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探せ、海の幸(後編)




 いきなり現れたクロンと名乗る魔族の娘の突拍子もない自己紹介。

 オレ達が呆気に取られていると、彼女と顔見知りらしき《漢槌》が意外そうな声を上げた。


「なんだ、結局来たのかね」

「正直、ただのお客さんならお任せしてたけどねっ!」

「フハハハ! 正直! だがそれもまた良し!」


 フリフリの服装――本人の申告通りの職業だとすれば衣裳というべき服の裾を翻し、いかにもソレっぽいポーズを決めて見せたクロンは、悪戯っぽい口調でぶっちゃけて片目を瞑る。

 強靭すぎる腹筋を使って声を出してるせいか、《漢槌》は大ボリュームな上に開けた場所でもよく通る声量で爆笑した。

 だが、揃って物言いたげな視線を向けるオレ達に気付いたのか、軽く咳払いしてフリフリ衣裳の青髪娘へと掌を差し向ける。


「グラッブス君と《虎嵐》君以外は初見だな、紹介しておこう! か――」

「はーい、ちょっと待とうか☆」


 ガシッ、と。

 言葉の途中で、紹介しようとした当人から(ヘルム)を鷲掴みにされ、その言葉が途切れる。

 華奢にすら見えるその細腕の何処にそんな力があるのか、クロンは《漢槌》の首に腕を引っかけて引き摺り、明後日の方向へと歩き出した。

 更に顔見知りだという《虎嵐》まで空いた手で引っ掴むと、やや離れた場所まで強引に引っ張ってゆき、何やら二人に耳打ちを始める。

 父親が引っ張られていった事でその場に残されたリリィを手招きで呼び寄せ、麦わら帽子が乗せられたその頭を撫でてやりながら相棒が口を開いた。


 ――ほんで、何者なんですかねぇあの自称・アイドルさんは。


 大の男二人の首根っこを抑えつけ、ひそひそと何かを言い含めている小柄な背中を皆で眺めながら、グラッブス司祭へと端的な問いが飛ぶ。

 魔族領の面子以外では唯一の知り合いらしいらしいからな。司祭も当然向けられる質問だと思っていたのか、あっさりと頷いて、そしてちょっと申し訳なさそうに苦笑した。


「確かに以前から知己を得ております。が、どうやら身の上を今は伏せておきたい御様子。拙僧がこの場で仔細を口にするのは聊か無粋でありましょう。ご容赦をば」


 自身の後頭部に手を当て、巨躯を折り畳んでの謝罪に相棒はそっかー、と呟いて肩を竦める。

 現れ方が唐突すぎて若干得体が知れないクロンだが、司祭が特に問題視してない人物なら大丈夫だと判断したんだろう。

 なんだかんだ言って、グラッブス司祭の事は信頼・尊敬してるからなコイツ。その所為で鍛錬のお誘いを断り切れなくて、たまに地獄を見てる訳だが。

 そう長い話でもなかったのか、ひそひそ話をしていた三人は直ぐに戻って来た。

 やっぱりちょっと態とらしいくらいの、大きなウインクを一つしてクロンが笑みを浮かべる。


「そういう訳で、僕も同行させてもらうからねっ!」


 そういう事になったらしい。

 まぁ、オレも相棒と同意見――グラッブス司祭が人柄を保障しているなら特に異論は無い。他の面子の顔を見回せば皆も同意見のようだ。

 斯くして、案内役二名をプラスした計九人で市場を巡る事になったのである。







「そっか、じゃぁ本格的にアイドルを目指し始めたのはここ数年なんだ」

「切欠になった転移者の子は物凄く詳しかったけど、ファン目線からの知識だからノウハウとかはなくてねっ、何年も手探りで地道にやって、やっと戦争も終わって本格的に始められたのさ☆」


 喧噪と活気に満ちる魚市を一塊になって進む傍ら、自己紹介も兼ねて案内役の《漢槌》とクロンの話を聞く事になった。

 名誉網元とかいう文字通りの名誉職に就いてるらしき《漢槌》もそうだが、アイドルを名乗る青髪娘の方もここらでは顔が利くらしい。すれ違う人達から偶に挨拶されたりお辞儀されたりしている。

 話といっても、語るのはもっぱらクロンの方だ。今はあっという間に打ち解けたらしきアリアと並んで歩き、この世界では突飛ともいえるアイドルなんていうものを目指し始めた経緯を語っていた。

 当然ながら"クロン"というのは本名じゃなくて芸名らしい。まぁ、魔族の『名』を重視する文化を考えれば当然か。

 しかし、聞けば十年以上か。長命種であるが故の時間の使い方だな。

 元いた世界では華やかなイメージが強い職種なので、年齢が上がってきたらそこから女優とかにシフトしていくのがセオリーなんだろう。

 しかし彼女は魔族の中でも更に長命にカテゴライズされる精霊種を本筋にした混血(ミックス)らしい。

 ならば、加齢による外見の変化なんてあって無いようなもの。そこら辺は気にしなくても良いのだろう。

 相棒も同意見だったのか、御長寿アイドルか~、なんて微妙に違う相槌を打ったのだが……。


「チッチッチッ、僕は今年で十七歳――来年も再来年も十七歳! 即ち永遠のアイドルだゾ☆」


 立てた人差し指を左右に振って笑うクロン。

 その言に、相棒もマジかよこの世界にもあったんか十七歳教、とか真顔で呟いている。ちなみに十七歳云々も同じようにドルオタと思われる転移者から教わったネタらしい。


 で、《漢槌》の方も、クロンほどお喋りでは無いにしても寡黙って訳じゃない。

 魔族領の幹部でありながら、繰り返しも含めてオレの記憶に無いのが不思議だったので、普段の所在や大戦の終盤に何をしていたのか、気になって話を聞いたりした。


「へぇ、基本は縄張りを延々と巡回してたのか」

「うむ、そうなる! なにせ戦時中は領内に紛れ込んだ信奉者共が定期的に嫌がらせを行っていたのでね! 私は主に南部辺境や僻地の掃除担当だったという事だ!」


 そんな感じで基本、担当区域……魔族式で言う処の"縄張り"をランダムに巡っていた《漢槌》だが、流石に大戦の最終局面ともいえる総力戦には参戦していたらしい。

 だが、後衛の砲兵部隊――長距離攻撃を得意とする魔導士や弓使いを纏める立場であった為、最前線に居続けたオレ達とはニアミスすらしなかったようだ。

 一緒に話を聞いていたミヤコも納得がいった顔で頷く。


「成程……魔族の通り名は種族や戦い方なんかに由来したモノが多いとお聞きしてますけど、例外もあるんですね」

「フハハハ! 勿論、本来の得物は名の示すとおり大槌だとも! だが砲兵隊の本来のまとめ役である《不死身》君には、あの戦いでは狙撃に専念してもらったのでね! シグジリア君を補佐に着けて貰って、指示を出しつつ私も弓を引いていたという訳だ!」


 どうやら《虎嵐》とシグジリアとはそれなりに交流があるらしい。

 オレも何度も世界を回帰させて繰り返した身ではあるけど、聖女という看板やコネを加味しても個人で動き回れる範囲なんてたかが知れている。

 世の中全体でみれば知らない事は多い、今回はその典型だな。


 パッと見では中々に強烈なインパクトを誇る黒光りマッチョマンと自称アイドルっ娘だが、それでも《魔王(トップ)》と比べればずっと常識的だ。前者の方は定期的に挟まれるポージングがかなり暑苦しいけど。

 そんな感じで穏やかに交流をしつつ、特に問題が起こる事もなく目的の場所――この漁場で開かれている市場へと到着した。

 元より活気と熱気に溢れた場だが、ここらは更に熱量が高い。

 今もオレ達のすぐ脇にある店では、店員と客が熱心に値段交渉を行っている。額を突きつけ合ってそのうち胸倉を掴み合うんじゃないかって勢いだ。


「わー……今にも喧嘩になりそうだけど、あれが普通なのかぁ」

「まぁ、周囲のこの喧しさだしな。声も自然とデカくなるんだろ」


 驚きと感心がブレンドされた感想を呟く隣のアリアに応じ、オレも似た様な気分で頷いてみせた。

 しかし、こうして見回すと少数だが内陸の商人らしき人間もチラホラと見えるな。

 教国や帝国でも流通量は少ないけど海魚自体は出回っているし、ひょっとしたら此処で獲れた品をオレ達も口にした事があるのかもしれない。

 売り手と買い手の喧々囂々としたやり取りがそこかしこから聞こえる市場。

《漢槌》が見慣れているであろうその光景をぐるっと見回し、思案する様に兜の顎先部分に手を這わせる。


「生食の可能な食材が目的、との事だったね。ならば融通の利く食事処がある、先ずはそこで昼食はどうだろう?」


 その提案に、相棒が真っ先に食い付いた。喜色を浮かべておぉ、マジか! なんて言いながらアリアとハイタッチしている。

 実際、ありがたい申し出だ。相棒は市場で魚を購入した場合、直に捌く為に鞄にあれこれと詰めて持って来たみたいだが、要望を聞いて品を出してくれる店があるのならそっちの方が良い。


「それじゃ……そうだな、それでお願いするよ」

「うむ、今の時間ならそれほど混みあってはいないだろう! すぐ近くなので案内しよう!」


 一応だけど他の面子の顔を見回すと特に反対意見は無いようだし、《漢槌》の提案にオレが皆を代表して頷いて見せる。

 先導を開始した日焼けした逞し過ぎる背中についてゆく形で再度移動を開始。

 真っ先に着いてゆく相棒はひどくご機嫌だ。スキップでも始めそうな軽い足取りである。

 おっさしっみー、おっさしっみー、と謎の歌まで口ずさみだし、ニコニコと満面笑顔なアリアが乗っかって唱和を始める。

 まったく、子供かよお前ら……まぁ、かく言うオレも楽しみなのは確かなんだけどさ。


「レティシア、頬が緩んでるわよ」

「お前も似た様なモンだろうが」


 ミヤコが揶揄う様な口調で突っ込んでくるが、表情という点ではこいつも似たり寄ったりだ。大事な男と大事な(おとうと)がなんの憂いも無く笑う、というのはやはり良いものなのである。

 戦争が終わってまだ三年と経ってないし、こういった感覚を噛みしめてる人はまだまだ大勢いるだろう……オレ達の場合は本当の意味でそうなった――なれたのは最近なわけだし、猶更だ。

 ちなみに身内でなければ引くか苦笑いでもしそうな相棒のノリだが、何故かクロンには好評のようである。


「うん、良いねっ。とっても高ポイントだ」


 うんうんとばかりに満足げに頷いているのを見るに、どうやら好ましいらしい。

 まだ出会ったばかりの彼女だが、この世界の住人でありながら友人から聞きかじったというアイドルなんていうものを目指す娘だ。魔族である事を差し引いても中々独特な感性の持ち主なのかもしれない。

 で、眼前の合唱には何時の間にやらリリィまで加わってるので、子供っぽいとか馬鹿っぽいより先に非常に和む光景になっている。

 グラッブス司祭や《虎嵐》も加え、後方保護者面で《漢槌》の後に続くオレ達なのであった。







 すぐ近く、という言葉通り、すこし歩いた先に目的の食事処に到着。

 案内された飯屋は漁師や市場内で働く人達にも人気のある場所らしく、足を踏み入れた店内には実に食欲を誘う香りが漂っていた。

 リリィが深呼吸を行い、いつもより高揚を感じさせる声色で呟く。


「とっても美味しそうな匂いがいっぱいです。リリィはお腹が空いてきました」

「……あぁ、そうだな。八席殿が良い店というのも納得だ」


 これからいただく昼飯に向けて気合十分、とばかりに胸元で拳を握る食いしん坊な義娘を《虎嵐》が小さく頷きながら頭を撫でてやっている。

 市場内での人気店という話だが、昼時のピークは過ぎているので座る席に困るという事もなく、オレ達は大人数用の卓について其々ちょっとした品と、メインとなる生食可能な魚介に関して店主に話を通した。


「――と、いう訳だ。頼めるかね?」

「成程ねぇ……まぁ、《漢槌》の旦那の頼みだ。昼の客も捌けて来たし、漬け(マリネ)やサラダ用のものなら幾つか出せるよ」


 こっちの要望を伝えてくれる《漢槌》の言葉に、特に含むものもなく、店主さんは寧ろ面白そうに請け負ってくれた。魔族領特有のおおらかさもあるのだろうが、なんにせよ感謝である。

 転移・転生組はリリィを加えて気持ちそわそわしつつ、皆で卓について注文した料理が届くのを待つ。


「さて、醤油の準備は出来てるか?」


 相棒に視線を向けると、バッチリやで、と実に良い笑顔でサムズアップ。

 オレ達なんかは単純に食べるのが楽しみなのだが、ミヤコのやつはペンとメモらしき紙切れを取り出して色々と書き留める気満々だ。

 というか、コイツ宿でも飯の後にメモになんか書いてるし。和食(レパートリー)の再現に必要であろう魚介をチェックしてるんだろうな。

 マメイ氏がこの世界で再現した味噌と醤油は元・日本人にとっては紛れも無く重要且つ喜ばしい品なのだが、料理上手――しかも和食が一番得意らしいミヤコにとっては強力な"武器"でもある。

 ……旅行が終わっても、暫くはミヤコの動きに注意を払った方が良いのかもしれない。

 貝出汁や干物出汁の味噌汁なんかを餌にしたら、隣の馬鹿たれはフラフラと無防備についていっていただきますされてしまいそうだ。

 実際、昨日の小島での一件は本当にギリギリのタイミングだった。相棒の前ではしおらしいこのエ清楚(ゆうじん)にしては思い切った手管だとは思ったが、一回やった以上、今後同じような方法を使わないとも限らない。


 ……しかし料理、か。

 アリアもいつの間にか腕を上げてるみたいだし、オレも少し学ぶべきだろうか?


 隣に座る、すっとぼけた相棒の横顔をチラリと盗み見る。

 コイツが霊峰に向かう際、サンドイッチを弁当として持たせた事もあったけど……サンドイッチ自体がよっぽど変な物を具材にしなければ失敗なんてしようもないし。

 もうちょっと凝った(モノ)を作れるようになって。

 相棒が食べて、美味いって言ってくれたら……きっと嬉しいんだろうな。

 そんな風に夢想するも、(おとうと)恋敵(ライバル)に腕前で大きく水をあけられている現状、料理でどうこうっていうのは難しそうである。

 でも、オレだって別にメシマズって訳じゃないのだ。魔法技術みたいにとんとん拍子に、とはいかないだろうけど、練習すれば上達はするだろう。

 うん、やっぱりミヤコにドヤ顔されない程度には料理を学ぶべきだな。今度、料理長に話をしてみようと思う。


 メニューに無い品も頼んだ事もあって少し時間が掛かったけれど、色々と考えを巡らせていればその時間もあっという間だ。程なくして次々と皿が運ばれてくる。

 宿で出される食事も海鮮中心なので、何度か食べた食材なんかもある様だが……女公爵の肝入りな宿と、こうして漁業関連者が出入りする食堂では採譜(メニュー)の趣が違う。

 ざっくり言ってしまえば宿の方は全体的に上品で洗練されているが、こっちはボリュームもあって力強い。汗水たらして働く人たちの飯処だし、味だって濃い目だろう。

 旅館の飯と大衆食堂の飯、ジャンルが違うってだけだ。食事は美味けりゃ正義だし、みんな違ってみんな良い、というヤツだな。


「おー、きたきた。美味しそうだね」

「そうね、楽しみだわ……この皿はグラッブス司祭のものでよろしいですか?」

「これは忝い。いや見目や香りは言うに及ばず、実に滋養豊かな品々ですな!」

「むむっ、早くいただきますをしましょう。このままではリリィはお腹が鳴ってしまいそうです」

「……もう少しだけ、待ちなさい。今、猟犬殿が小皿を配っている」


 今回の市場探索に同行した面子が声を上げる中、相棒が運ばれて来た小皿を取りあげて醤油を少しずつ垂らし、手早く皆に配る。

 ちなみに案内役と急遽参加の二人組は昼食を済ませてあるらしい。ただ、魚醤に近しい調味料に興味はあると言っていたのを覚えているのか、相棒は二人にも味見用として小皿を準備していた。そういうところ、ほんとマメな奴である。


「フハハハ! では御相伴に預からせてもらおう! 実はちょっと気になっていたので有難い!」

「何気に気配りが利いてるねっ、そーゆーのはポイント高いゾ☆」


 紳士的筋肉というグラッブス司祭の同類である《漢槌》はさておいて、クロン的にはまたもやポイントが高いらしい……軽い口調だし、警戒しなきゃいけないような、妙な意味ではないと思うけど。


 さて、お待ちかねの最後の品だが、これは大皿でやってきた。

 楕円の皿に盛られたソレはそこそこの量がある様に見えるけど、九人で分ければ数切れずつ――まぁ、これは元からそのつもりだったので丁度良い。

 流石に日本人がイメージする様な綺麗な盛り合わせではないが、何種かの魚をそぎ造りに近い引き方で丁寧に並べてあるソレらは、紛れもなく刺身と呼べる代物だった。

 並んだ一口サイズの切り身は三種。赤身と白身両方ある。

 鮮度もばっちりだ。おそらくは今朝に獲れたものを締めて魔法で低温保存していた魚たちは、刺身用の引き方でこそないが身を潰さないよう丁寧にカットされ、美しい断面を覗かせていた。


 ――来たな、遂に。


「あぁ、何年振りだろうな」


 相棒のしみじみとした台詞にオレも心から同意し、二人で深く頷き合う。

 皆で大皿を覗き込み、元・日本人組は懐古混じりの小さな歓声が、他の面子からはほー、とかおー、と言ったやや気の抜けた関心の声が上がる。

 オレ達には懐かしさを掻き立てる品だが、純粋なこの世界産まれの人達には新鮮な生魚を切って並べてあるだけだからな。興味自体はあっても温度差があるのは当然だろう。


「それじゃ――いただきます」


 逸る気持ちを抑え、オレが掌を合わせて食事の挨拶を行うと、各々に祈りの言葉やいただきますを唱えてスプーンやフォークを手に取った。

 ぶっちゃけこのときのオレは刺身に気を取られ過ぎて、祈りの言葉をすっかり忘れて全飛ばししていたのだが……聖女という立場上、褒められたものでは無いそのうっかりをグラッブス司祭は目溢ししてくれたみたいだ。

 これがシスター・ヒッチン辺りだったら叱られていたのは確実だった、あの人が合流して来たら気を付けないとな。

 先ずは注文した魚介たっぷりのスープを匙で掬い、口に含む。


「うん、美味い」


 期待以上だな。ただ、なんというかパンよりも米が食いたくなる味だ。

 二日酔いのときに飲めば実に身体に染み入りそうでもある……いや、一端の魔導士になると魔法で解毒してしまうので、あくまで味としての感想でな?

 ジャンル的には漁師飯に近いんだろう。

 塩っ気が強めだけど、それに負けないくらいにしっかり具材の出汁がでている。潮汁ってやつか?

 根菜類を足して味付けのベースを塩から味噌にすればそれだけで豪勢な味噌汁にもなりそうだし、夢が広がるよな。

 顔を上げて周囲を見廻せば、皆も自分が注文した料理に舌鼓を打っている最中だ。

 特にリリィなんかは、エビと貝類のフライを交互に口に運びながら頻繁に頷いている。その瞳の輝きたるや、キラキラと音が鳴って星が散りそうだった。

 すっかり食いしん坊になったエルフっ娘だが、食べれる量自体は流石にアンナ並みに大容量って訳でもないらしい。ボリュームある昼飯で満腹になってしまわないよう、ときたま悩む仕草を挟ませながら隣の《虎嵐》と料理をシェアしている。


 ――あー、米食いてぇー……。


「それな」


 オレと同じスープを啜りながらパンを食い千切り、切な気な声色で呟く相棒に、言葉短く同意。

 パンも合わない訳じゃないんだよ、寧ろ一緒に食えば普通に美味い。

 けれど前世の、日本で生きていた頃の記憶が『一番の組み合わせはコレじゃないだろう』って訴えかけてくるんだよなぁ。

 あくまで個人の嗜好だから、転生者でもパン好きの奴はこっちで満足しそうではあるけど。

 まぁ、この場に無い物を強請っても仕方ない。米の為だけに霊峰(姫さん家)に突撃するとかウチの駄犬じゃあるまいし。

 とりあえず汁物は堪能したし、お次は……。


 店に箸は無いので、フォークを手に取る。

 目標は当然、大皿に並んだ刺身達だ。別にタイミングを合わせたって訳でも無いのだろうが、転移・転生組が同じくフォークを手に取って大皿に視線を向けたのは同時だった。


「マグロ……は流石に無いね、このオレンジのは分かりやすくサーモンっぽいかな」

「これは鰹、こっちの白身は……いえ、血合いもあるし赤身……鰤、かしら? 正確にはそれに近いこの世界の魚なんでしょうけど」


 小首を傾げるアリアとミヤコの意見には、オレも概ね同意だ。

 しかし、サーモンにブリ、カツオか……海の幸には旬というものがあるのだろうが……どれも脂がのっていて美味そうだし、元居た世界の基準はアテになりそうにないな。

 ちなみにミヤコ曰く、サーモンは身の色に反して白身魚に分類されるそうだ。

 とにかく、見た目通りに刺身にも適した食材なのかチェックしなきゃな。

 それも口にしてみなければ始まらない。

 各々がお目当ての魚にフォークを伸ばそうとした、そのときである。


「ふっふっふっ……まぁ待ちたまえ、キミたち」


 椅子に座ったまま腕を組み、何故か不敵な笑みを浮かべて制止してきたのはクロンだった。

 皆の不思議そうな……或いは訝し気な視線の集中を受けた彼女は、その特徴的な青い髪を軽くかき上げて徐に腰のポーチに手を突っ込む。


「あの子……僕の友達もニホンの料理が恋しいと言って、食材とかを探してた時期があってね――これはそれに付き合った過程で手に入れたのだ☆」


 意味有り気な言葉と共に、ウインク一つ。

 腰にある小さなポーチの何処に入っていたのか、複数の食材と一つの器具を取り出した。

 相棒が目を見開いてそれはっ……!? とかノリ良く叫ぶと、クロンの表情が不敵からドヤ顔に変わる。

 馬鹿たれの雷に打たれたみたいなオーバーリアクションは大袈裟だが、オレとしても彼女が卓の上に並べた品々は中々に衝撃をうけた。

 青ネギと思わしき植物と、生姜(ジンジャー)……これはこの世界(こっち)でも見かける食材だ。

 だが、器具とその隣に並ぶ根茎は別だ。


「オイオイこれ、山葵か?」

「こっちの器具はおろし器ね……これ、自作ですか?」

「えーと、確か本来は板に鮫の皮を張ってるんだっけ? 確かに、この世界だと代用できそうな魔獣が多いよねぇ」


 オレとミヤコ、アリアが興味津々に覗き込むと、山葵らしき根を手に取ってクロンは笑う。


「おろし器の方は、近場に良い魔獣がいたからその皮でちょちょいとねっ。でもワサビ(こっち)の方は結構大変だったよー、魔族領だと見掛けなくて北方方面にまで足を伸ばしたんだから」


 そんな台詞と共に相棒へと山葵や生姜(ジンジャー)、おろし器が手渡される。

 奴はヘヘーッとばかりに恭しく受け取ったソレらを、早速薬味へと変えるべく作業を開始した。早速鞄からナイフやまな板代わりの板切れを取り出し、青ネギを刻み始めている。


 ――で、唐突にこれらを取り出したクロンだが。

 なんでも彼女とその友人は戦争の最中、危険とか知ったこっちゃねぇぜと言わんばかりに和食の素材を求めてあちこちを探して廻った事があるらしい。

 代用となる物を幾つか見つけたり、作ったり、その過程で戦争絡みの戦いに巻き込まれたり。

 そんな当時に得たツテや知識を利用して、今回の薬味やおろし器なんかも揃えたとか。

 でも、楽しかったなぁ。と。

 眼を細めて呟く彼女の脳裏には、嘗て友人と一緒に過ごした記憶が巡っているのだろう。

 なんだか、オレと相棒にちょっとだけ似てるな、なんて思う。

 いや、出会ったばかりの頃に二人で旅してたのは食材探し、なんていう楽しい目的ではなかったけどさ。

 それでも合間に肉焼き魔法を二人で作ったり、元・日本人同士で和食について語り合って懐かしんだり、飯に関するエピソードには事欠かなかった。

 なので、眼前の青髪娘に親近感じみたものを覚えたり。


 けれど、"その友人は今どうしてるのか"なんて野暮は、聞きはしない。


 精霊やそれに類する種族は霊的相性が極めて良い、又は契約を交わした相手に強い執着を示す。

 例外がゼロとは言わないが……これは彼・彼女らの種族・存在としての根底に関わる在り方なのだ。生物的な習性と言い換えても良い。

 これまでクロンが自分の事を語るときには、必ず"あの子"という言葉が出て来てるし、そもそもドルオタらしきその人物に感化されて、アイドルなんてものを自称してる程だ。

 混血とはいえ、髪色に特徴が発現するくらい精霊の気が強いクロンが、そこまで入れ込んだ相手と疎遠になったり離れるとは考えづらい。

 でも、彼女が友人を語るとき……それは今では無く、過去の事ばかりで。

 つまりは、そういう事なんだろう。

 少し前までは更に親近感を覚えたのかもしれないけど……今は、違うからな。

 クロンに限らず……深く身を裂くような、そんな別離を経験して、それでも前を向いて日々を過ごしている人達を見る度、つくづく思う。

 隣で丁寧に山葵の皮剥いて擦りおろし始めた馬鹿野郎が帰って来たのは、オレとアリア、ミヤコにとって本当に降って湧いた幸運で、奇跡なのだ。

 それを再認識して、噛みしめて。

 少しだけしんみりした気分になりかけたけど、直ぐに頭を振って気持ちを切り替える。

 折角の旅行、楽しみにしてた海の幸を探す時間だ。この小さなサプライズを持って来たクロンも、オレ達のテンションが下がるのは望まないだろう。

 そんな事を考えつつ、感謝の気持ちと共に彼女へと笑顔を向ける。


「正直驚いたよ、ありがとう。まさか薬味まで揃った状態で刺身を食えるとは思わなかった」


 オレが心からの礼を告げると、アイドルを自称――或いは、今はいない誰かの為に()()なりたかったのかもしれない少女は、ニッコリと花のような笑顔を返して。


「流石は聖女、良い笑顔だねっ――それじゃ僕と一緒にアイドルやろう!」

「ごめん、それは無理」


 同時になんかとんでもない事を言い出してきたのでノータイムで拒否っておいた。


「えー、即答!? 良いじゃないかー! 妹ちゃんと一緒に僕と"ゆにっと"を――」

「ごめんなさい、無理です」

「言い切る前に妹ちゃんにまでお断りされた!?」


 アイドルらしからぬふくれっ面でブーイングを飛ばすクロンだが、当たり前だろ。なんでこんな突拍子もない勧誘が上手く行くと思ったんだよ。


「大丈夫だよいけるって! だってキミたち、元々教国のアイドルみたいなものじゃないか! 僕と一緒に"ぶどーかん"のライヴ目指そうぜ!」

「「いや武道館とかこの世界にないから」」


 姉妹(きょうだい)揃っての至極真っ当なツッコミに、青髪娘はぐぬぬとばかりに歯噛みして――唐突に相棒の方へと振り向いた。


「よーし、じゃーキミだ猟犬くん! 僕と書面契約してマネージャーになってよ!」

「おいコラ、なんでそうなる! 駄目に決まってんだろ自称アイドル!」


 生姜を丁寧に摺りおろしていた相棒が、え、俺? なんて呟いてスッとぼけた顔で首を捻り、奴が返答する前にオレの方から間髪入れず却下しておく。


「"将を射んとする者はまず馬から"っていうのはキミたちの故郷の言葉だろー! 彼がマネージャーになってくれたら、キミら姉妹は勿論、《陽影》ちゃんも今度こそ首を縦に振ってくれそうだしっ!」

「正直だなオイ! っていうか《陽影》も勧誘してたのかよ!?」


 あと何気にマメだし、気配りできるっぽいし! マネージャー適正高そう! と続いた言葉には正直ちょっと同意するけど……それと相棒の転職に同意するかってのはまた別の話だ。

 というか、ビジネス的な意味であっても精霊種が『契約』って口にする仕事とか不安過ぎる。絶対に却下だ。

 いきなり騒がしくなる食卓(叫んでるのは主にクロンとオレだけど)なのだが、他の面子は腹が立つくらいにのほほんとしている。


「わっはっはっは! 若人の青春模様ですな! もしレティシア様とアリア様が歌劇の舞台に立つと仰るのであれば、拙僧は全力で応援させて頂きますぞ!」

「フハハハハ! 私も同意しようグラッブス君! とはいえ、聖女殿の即答ぶりを見るに勧誘は難しそうではあるがね! いや残念だ、この地がデビューの基点となれば町もさぞ賑わっただろうに!」

「……うむ、これがサシミか……生だけあって食感が独特だが、ショウユと薬味との調和は……ただ生魚を食するのとは別物だな」

「むぅ……ブリもサーモンも美味しいです。けど、このカツオというお魚だけは、濃厚な旨味と一緒に血の味が……」

「お刺身初体験でカツオはちょっとハードルが高いもんねぇ……薬味をつけるなら生姜が良いよ。でも、リリィにはちょっと辛いかも」

「私は試した事はないけれど、マヨネーズが合う、なんて話もあるわね」


 オレと同じく話題の渦中である筈のアリアまで、リリィ達と一緒に刺身を摘まんでのんびり笑っている始末だ。

 なんでお前はそんなに余裕なんだよ、相棒の今後がかかった話だっていうのに。


「いや、レティシアは心配し過ぎ。ボク達二人がお断りするなら、にぃちゃんだってイエスとは言わないでしょ?」

「うぐっ……いや、まぁ、そうなんだけどさ……」


 少なからず自信を持って断言する(おとうと)の、呆れを隠さない口調と視線に、なんとなく居心地が悪くなってもにょもにょと反論の言が口の中で萎んでしまう。

 いや、分かってはいるんだ。

 相棒がオレ達をほったらかして、別の仕事に就くなんてあり得ない。

 頭でも心でも理解してるんだけど……それはそれとして、別の(ヤツ)にそういった話題を出される事自体が、なんか面白くない。

 そんな我ながら拗らせた、独占欲の強い子供みたいな思考を見透かされた気分だった。

 いや、実際アリアのやつは察しているんだろうな……ついでに言うならミヤコも。

 で、話題の渦中どころか中心である相棒だが。


 ――うむ、美味い。けどやっぱり米が食いたいでござる(迫真


「お前はお前で刺身に集中しすぎだろ」


 案の定、オレの本音には気付く気配すら無い。

 普段は割と察しが良い癖に、なんでこの手の話題になるとこんなに鈍いんだコイツは……。

 何だか腹が立って来たので、脇腹を軽く肘で小突いてやる。

 だが、奴は土壇場で各種薬味が手に入ったのが余程嬉しいのか、ご機嫌なまま喧嘩してないでお前も食えってばよ、なんて言って。

 そのまま、わさび醤油をつけたサーモンが刺さった自分のフォークを向けてきた。

 ……………………。

 ……ま、まぁ一理あるな! 

 アレだ、やっと楽しみにしてたものが食える機会だっていうのに、口論に夢中でケチがつくのも本末転倒だし?

 食う方に夢中ってことは、そもそも万が一にもクロンの勧誘に乗る可能性が無いって事だし?

 確かにアリアの言う通りに心配のし過ぎだったな! 反省反省――じゃ、オレも久しぶりのお刺身を堪能するか!


「あーっ! それはズルいよレティシア!?」

「先輩、女の子が食べるにはちょっとわさび醤油の量が多いです、私のをレティシアにあげますから!」

「というか僕の話はまだ終わってないよ! お試しでも良いからちょっとアイドルやろうってばー!」


 抗議と制止の叫びと、再三の勧誘の声が上がるけど……いい加減食事を再開したいのも本当だし、無視だ無視。

 声に反応してフォークを引っ込めようとする相棒の腕をがっちり掴んで、オレは小さく口を開く。


「それじゃ……いただきます」


 まぁ、なんだ。

 降って湧いた機会(チャンス)と一緒に口にした懐かしの味は、大変に結構なお点前でした。

 多分、普通に食べるより三割増しくらいで美味く感じたと思う。

 いや、実に満足。皆で出掛ける時は毎回こうだと良いな、うん。







◆◆◆




 いやぁ、久しぶりに食うお刺身は美味かったですねぇ!


 流石に完全再現ってワケじゃないが、それでも久しぶりの味だった。

 やっぱわさび醤油はつえーわ、極論焼いた肉に使っても和食っぽい味になるからな。

 まぁ、合間に永遠のじゅうななさい()ことクロンが、唐突にシアとリアをアイドルに勧誘し始めた事でちょいバタバタしたが、最終的には問題無く皆で飯を楽しんで、昼食は穏やかに無く終わった。

 現在は《漢槌》の案内のもと、市場を見て回っている最中である。

 まぁ、初手である昼食から大当たりを引いたし、八割目的を達成したようなもんだ。あとは本当に観光に近い。

 刺身として出てきた魚は勿論の事、俺とシアが頼んだスープに使われていたのはちょっと鯛っぽかったし、得るものは多かったな。

 隊長ちゃんが店主さんにお願いして食った魚達の正式名称とか特徴とかも教えてもらってメモってたので、後で見せてもらおう。後で鰤とか鯛とか丸々一匹購入して、シアリアに冷凍保存してもらってお土産にしたいです。


 活気に溢れすぎてる市場の中を、皆でブラブラと歩く。


 移動しながらそのついで、各々が目についた屋台や店先を覗いたりしてる感じだ。

 ぶっちゃけガンテスを目印にしておけば、多少離れても合流は容易だしね。平均身長の高い魔族領の人込みであっても、おっさんの巨躯は群を抜いて目立つんよ。

 ガラの悪い奴や喧嘩っ早そうなのも見かけるが、《漢槌》が案内役である事で抑止もバッチリ。皆、軽く挨拶したり黙礼したりと、外見に反して実に紳士的に道を譲ってくれた。

 そこら辺は流石に町の名誉職プラス《災禍の席》ってことだろう……なんか黒光りしてる筋肉の方じゃ無くて、隣のクロンを見て頭下げてるのもいた様な気がするけど、なんでや。


「ねぇねぇにぃちゃん、これ厄除けの仮面だって。昔、テレビで見たのと似てるんだ」


 おや、お前さんにしては珍しく変なモン買ったな。

 あー、確かに。なんか密林奥地の秘境に住む部族とかが持ってそうな……世界が違うってのに、偶に変な共通点があるよね。動植物とかモロ被りしてるのあるから今更だけど。


「先輩、面白い香辛料を見つけました。これ、山椒の香りがするんです――色は独特ですけど」


 え、マジで? おぉこの匂い、確かに山椒……いや本当に色スゲェな! ド紫なんですけど!

 ……いや待て、ゆかりだと思えばイケるな。醤油もあるし山椒もあるし、こうなると鰻の蒲焼きが食いたくなるなぁ。(イール)自体は教国でも見かけるし、いけそうじゃね?


(あに)様、(あに)様、こちらの串は素焼きにしてもらいました、お醤油を塗っていただけますか?」

「……ショウユは猟犬殿の私物だというのに、すまないな……」


 あいよ、刷毛持ってきて正解だったわ……これで良し。火の魔法でよわーくゆるーく表面炙るとイイ感じよ?

 あと今日持って来た分の醤油はどの道使い切る気だったし、問題ねーんですよ。余った分を元に戻すのもなんか嫌だし、寧ろ使い切ってくれんと勿体ない。


「ほほう、廃船を鍛錬に用いるとは……」

「うむ! 陸にせよ、海にせよ、牽引すると良い負荷なのだよ! 傷み過ぎたものはそのまま沖合に牽いて沈め、魚達の棲み処にしてもらうという寸法だ!」

「いやはや奇抜ながら何とも心躍る! 盲を啓かれた心地とはこの事! 可能であれば拙僧も是非体験してみたく!」


 旅行中に試すくらいはえぇけど、聖殿に大型廃船お持ち帰りとかはやめよう?(真顔

 フリじゃねーぞマジでやめろ。ミラ婆ちゃんに捨てて来なさいって怒られるの目に見えてるでしょ!


 入れ替わり立ち代わり。

 同行した面子があれこれ持って来たものをチェックしたり、上がった話題にツッコミ入れたりしていると、右隣を歩くクロンが未練タラタラ、といった感じで唇を尖らせる。


「う~ん、このコミュ力……ねーねー、やっぱり僕のマネージャーやろーぜー。絶対向いてるって」

「まだ諦めてないのかよ、さっきキッパリ断られたばかりだろ」


 左隣のシアが呆れた声で反応し、クロンからガードするように俺の腕をとって自分の方へと引っ張った。

 どうやらこのアイドル志望な青髪は、前々から聖女という看板職を背負ってるシア達を誘ってみたいと考えていたらしい。人気面でもビジュアル的にも当然と言えば当然か。

 最初は顔を出すつもりはなかったが、市場見学にやってくるのが聖女様御一行と聞いて慌てて手土産に日本に通ずる薬味を用意して飛び入り参加したのだとか。

 ついでに言うなら、ここ最近は女公爵の従者――クインにも声をかけた事があるみたいだし、結構あちこちでメンバー探しをしてる模様。

 クインに関しては流石に怖い物知らず過ぎるやろ……まぁ、あの公爵なら従者が恥ずかしがって顔真っ赤になるのを愉悦する為だけにゴーサインだしそうな気もするが。


「《陽影》ちゃんは現在のメンバー候補に欠けているものを埋めてくれる人材なんだゾ! スラっとした長身だし王子様みたいな美形だし、何より候補の中で唯一の巨乳!」

「おいコラ、その候補とやらに入ってるオレの目を見てもう一度同じ台詞を言ってみろ」

「彼女を除き! 僕らの"ゆにっと"には!! おっぱいが 足 り な い !!!」

「よーし、そこになおれ青髪娘。聖女のグーは下手な鈍器より硬いと教えてやる」


 どうどう、落ち着けシア。

 腕まくりを始めた我が友人を抑え、「正直なのは僕の良いところだって、あの子も言ってたのさ!」とか胸を張るクロンの額にはチョップを打ち込む。その正直はもっとオブラートに包んで、どうぞ。

 とにかく、俺にマネージャー業に転職する予定は無いぞ。

 その手の職って売り込みとか管理能力とか諸々マルチに求められるやろ。業界知識皆無の人間に出来るわけがねーんですよ。


「習うより慣れろだよ! とりあえずやってみようぜ! そんな訳でこのお手製の契約書にサインを……ォボバボババッ!? あ、アイドルの顔を鷲掴みはやめろぉ! 商売道具だゾォ!?」


 だからやんねーって言ってんだろ。

 しつこく言い募るその顔面にアイアンクローを決めてやると、見たらファンが目減りしそうな変顔を晒しながら悲鳴を上げるクロン。

 互いに魔力も使ってないし、ちょっとしたじゃれ合いみたいなものだ。

 なのに、何故かシアの眼がジトッとしたものになる。


「……なーんかお前、クロンに対して距離が近くないか? 今日会ったばかりなのにちょっと気安いというか……」


 いや別に? 友好的だけど割とイロモノ枠だし、こんなモンじゃね?

 顔面鷲掴みにされたまま「僕はアイドル! イロモノじゃないゾ!」とか騒いでるクロンはスルーして肩を竦めるも、シアは益々疑わしいものを見る目付きになってしまった。


「嘘つけ。女子相手にアイアンクローとか、お前普段はやらないだろ」


 えー、言うてお前相手には偶に似た様な事はしてるやん。


「……オレ以外にしてるの、見た事無いけどな」


 えぇ……マジで嫌だったんなら謝るけど……あ、別に嫌ではない? 単にクロンにしてるのが気に食わないと。

 いやなんでや(困惑

 なんだかご機嫌ナナメに見える聖女様に、俺は弁明――というより()()()を正すべく、少し声のボリュームを落として告げる。


 というか、そもそも前提が違うわい。いいか、先ず――。


「おぉ? なんじゃい、お前さん達も来とったのか」


 開いた口から次の言葉を続けようとして、思わず止めた。

 たった今、通り過ぎた屋台の前にある卓と椅子が並べられた屋外席。

 そこから唐突に声をかけられて、俺達は足を止めて振り返る。

 麦酒(エール)がなみなみと泡立つ杯を掲げて挨拶してきたのは、白灰色の髪をした大男と赤毛の飲んだくれ、苦労人っぽい雰囲気の若い男――ようは《災禍》の面々の内の三人だ。


「……《万器》か。アンタ達も市場に来てたんだな?」

「おう。ここらの飯は安くて美味いし、珍しいモンもある――何より、今は面白い事になっとるからな」


 シアの意外そうな声に、グビグビと杯を呷った《万器》のおっさんが髭に麦酒(エール)の泡つけながら愉快そうに笑う。

 てっきり《魔王》を筆頭に町の腕自慢と喧嘩ばっかしてると思ったが、今日は普通に観光や散策をしてるらしい。

 上機嫌なおっさんが真横の席に視線を向けると、他二名――《赤剣》と《不死身》が屋台に向けて注文をしてる最中だった。


頭領(ボス)ー、エビと貝の串お代わり。辛めで」

「あ、じゃ僕は次、肉でお願いします。きもちレアで」

「ヘイ毎度ォ!」


 二人の杯を掲げての注文に、串打ちされた魚介と肉を手際よく焼き台に乗せて炭火でガンガン炙っているのは《魔王》だった……いや、マジで何やってんのアンタ?


「えぇー……なんでだよ」


 隣から友人の滅茶苦茶に呆れかえった声が聞こえる。

 まぁ分からんでも無い。辺境の小さな町で屋台の売り子やってるその姿は、異様な程に馴染んでいるせいで逆に引く。完璧に地元民じゃねーか。


「お? お前らも市場(ここ)に来てたのか。ついでだから何か買ってけ」


 捩じりハチマキに俺が悪ふざけであげたダサT――左胸にハツ、背中上部にせせりと書いてあるTシャツ姿の魔族領筆頭は、香ばしい炭火の煙に炙られながら妙に生き生きとしていた。


「ここの屋台、駄賃の払いが良いんだよ。売上が良けりゃ色も付くし、賄い代わりに串焼きも食えるし……これで俺も市場巡りが出来るぜ!」


 いやだから。買い物くらい普通にすりゃえぇでしょうに。なんで市場巡りするのにその市場でバイトやってんの?


「馬鹿野郎! 俺に買い物する金なんてある訳ないだろうが!」


 お小遣い(かね)が要るんだよぉ! と。身も蓋もない叫びが続く。

 超越者とまで呼ばれる男から出るには、あんまりにも情けない台詞を堂々と吐き散らかし、《魔王》は香ばしい焼き目のついた串焼きを手早く皿に盛りつけて部下に手渡した。


頭領(ボス)、そうは言ってもアンタさっきリリィ嬢に一番高い串奢ってたよね」

「偶に小さい女の子が来ると思いっきり値引きするし、差額を考えたら報酬も相当減るんじゃないですか?」

「大馬鹿野郎! 幼女にサービスしないとかあり得ないだろうが!」


 受け取った串に噛みつき、麦酒(エール)で流し込みながら混ぜっ返す部下二人に対し、先の言葉に輪をかけたアレな主張で反論するロ〇コンである。恥じるところなど微粒子ほども在りはしないといわんばかりの堂々たる宣言だった。

 今更過ぎた話ではあるが、ブレない性癖も含めて手遅れ感がひでぇ。つーか、さっきリリィが持って来た串焼きはここの屋台のかよ。

 本来、国主とその側近にある立場の連中ではあるが、《魔王》がぶっ飛んでおかしいだけでその側近共も大概だ。ナチュラルに上司のバイト先で飯くって煽って遊ぶなよ。

 そんな同僚達を眺めて酒飲みながら《万器》がゲラゲラと笑う。


「うははははは! ま、こういうこっちゃ。しょっちゅう自分で狩った肉を焼いて食ってるだけあって、ウチの大将も中々に手際がえぇじゃろ?」


 おっさんは一頻り笑い終えると、串に連なる大ぶりな魚介のぶつ切りを横咥えで一息に抜き取り、もっしゃもっしゃと咀嚼しながら俺とシアの背後へと目を向けた。


「――で、なんで隠れとる《烈光》。別にこの町に来とるのを黙っていたのを、ワシらは気にしとらんぞ」


 その視線は、俺達の陰に隠れるようにしているクロンに向けられている。

 やっぱ知り合いだったか。《万器》の声が聞こえた瞬間に身を屈めて気配を殺し始めたから、なんぞ関りがあると思ってはいたが。


「……その呼び方やめてって言ったじゃないかぁ! 厳ついし可愛くないし、好きじゃないんだよぉ!」


 誤魔化し切れないと判断したのか、隠れるのをやめてうがーっとばかりに両手を上げて叫ぶ。

 隠れてるんだから空気読んでよー! と喚いて小さく地団駄を踏むクロンに、《災禍》の面々は気の抜けた表情で顔を見合わせた。


「そうは言っても、ねぇ?」

「クロン……芸名でしたっけ? 違和感があるというか……」

「ちゅーか、ワシや大将に至っては何百年付き合いがあると思っとる。ここ二十年程度でいきなり呼び名を変えたとか言われても、早々には慣れんわい」

「おいコラ。僕は十七歳だって言ってんだろガチな歳の話はやめろブチ()くぞ」


 ドスの利いたクロンの声を切欠に、屋台前の客席はギャーギャーと騒がしさに拍車が掛かる。

 とりあえず適当な肉串と魚串を注文しつつ、俺とシアはせっせと在庫に串打ちしている《魔王》へと疑問をぶつけた。


「相当な古馴染みなのは、なんとなく分かったけど……結局何者なんだあの青髪娘は」

「あン? お前ら一緒にいたのに自己紹介とかしてねーの? あいつは《烈光》つってな。《災禍(ウチ)》の七席についてる奴だ」

「《災禍》の一員かよ。どう考えてもそっちの役職を名乗るべきだろ」


 聖女様のお言葉は御尤もである。

 ――が、クロンの考えも分からなくはない。

《万器》達との会話を聞くに、本人は魔族領幹部の肩書よりも現在目指しているアイドルに比重を置きたいみたいだからね。

 正直に自己紹介したら、どうやったって前者のインパクトが強すぎる。ただでさえ日本のアイドルという職自体を知らない人が聞いたら「なにそれ吟遊詩人の亜種?」程度の反応だろうし。

 串打ちの合間に手際よく焼き台の上に並ぶ串たちが返され、じゅうじゅうと食欲をそそる音と煙をあげる。

 いくつかの串に塩タレを塗り、香辛料を振りかける《魔王》。手を止めないまま部下の事を語る口調は、何処かしみじみとしたものだった。


「あいつも少し前まではツンとしてたっつーか、冷えてるのにギラギラしてたっつーか……俺と戦る(あそぶ)ときも《狂槍》よりガチでくる奴だったんだけどな」

「へぇ、今のクロンからは全ッ然イメージ湧かないけどなぁ」


 テーブルをバンバン叩いて抗議の声あげるクロンと、それをのらりくらりと躱す《万器》を見比べて、シアは信じ難い、といった感じで頷く。

 俺も同感だわ。クールな激情家とか今のキャピッとしたムーヴの正反対やろ。


「嘘なんざついてねーよ。どっかで拾った転移者とつるむ様になったと思ったら、暫くして《《アレ》》だ。初めて女装してきたときは、《亡霊》の奴が書類ぶちまけてその場で意識飛ばしたんだぞ」


 はー、《亡霊》がねぇ……。

 ひょっとしたらその頃は《災禍》の中ではマトモ枠だったのもね。数少ない常識的な幹部が、ある日いきなり女物のアイドル衣裳着てキャピッ☆とかしてきたら、気苦労の多い筆頭補佐殿は相当なショックを受けそうではある。


「他がイロモノ枠みたいな言い方やめない? ――ホレ、出来たぞ」


 地位だけじゃなくイロモノ筆頭でもある奴に言われてもなぁ……あいよ、これ代金ね。

《魔王》から肉串を受け取り、銅貨を支払うと魚串の方をシアに渡そうとする――が、シアはそれを受け取らずに「いやちょっと待て」と強い口調で言うと片手を軽く挙げた。


「……オレの聞き違いか? 今、お前ら()()って言わなかったか?」


 うん、言ったが。


「………………え、マジで?」


 マジやぞ。

 我が友人は大層困惑した様子で、俺と《魔王》の顔を交互に見やる。

 俺達が二人同時にこっくり頷いたのを見ると、再び「マジかよ……」と呟いた。

 だから言うたやろ、前提が違うって。


「何時から気付いてたんだよ、少なくとも見た目は完璧に美少女の類だろ」


 まぁ、ほぼ最初から。精霊種の血が濃いんで相当に中性よりではあるけど、間違いなく♂やで。

 あっさり言ってのけると、シアは逆に胡散臭そうな顔で半眼になる。


「……《陽影》の性別をつい最近まで誤認してた奴が言ってもなぁ」


 おっとレティシア君、正論パンチは止めた方が良い。それは俺に効く、だからやめよう(吐血


 まぁ、あれよ。一回特大のやらかしをしたからこそ、ってやつなのよ。

 プライバシーの問題もあるし、流石に《三曜》で気脈の流れをチェックして、とかはやってないけど、よく見れば立ち姿や歩き姿、種族を念頭においた骨格なんかである程度は察せる。

 一応、本人に対してぶっ込むのは遠慮してたんやぞ――上司がこうしてぶちまけたけどな!

 さり気なく《魔王》に擦りにいくと、当の本人は大して気にもしてなさそうに首を傾げた。


「別に問題はねぇだろ。今の縄張りが辺境中心だから元のアイツが殆ど知られてないってだけだぞ? 王都に昔から住んでる領民(ガキ)共なんざ、《烈光》が「私は小物と群れるつもりは無い(キリッ」とか言ってた頃を――」

「キィエエエエエエエエェェッ!?」


《魔王》の語りを遮る様に、市場に怪鳥音みたいな叫びが響き渡る。

 次の瞬間、ぶっといレーザービームみたいな光が俺の眼前を奔り、《魔王》の頭部が光に呑まれてジュッと音を立てた。


「アツゥイ!? ――ってオイ! 屋台の幕に穴が……お、俺の駄賃が飛ぶぅっ!?」

「知るかこのアホ頭領ォ! 人の過去をベラベラと気軽に喋るなぁぁぁっ!!」


 デリカシー皆無な鳥の悲鳴と、顔を真っ赤にしたクロンの怒号が重なる。

 攻性魔力をたっぷり練り込んだ光を収束した魔法は、射程距離内ならマジでレーザー砲と言っても過言ではない威力だった。

 が、直撃した本人の首から上はちょっと焦げてるだけなのは今更だ。今も一瞬で再生して元に戻ったし。

 つーか、多少なりともこの変態不死鳥相手に熱系統のダメージを徹してる時点で、同格である人外級の中でも更に卓抜した貫通力を誇ると言って良い。

 いやクロンが男なのは分かってたが、《災禍の席》だってのもマジなんやなぁ……普通に出鱈目だわ。


「違うから! アイドルに性別とか無いし、敵を消し飛ばしたり焼き払ったりしないの!」

「流石だのう、《烈光》の」

「相変わらず頼りになる火力だね《烈光》」

「《烈光》さん凄いです。いかちー」

「キィエエエエエエエエエェッ!!」

「「「うぉ眩しっ!?」」」


 本人の必死なアイドルアピールを他所に、容赦なく弄ってくる同僚共に《烈光》さんが再び怪鳥音を発生させた。

 両目からカッ! とばかりに発射された光線の余波に顔面を炙られ、三人の《災禍(アホ)》が全く同時に眼を抑えて悲鳴をあげる。ちなみに光線の本体は駄賃がゼロ処かマイナス突破して真っ白になっていた《魔王》に直撃した。


 もうしっちゃかめっちゃかやなぁ……収拾つくのかコレ。


「だなぁ……中央だろうが辺境だろうが、魔族領はやっぱりこの手のオチがお約束か」


 或いは《魔王》とその舎弟共の周囲は、かもしれんけどね。

 シアと一緒にその辺の縁石に腰掛け、二人で串焼きを齧りながら半分諦めの境地で眼前のドタバタを眺める。

 戦時中、俺とシアで王都にいったときも大体いつもこんな感じの流れだったもんなぁ……改めて思い返すと、魔族領で静かな時間を長時間とれたのって女公爵の領地に居たときだけじゃね?


 こんだけ騒げば周囲の眼が集まるし、人だかりだって出来る訳で。

 直ぐに近くの店を見て回っていたリア達も戻ってきて、幾つかの穴が空いた屋台を前に大騒ぎする《災禍》の連中を見て困惑していた。《漢槌》だけは「フハハハ! どうやら混ざり損ねてしまったな!」とか笑ってたけど。


「えぇ……なにこれ……にぃちゃん、何があったの?」


 他の皆を代表してか、リアが傍にやって来て俺の服の袖を引く。

 今回の旅行が初の魔族領滞在である(おとうと)分の初心な反応に、俺とシアは顔を見合わせ――。


「……まぁ、魔族領(ここ)じゃ平常運転(いつものこと)だな」


 ――うん、だな。


 そろそろ本格的に拳や魔法が飛び交いそうな、人外級オンリーの大騒ぎを前に。

 俺とシアは全く同時に頷き合い、串焼きの残りに再び齧りついたのだった。








聖女(金)

最終的に魔族領お約束のオチがついたが、生食の魚を探すという本来の目的は達成したし、その過程でちょっと良い思いも出来たし、満足のゆく観光だった。

聖都に帰ったら自分も料理を勉強してみようかなぁ、とか思ってる。


駄犬

朝から午前中にかけて、死に物狂いで追いかけっこしたりプロレス技喰らったりと散々だったが、午後の市場観光は割と平穏だったのでひと安心。

クインの一件で学習した為、直接指摘する事はなくともアイドル志望の彼についてはしっかり性別を把握していた。

魚介は勿論だが、和食に関する器具や調味料も手に入れたりツテが出来たりしたのでホクホクである。


《漢槌》

魔族領の筋肉担当。

見た目のインパクトが強すぎるが、本人は紳士的かつ常識人よりなので上司や同僚連中と比べてそんなにトラブルは起こさない。《災禍》の中では比較的良心枠。

ただし、自分からは起こさないだけで始まってしまったら嬉々として混ざりにいく。


クロン

通り名は《烈光》。ビームブッパ系の精霊系アイドル(自称)。

ドルオタ転移者と知り合い、相性が良かったのもあって友人になる。

嘗ては仲間相手にも結構ツンツンした孤高・クール系な人物だったのが、彼が推していたというアイドルに寄せていった結果、現在の男の娘アイドル(自称)になった。

尚、ドルオタ本人は既に故人である。

今でも大切だし大好きだし一番の友達。多分一生忘れる気が無い。


《魔王》

バイト代は吹っ飛んだ。

旅行中はおろか、暫く素寒貧確定なので海で塩を作ろうと思ってる。


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