デートだよ、サルビアさん!(前編)
「お、おおおお久しぶりですガンテス様! 本日はこの町の案内や付き添いしていただけると……聖女の御二方の護衛のお役目があるというのに、申し訳ありません!」
「はっはっはっは! なんの、お気になさらず! サルビア殿の御立場を考えれば、付き添い人には拙僧めが適任であると猊下からも懇々と説明を頂きました故!」
魔族領南部、快晴続く空の下。
恐縮と緊張、それに少なからず高揚が入り混じったエルフの女性の声に応じて、巨漢の朗らかな大笑が響き渡る。
魔族領を発端とした帝国と教国、エルフの大森林を含めた共同のバカンス計画であるが、日程的には中間に差し掛かったことで、各国から首脳を担う者達もぼちぼちと参加を始めていた。
エルフの最長老たるサルビア=エルダも本日より魔族領入りし、観光と交流を兼ねて早速町を見て回る予定を組んでいる。
現在は荷を旅館へと置いて玄関前へ、これから観光と見学に出発、といった段階だった。
供となるのは、ガンテス=グラッブス。教国が最高戦力の一人にして、人類種最高峰の筋肉を誇る漢である。
教国の人間であるガンテスが護衛と案内を兼任する事になったのは、一応、尤もらしい理由があった。
過去のエルフ達と魔族の関係性。
嘗ては友好的とは言い難かった両者の、種族差激しい価値観や人間性によるすれ違いを補足、仲立ちする為、教国から護衛も兼ねた人当たりの良い実力者を貸し出す――そういった理屈を以て選ばれた人選なのだ。
「しかし、同胞の皆様が此度の町巡りに同道出来ぬというのは、如何なサルビア殿が女傑とはいえ些か心細いのではないかと愚行いたしますが……よろしかったのですか? 本日は旅館にて骨を休め、町に出るは後日という形でも……」
「いえ! 是非とも今日でお願いします! 折角のふたりっ……ゲフォン! ゲェッフン! こ、これまでの魔族の方々との非友好的な関係が変わったと、最長老が率先して現地の人々と触れ合うことで示してゆきたいのです……!」
勿論、サルビアの言は建前である。
ついでに言えば、現地民でもないガンテスが案内人として選ばれた理由も同じく建前であった。
正確にはサルビアや彼女の部下達が自身に課している役目を、今回は建前として利用した、というべきか。
本日共にやってきた大森林のエルフ達が、其々に予定を組んでいるので二人に同行出来ない、というのは偶然ではない。
というか、エルフの代表たる最長老に同胞の護衛が付かないというのは、常識的に考えればあり得ない。
それでもこの状況となったのは、バカンスという来訪目的を理由に、エルフ達が敢えて最長老の護衛や付き人、という任から外れたからである。
予定を組む際に、サルビアが「ガンテス様とご一緒できたら良いなぁ……」という淡い願望を込めて教国へと伝えた要望を、部下が皆示し合わせて補強・フォローした結果だ。
理由は言う迄もないだろう――全ては、苦労人としての性が強すぎる自分達の最長老を、想い人であるグラッブス司祭と二人きりで過ごしてもらう時間を作り出す、その為であった。
無論、この件に関しては教国上層部……というか教皇がニコニコ笑顔で全力でGOサインを出して協力している。
一方でガンテスはそんな周囲の企てなど露と知らず、戦友にして友好国のトップたるサルビアに有意義なバカンスを過ごしてもらおうと、誠心誠意を以て今回のお役目に臨む心積もりであった。
「うむ、まっこと天晴れな志ですな。麗しき御婦人のエスコートなど無骨者には身に余る任ではありますが、拙僧も精一杯に務めさせていただきます」
「……ふぁ……は、はい。それでは、よろしくお願いします」
緊張しているサルビアの気を解すためか、敢えて茶目っ気を見せて教国の僧としての礼ではなく、帝国紳士が淑女に向ける礼を取ってみせる筋肉。普段から無骨者を自称する割には細やかな気遣いが得意な男なので、何気に所作も板についている。
削りだした岩の如き分厚く、硬い掌を優しく差し出され、呆けた――というか蕩けたような表情で返答したサルビアは、おずおずとその手をとった。
周囲の人間の周到な根回しと準備により、二人きりで観光と相成った筋肉とエルフの最長老。
出発した二人の背を見送り……距離が出来たところで、旅館の柱の影から数人が顔を出し、動き出す。
「行ったようだね。さぁて、僕達も後を追おうじゃないか」
「待ちなさい、ヴェティ。先ずは魔法による隠密を行ってからにしましょう」
「雑な魔法じゃあの筋肉馬鹿には気付かれる。お前の魔法がキモなんだ、忘れるなよ」
いい年齢して子供のようにワクワクとした顔の教皇を筆頭に、戦友に訪れた色恋沙汰の行方に興味津々な古強者達が二人を出歯亀――もとい、見守る為に追跡を開始した。
「南方の更に南端なれば、森深きサルビア殿のお住まいとは日差しの量が違いましょう。熱当たりや日焼けにお気を付けください」
「は、はい。ありがとうございます……確かに《門》を潜って直ぐ、気温差に面食らいました。そろそろ冬も近いというのにこの陽気は凄いですね」
「まさしく。同じ空の下、これほどの差異は女神が創造りたもうた天地の神秘を感じます」
照りつける常夏の太陽の下、町中をゆっくりとした歩調で進む二人。
エルフの故郷である大森林は勿論だが、《大豊穣祭》で訪れた帝国とも大きく異なる建物や周囲の空気に、サルビアは何度も頷いて辺りを見回している。
現地民でこそないが、ガンテスは南方南部についてもそこそこに知識があるようだ。彼女が興味を惹かれたものに軽い説明を行っていた。
もっとも、サルビアは興味深いものはあれど、問いや疑問があれば親身になって相槌を打ってくれる筋肉の反応を見る為にあれこれ質問しているように見える。
時折、説明の為に身を寄せる形になった場合など、僅かに身体を震わせたり仰け反らせたりと、中々に挙動不審であった。表情の方は実に嬉しそうに緩んでほんのり色付いているのだから猶更である。
そんな二人からやや距離をとった場所で、建物の影から顔だけを覗かせたアロハ姿の老人――ヴェネディエが実に楽しそうに背後の二人へと振り返った。
「見てるかい二人とも。自覚無しとはいえ、あのガンテスが御婦人とデートしてるよ。いやはや、長生きはしてみるものだねぇ」
いやぁ、愉快愉快。と笑って自身の顎髭を撫でる悪戯小僧の如き笑みの爺に、残りの二人――ミラとラックも同感だとばかりに深々と頷いてみせる。
「お前達の口から聞いてはいたが……こうして実際に見ると正気が削れる光景だな」
「それは流石に言い過ぎでしょう。ガンテスが男女交際に凄まじく縁遠かったのは確かですが、人柄やこれまで為した功績を考えれば、惹かれる女性が現れるのもあり得ない話ではない」
「――と、言いつつもミラ、君の本音は?」
「……正直に言えば、今この瞬間にも空から槍の雨が降って来そうな気がしてなりません」
長い付き合いのある友人に対し、言いたい放題の三人である。
追跡にあたって認識阻害の効果がある魔法を行使しているが、相手が謎の筋肉センサーを搭載したガンテスと、魔導士としては超一流に片足を突っ込んだレベルのサルビアだ。
魔法の効果に頼り切っていては、一瞬の違和感やこちらの向ける視線を感じ取って察知される恐れがある。なので、三人共に変装――というより、この場において違和感の少ない服装に着替えていた。
ヴェネディエは先にも述べた通りのアロハ姿。ラックは半袖のシャツに頭にバンダナを巻いている。目元を隠す為、二人とも遮光眼鏡を装着していた。
隠居後は放蕩してる遊び人の爺とゴリッゴリのスジもんにしか見えない二人だが、一応は町中に溶け込む風体ではある。
一方で、やや浮いているのはミラだった。
彼女は省エネモードとも言える何時もの姿から本来の若返った妙齢の姿へと戻り、いつもの修道服からパンツスーツのような服に着替えている。
つば広の帽子も合わせ、一見して避暑地に遊興や視察に来た貴族・豪商の婦人のように見えた。
観光客らしき装い、とは……まぁ言えなくもない。
だが、薄手の生地とはいえ半ば正装に近いピシッとした服装で、連れているのがアロハにグラサンの遊び人風老人とピチピチシャツを着た本職みたいな強面である。
それぞれに単品ではそう不自然でもないのだが、固まっていると中々に目立つトリオであった。
「お前にしては頑張った方なんだろうが……変装や偽装の類が絶望的に下手糞なのは相変わらずか」
「素直にあのサマードレスを着れば良かったのにねぇ」
「……結構。あのような服に袖を通すのは一度で十分です」
つい先日に弟弟子に散々に駄目だしを食らった身なので、ミラとしては相当に冒険したつもりで適した服を選んだのだが……ヴェネディエとラックからすればかろうじて赤点ではない、程度だったらしい。
微妙に温い視線を向けてくる友人二人の言に対し、きっちりと言い返しはしたが珍しく気不味そうに目を逸らす女傑である。
「《《あの》》って事は、例の気付かずに着たまま聖殿に戻って来た、って服か」
「そうそう、あのときのミラの慌てっぷりときたら! 笑い過ぎて悶絶しかけたよ」
「見てみたくはあるが、うっかり爆笑したらあの二人に気付かれる不安があるな」
「その状況で君の爆笑なんてレアなものまで見たら、認識阻害を維持できる自信がないよ、僕は」
ニヤニヤとたっぷり揶揄いが含まれた笑みを浮かべて会話する野郎二人の頭頂部に、電光石火で拳骨が炸裂した。
二連撃というよりどう見ても二発同時にしか見えなかった超速の右拳をラックはギリギリで回避し、ヴェネディエは頭頂に響いた衝撃に「ぐげっ!?」という踏まれた蛙の様な悲鳴をあげる。
「殴りますよ」
「……殴ってから言うなよ」
「おぉぉぉおぉぉ……ひ、久しぶりの拳骨は効くなぁ……!」
いつもは余程悪ノリが過ぎなければグーは出ないのだが、今回はタイミングが数段早い。どうやらこの女傑にとって、浮かれ気分のままサマードレス姿で聖殿内を闊歩してしまった事は相当な黒歴史らしい。
ちなみにこんなアホなやり取りをしていながらも、認識阻害の魔法や各々の気殺はしっかり維持したままである。嘗て教国で四英雄と称えられた老兵達の、練熟した技術の無駄遣いであった。
友人達が自重なく魔法と自前の技術を駆使して気配を殺しながら尾け廻してる事には気付かず、ガンテス・サルビアの両名は和気藹々と小さな露店を覗いている。
「これは……街路にも植えてある樹木の実のようですか……?」
「椰子の実ですな。内にたっぷりと水を蓄えている種は、この地で飲料として親しまれております」
店先に並んだ大ぶりな実をしげしげと眺めるサルビアに、店主が愛想よく笑ってガンテスの言葉に首肯した。
「でっかいお坊さんの言う通り、コイツは椰子の実のジュースさ。ウチのは甘味が強いって評判なんだ」
お一つどうだい? と続いた言葉に、少しばかり喉が渇き始めていたサルビアが頷き、銅貨を取り出そうと懐に手を入れた処で分厚い掌がそれを押し留める。
「この場は拙僧が。店主殿、御幾らですかな?」
「えっ……い、いえいえ! 案内して頂いてる身でそんな! 寧ろ私がガンテス様に御馳走すべきで……!」
「はっはっはっは! 道理を重んじるはサルビア殿の美徳ではありますが、此処は愚僧のなけなしの甲斐性が消えて失せるのを救って頂きたく!」
慌てた様子でサルビアの首と両の掌がぶんぶんと横に振られるが、朗らかに大笑したガンテスがやんわりと彼女の手を抑えたまま、自身の財布を取りだしてしまう。
エルフの最長老は恐縮することしきりであったが、眼前の巨漢の紳士っぷりと、只の飲み物とはいえ彼が初めて自分に品を贈ってくれたという事実に頬を紅潮させていた。
「も、申し訳ありません……」
「なんの。心身の労多きサルビア殿の初の"ばかんす"なれば、善き思い出の一助足り得れば幸いです」
にっこり笑う筋肉は、目の前の最長老殿が良い記憶どころかここ数十年の最大幸福量をぶっちぎって更新し続けて内心身悶えしている事に気付いていない。
そんな二人を見てなんとなく関係性を察した店主であるが、指摘も無粋だと思ったのかスルーを選んだ。
代わりに銅貨を受け取ると、商品である椰子の実を手に取ってニヤリと笑う。
「毎度あり――初めてだと青臭さが気になるって奴も多いんだ、追加料金になるが魔法で冷やしてやろうか?」
「あ、それは大丈夫です。自分で冷やせますから」
「あぁ、お客さんエルフだもんな、そりゃそうか……麦藁は一本でいいのかい?」
「……それでお願いします」
サルビアの返答に間があったのは、同じ椰子の実に二人並んでストロー挿してシェアする光景を思い浮かべたからである。流石に出来る訳もないので、頼んだのは一本だったが。
「あいよ、じゃぁちょいと待ってくれ。今、穴を空けちまうから」
「店主殿、失礼をば」
注文を聞き終え、早速硬い実にストローを挿す穴を空けようと太めの錐を握る店主だが、先に購入した品を手に取ったガンテスが、白パンをむしるような気軽さで椰子の実の上部を捻り切った。
「……こりゃ凄ぇ。ここいらの椰子は滋養も味も強い代わりに、魔獣でも牙を通すのに苦労する硬さなんだが」
「不躾を致しました、ご容赦を」
「いや、良いもん見させてもらったよ。飯の席での話の種にならぁ」
そのうちまた寄ってくれよ、と笑う店主に二人は一礼し、サルビアが実の内部にたっぷりと満ちた水分を魔法で冷やしつつ、その場を離れる。
魔族領では滅多に見ない純血のエルフである彼女もそうだが、上背や体格の優れた者が多い魔族と比べても頭抜けた巨躯を誇るガンテスも結構な注目を浴びている。
そんな者達の一人――道脇にあるベンチに腰掛けて二人を注視していた冒険者か傭兵らしき髭面の魔族が、何かの確信を得た様子で興奮して立ち上がった。
「おぉ、あの見事な体躯、そして剛力。やはりあの御仁は……! これは是が非でも一手交えねばならん!」
彼はウッキウキの表情とテンションで腰の剣に手を当てると、ゆっくりと遠ざかってゆく巨漢の背を追って駆け出そうとする。
いざ、一戦申し込まんと手を振りながら大声で呼び止めようとして――音も無く背後に忍び寄ったラックに一瞬で締め落とされた。
そのまま流れる様な動作でベンチに引き戻され、元居た位置に失神した状態で座らされる。
接触から再着席(強制)まで、町中でありながら目撃者ゼロ、ジャスト一秒のとんでもない早業であった。
「悪いな」
聞こえていないであろう謝罪を投げかけ、ラックは友人二人のもとへと戻る。
元の位置に居たのはヴェネディエだけ。視線を廻らせて見れば、丁度ミラが同じように反対側の街路から戻って来るところだった。
「そっちにもいたか」
「えぇ。やはりガンテスの体格は目立ちますからね。私達のように変装している訳でもないですから、気付く者は多いのでしょう」
「《災禍》の方々が旅行の序盤に自重を呼び掛けてくれたみたいだけどねぇ……国民性みたいなものだから、完全にとはいかないよ。敬意や友好ありきの行動だしね」
大枠では好意を基にしているとはいえ、笑顔で喧嘩を吹っ掛けてくる魔族領式コミュニケーションが発生することは予想の範疇であった。
自覚は全く無いにせよ、これは木石ならぬ鋼と岩で出来てそうな旧友の初めての異性との逢引である。
相手方のサルビアが、相当に一途で情深いのも実際に見て確認出来た。
ならば、万事恙無く終わるようにお節介を焼くのは友人として当然なのだ。決して出歯亀の代金がわりとかそういう意図は無い。
ガンテスに挑もうとする頭魔族領を速やかに無力化した三人は、尾行を再開しようと歩き出す。
――と、そのときであった。
「待てよ、そこのスーツのねーちゃん、スゲー強いじゃねぇか! ちょいと手合わせしてくれよ!」
「先の手際、美しい金灰の髪……もしや、かの四英雄筆頭か? いや、どうであれ強者に違いなし! 是非とも――!」
唐突に背後から上がった大声に、先を歩く尾行対象に気付かれては堪らんと、反射的な反応でミラとラックが動く。
どちらもやはり冒険者か武芸者か、といった格好の魔族二名は、かたや腹パン、かたや振りぬいた腕で首をコキッとされて一瞬で意識を飛ばした。
「見られてるじゃねぇか」
「しかも素性まで気付かれていたねぇ」
「……この様な大通りで、腕利きを相手に目撃者無しで無力化出来るラックが器用に過ぎるのです」
友人達に其々呆れ、苦笑を乗せた視線を向けられ、言い訳するような言葉と共に目を逸らす女傑である。弟弟子辺りが見れば眼を剥く程度には希少な光景であった。
筋力か磨いた技かという違いはあれど、ミラの戦士としての戦闘スタイルが小細工抜きの正面突破、というガンテスの同類寄りであることは、長い付き合いのある者には周知の事実だ。
隠形の類もやれない事はないので、本人は脳筋扱いされると凄まじく不本意そうなのだが……ヴェネディエとラックは『悪党・外道は取り敢えず殴っとけ、結果は後から付いて来る』と言わんばかりだった若い頃を知っている。
外見が当時の姿に戻ったミラを脳筋扱いしていまうのは、無理からぬ事なのかもしれない。
取り敢えず、糸の切れた人形よろしく膝から頽れた魔族達を互いに寄りかかる形で座らせる。
こうなると、流石にヴェネディエの魔法があっても道行く通行人や露店商などの目に留まるのだが……喧嘩も殴り合いも日常茶飯事なので特に騒ぎにはならなかった。実に魔族領である。
周囲にミラ達の力量に気付ける者がまだ居れば、挑戦者襲来が発生する可能性があったのだが、幸いにしてこの場は打ち止めの様だ。
「ちょっと距離が空いてしまったね、急いで後を追おうか」
遮光眼鏡の位置を指先で調整しつつ、相も変わらず楽しそうなアロハ爺の言葉に、残る二人も頷く。
「この分だと、目を離してる間にまた何か起こりそうだしな」
「えぇ、折角なので確りと見届けたいものです」
普段はヴェネディエを諫める側のミラまで、今回ばかりは自重を忘れたかのようにノリが良い。
常夏の陽気に中てられたのか、筋肉の遅れてやってきた青春模様がそれだけ衝撃的なのか。
或いは、嘗ての時代には早々出来る筈も無かった悪戯小僧のような悪ノリを、彼女も楽しんでいるのかもしれない。
何はともあれ、始まったばかりの筋肉と最長老の逢瀬の時間を、老兵達は嬉々として追い、見物に向かったのであった。
「おい、アレ見てみろ……! グラッブス司祭とサルビアじゃないか?」
「え、どこ……わ、本当だ。先生、今日はボクらの付き添いから外れるって言ってたけど、サルビアさんと会うためだったってこと?」
――マジか! こいつはデバガ……見守るしかありませんねぇ!(迫真
着々と興味津々な見物人を増やしつつ、後半へ続く。