に、ローレッタが体重を掛けていた筈の軸足を足腰の強さに任せて強引に振り上げ、モフモフしたライトブラウンの毛皮に覆われた足を踏みつける。


(イ")ッ!?」

「くぅっ!?」


 予想外、といった驚きを伴った苦鳴をあげたのは両者同時であった。

 石畳とブーツの靴裏に蹴り足を挟み込まれるも、その脚力で足を振り切ってみせた《風兎》。

 咄嗟に相手の水面蹴りを踏みつけた筈が、相手の脚の強さに乗せた靴裏ごと持ち上げられ、宙に蹴り飛ばされたローレッタ。

 かたや脚へのダメージの確認の為に咄嗟に後方に転がり、かたや蹴り飛ばされた状態から身を捻って着地し、二人の距離が大きく離れる。

 息も付かせぬ攻防が一時止まり、闘技場(コロッセオ)に二人の戦士の技量を称える歓声が湧き上がった。


 実況席から身を乗り出したシャマが、やや興奮した様子で声を上げる。


『おぉー、これは良い試合! 互いに慣れ不慣れの要素がある戦いだけど、ローレッタちゃんが無理矢理それを引っ繰り返した形か!?』

『咄嗟に相手の蹴り足を靴裏にて挟んだのは良い判断ですな。《風兎》選手は己の武器たる脚に痛手を受けた御様子。負傷の度合いによっては苦しい戦いになるでしょう』


 続くガンテスの言葉に、《風兎》が足を宙に持ち上げてプラプラと揺らし、笑って見せた。


「だとさ。チャンスだぜお嬢さん、打って出てきたらどうだい?」

「……手応えはありましたが、まだまだ動けるでしょう。魔族の方の頑丈さ、ある程度は聞き及んでいますわ」


 油断無く拳を構えるローレッタに対し、「バレたか」と軽く肩を竦めてその場で軽く跳ねて見せる。

 全くダメージが無い、という事は無いのだろう。互いに魔力強化を用いたガチガチの接近戦を行っている最中に踏みつけたのだ、それこそ現在実況席に居る筋骨隆々の岩みたいな司祭でもない限り、脚の負傷は確実である。

 だが、この可愛らしい兎人の若者が痛みを恐れて戦いに類する行動を鈍らせる事がないのは、短いやり取りと攻防の中でも容易に察せられた。

 蹴り飛ばされたと言っても靴裏を乗せた状態から吹っ飛ばされたローレッタにダメージは無い。

 状況はやや少女の優勢へと傾いたが、まだまだ油断出来るような相手でも無いのは確かだった。


「さっきも言いかけたけど……出し惜しみは好きじゃないんだ、本気でいくからな」


 トーン、トーン、と。その場で跳ねながら《風兎》が小さく、何事かを呟く。

 おそらくは魔法の詠唱である、と判断したローレッタが警戒を高めていると、魔力が彼の両の手に集まり、生み出されたのは圧縮された風の塊だった。


『む、拙僧の見立てでは、《風兎》選手は近接特化だと判断しておりましたが……どうやら魔法も併用して扱う御様子』

『術の構成としてはシンプルですね。迎撃として扱うのなら圧縮された風の塊は便利ですが、攻撃に用いるのには風の魔法の強みである速さが落ちてしまう筈なんですけど』


 解説席のゲスト二人から疑問の声が上がるも、それには頓着する事無く《風兎》は右手のソレを構えた。


「そいじゃ、行くぜぇっ!」


 叫びと共に放たれる風の魔法。

 だが、サルビアが言った通り、圧縮した風の塊は同系統の風の刃や衝撃などより威力はあれど速度に劣る。

 魔法は矢の如き速度で飛来するが、それでも《刃衆(エッジス)》クラスの使い手を捉えるのには不足に過ぎた。

 ローレッタも身を傾げて余裕をもって躱し――次の瞬間、放った風の魔法に倍する速度で飛び込んできた《風兎》に瞠目する。


「あーらよっとぉ!」

「ぐっ!?」


 駆け抜けざまに蹴りが放たれ、咄嗟に受けた腕に少なくない衝撃が走った。

 手甲で受けても伝わる蹴撃の威力に押され、武舞台の石畳を滑りながらローレッタは後退する。否、させられた。

 ブーツの踵で石畳を抉りながら停止し、すぐさま凄まじい跳躍力で一足飛びに背後に跳んでいった対戦者の方へと振り向こうとして――。

 首筋が総毛立ち、湧き上がる戦慄に押される形で、振り向く事無くその場に転がる様に身を投げ出す。

 身を伏せた彼女の頭部があった場所を、先程と劣らぬ速度と威力の蹴りが空気を抉りながら駆け抜ける。

 どうやったのか、殆どタイムラグを見せずに同等の跳躍、そこからの強襲をみせた《風兎》が舞台の端へと着地した。


「――っとっと。あぶね、危うく場外になるところだ。使うにゃやっぱりギリギリだな、ここの広さは」

「……魔法の用途は攻撃ではなく"足場"、そういう事ですのね」

「御明察。実際には見てないだろうに一発で理解するのはすげーよ」


 即座に跳ね起きたローレッタが警戒も露わに左手に残された《風兎》の魔法を注視して、それに対して彼はウサギそのものな顔で器用にニヤリと笑ってみせる。

 種としてはそこまで複雑なものでもない。


 圧縮した風の魔法を発射、その後に魔法のあとを追う様に跳躍。

 魔法を避けるなり迎撃するなりした相手に向け、その爆発的な脚力を以て追撃をしかける。

 相手が魔法を回避した場合は、そのまますっ飛んで自らが放った魔法に追いつき――それを足場として蹴りつけ、圧縮空気の破裂も利用して再度跳躍。背後から間を置かずに強襲、という訳だ。

 速度で劣る代わりに威力を高めた風の魔法だ、初見は殆どの者が回避を選ぶのもこの三段構えの攻撃を組み立てる一因となっていた。

 中々にトリッキーな技だが、相手の心理状態も加味して実行されたソレは、肝の冷える見事な攻撃だ。

 最後の強襲を躱せたのは偶然に近い。内心では冷や汗を拭う心地のローレッタである。

 何やら観客席の方からテンション高く、空圧〇拳だ! と叫ぶ知り合いの青年の声が聞こえたが……何処ぞの流派で正式な技術として伝わる技なのだろうか?


「さて、続きといこうぜ――この場所の広さの感覚も掴んだ、もうちょい厳しくなるから覚悟しろよ」

「上等ですわ」


 空いた右の掌にも再び魔法を生み出す《風兎》に対し、不敵に笑い返して腰を深く落とし、迎え撃つ構えを取るローレッタ。

 実の処、闘技大会のルール上ならば彼の技への対処方法は幾つか思いつく。

 リングアウトが存在する以上、極論、舞台の端近くに陣取り、繰り出される飛び蹴りに対し回避に専念するだけで相手に場外負けを意識させる事も可能だろう。

 尤も、《風兎》自身もその可能性は考慮しているだろうし、対処も心得ている可能性はあるが。


 ――だが、これはお祭りで、腕試しの舞台だ。


 その様な尻切れトンボの如き消極的な方法での勝利など、観客も、運営側である帝国も望んではいないだろう。

 何より、ローレッタ自身がそのようなやり方で勝ちを拾うなど、御免被る。


(わたくし)はカッツバルゲル――障害と困難は正面からぶち破って進むのが我が家の流儀)


 無論、騎士であり、同時に貴族の端くれである以上、護るべき民を背にする戦いで迄ゴリ押す流儀ではない。

 だが、試し合い……純粋に己が戦武をぶつけ合うこの場においては、存分に貫くべき彼女の誇りであった。

 何より――。


「これは間違っても侮りや侮辱ではありません――が、(わたくし)、貴方より速い方を知っていますの。此処で貴方を正面から捻じ伏せられぬと言うのなら、挑む事すら烏滸がましい、という事になってしまいますわ」


 自身が登場した獅子の彫刻が鎮座する方角へと、目を向ける少女。

 その隙を突く事もなく、彼女の視線の先を眼で追う兎人の戦士。

 二人の視線の先には、部下の奮戦を見に来たのであろう少女の上司の姿があった。

 選手出入り口の壁に背を預け、静かに試合の様子を見つめる銀髪の少女の姿を見て、ローレッタと《風兎》は――楽しそうに笑った。


「なるほど、脚でオイラよりも、か――そいつは素敵だ」

「えぇ、そうでしょう?」


 事此処に至れば、可愛いからド突き辛い、などという日和った感覚は遠い彼方に置き去りだ。

 比武するに相応しい強敵同士、互いに同種の笑みを浮かべ、両者は燃え上がる闘志に瞳をギラつかせる。

 張り詰める空気に、観客が固唾を呑んで勝負の行く末を見届ける中、二人は足裏で地を擦り、ジリジリと間合いを図り。


「なら、それも超えてオイラはオイラの《災禍の席(もくひょう)》に挑む。アンタはここで一回休みだ、ローレッタ」

「殿方なら淑女(レディ)に譲るべきですわよ、ミスタ・《風兎》――退かないのであれば押し通るまでですわ」


 ――瞬間。


 先程よりも多くの魔力を練り込んだ風の魔法を、《風兎》が投げ放つようにして打ち込む。

 軌道上の大気を巻き込んで回転しながら突き進むそれに向け、ローレッタは前に出た。

 紙一重では逆巻く風に巻き取られ、体幹を崩される。体勢を保持できるギリギリの範囲を見極め、自慢の髪の先端や装備、白い肌が削られるのも無視して上体を横に振るダッキングで迫る魔法を躱す。

 そして、風の塊を追う様に飛び込んでくる小柄な身体。

 先のソレを上回る渾身の跳躍を以て繰り出された飛び蹴りは、弾丸の如き速度と砲弾の威力を併せ持つ凶悪極まりない必殺の一撃だ。

 先程と同じ様に防ぐ――無理だ、下手をしなくとも受けた腕がへし折られる。

 躱す――この速度相手にはこれも不可能に近い。何より、無理に避けた処で体勢が崩れ切り、風塊を踏みつけた追撃で狙い撃ちにされる。

 が、元よりローレッタはこの二つを選ぶ気は無かった。


 握る。己の武器を、己の征く道を切り開いて来た(相棒)を、強く、強く。

 全開の魔力強化と共に、闘志を、強敵への敬意を、目標へと挑む意気を、そして何より、必勝への意思を握ったグーに込め。


「オラァァァァァァアッ!!」


 鉄拳と化した拳で以て、ローレッタは《風兎》の蹴りを正面からブン殴った。


 互いの纏う魔力がぶつかり合い、炸裂する。

 拮抗はほんの刹那の間のみ。


 渾身の、満身の力を込めて打ち込んだ蹴撃と拳撃が、同時に大きく弾かれる。

 必殺の一撃を相殺され、空中で一瞬の停滞を見せた《風兎》だが、次の瞬間にはぎゅるりとその場で身を丸めて回転し、逆の足で踵を打ち下ろし。

 砲撃を殴りつけるのと大差ない真似をしたローレッタは、己の拳――特に手首の骨に亀裂が入った感触を感じながらも、一切怯まずに逆の拳を握り、更に踏み込んだ。

 天より落ちる踵と、地より昇る拳が交差し、そして。


 全身を使って跳び上がったローレッタ渾身のアッパーが、《風兎》の小さな顎を打ち抜いた。







『決まったぁぁぁぁっ!! 両者譲らず、最後の一瞬まで全力全開を振り絞った先、辛うじて勝利を掴み取ったのは……ローレッタ=カッツバルゲルゥゥゥッ!!』

『お見事! 互いに己が戦武と志を貫いた素晴らしき戦いでありました! いやはや、若さとはかくあれかし! 拙僧も中てられ、気が昂ってしまいそうです!』

『!? が、ガンテス様がたかっ――ウォッホン、オホン! とても見応えのある試合でした! ただ、御二人とも結構なダメージが心配されますね、特にローレッタ選手は次の試合に持ち越さない様、しっかりと治療を受けて頂きたい処です』


 実況のシャマが「うぉぉぉぉっ、あたしちゃんの後輩は最高ッしょ皆!」と、自重を投げ捨てて大はしゃぎするも、それをやんわりと諫める筈のガンテスも先程までの名勝負にテンションが上がっているせいか、止める気配が無い。

 二人よりは幾分冷静なサルビアであったが、妙に挙動不審な上に両選手の負傷具合を気にして、場合によっては自分も治療を手伝った方が良いかと会場内のスタッフに連絡を取り出し、実況席は実に混沌とした様子であった。


 現行の試合の中で間違いなく一番と言って良い名勝負を繰り広げた両名。

 それを証明する様、両者を称える大歓声が降り注ぐ中。

 戦いの結末。その勝敗が示すが如く、敗れた戦士は武舞台上で大の字になってひっくり返り、勝利を収めた戦士は真っ直ぐに立ってそれを見下ろしている。


「…………負けちまったか……」

「紙一重でしたわ。先に与えていた貴方の脚へのダメージがなければ、結果は逆でした」

「……それもアンタにやられたモンだろ――ったく、ぐうの音も出ない完敗だよ」


 鍛え直しだよクソッ、とボヤく《風兎》に向け、良い事を思いついた、といわんばかりの表情でローレッタが両の掌を打ち合わせて――片腕の骨があちこち不味い事になっているのを思い出して悶絶した。


「うぐぐ……おててがクッソ痛いですわぁ……そ、それはそれとして、手っ取り早く鍛えたいというのならミスタも《刃衆(エッジス)》入りを目指すのはどうでしょう? 見た処、《災禍》の方々の下に戻るのには躊躇いがある御様子ですし」

「……帝国の部隊に魔族のオイラが入るのか、それって難しく……いや、問題が出ないか?」

「いえ、全く。かくいう(わたくし)も北方の出ですし、なんなら故郷で爵位も頂いてましてよ?」

「お嬢様っぽいなと思ってたけど、マジで良いトコのお嬢様だったのかよ」


 問題なんかねーですわよ、と小首を傾げる金髪巻き毛の少女の言葉に、寝転んだまま《風兎》は来賓席にいる自国の頭領へと眼を向ける。


「……ウサギさんが負けてしまいました……」

「ひ、姫、あぁ、そんなお顔を曇らせて! クッソ、俺が出場できてれば姫に全戦全勝を捧げるのに!!」

「「「自重しろや焼き鳥」」」


 なにやらしょんぼりと肩を落としているエルフの幼女と、それを見て酷く狼狽えている《魔王》を暫し眺め……溜息一つ漏らして正面――快晴広がる青空を眺めた。


「まぁ、大見得切った割に一回戦負けしちまったし、戻り辛いのは確かだしなー……仮に今戻っても、あの馬鹿上司(オヤジ)が馬鹿笑いしてイジってくるのも目に見えるし、考えとくよ」

「期待して待つとしますわ――万事恙無く進めば(わたくし)にも後輩が出来ますわね!」


 悪戯っぽく、だが瞳をキラキラとさせて楽しそうに笑うローレッタに、それが狙いかよ、と小さく苦笑する獣人の戦士。


『なんだか楽しそうな会話が聞こえるぞー! これはアレか、キュートなウサギ君の参入フラグってやつ? ナイスだローレッタちゃん! ちょー最高な後輩だぜ!』


 実況席から飛んで来た揶揄いを含んだ声に、《風兎》の耳が萎れて鼻が不満げにプウプウと鳴らされる。


「あの実況のねーちゃん喧しいな。最初っから最後まで人をカワイイカワイイ連呼しやがって……アレも《刃衆(エッジス)》だってんなら、入隊できたら意趣返ししてやるのも悪かない」

「あの方、(わたくし)の先任ですわよ。ぶっちゃけ訓練でも勝った事ありませんの」

「マジかよ!? あんな馬鹿っぽそうな女なのにか!?」


 ローレッタに無事な方の手を差し出され、引っ張り起こされながら。

 あっさりと告げられた衝撃の真実に、再び天を仰いだウサギさんは「世界って広いわ……」とボヤいたのであった。










《風兎》


多分フウって読む。

見た目童話に出て来る二足歩行のウサギさん。

兎だけど酉忍の技の使い手。一回戦敗退となったが《刃衆(エッジス)》加入フラグが立つ。

表面上反発しているが、上司の《万器》に対しては強い尊敬やら敬意やらを抱いている素直になれないピュアボーイ。

坊主扱いをやめてもらいたくて、闘技大会へと参加。

優勝の看板を掲げて同格たる《災禍》への加入に挑む気だった。

上司の下を完全に離れる事に思う事が無いわけでもないが、いっそのこと数十年単位でみっちり《刃衆(エッジス)》として経験と修行を積むのもアリかな、という長命種独特の感覚でのプランも考え中。






???

「(駄犬とシスターの約束を聞いて)ちょっ、やめっ……ヤメロォ! ごしゅじんのあほー!」








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