信じられないほど趣味が合う彼氏と毎晩楽しく遊んでます
「俺のターン!ドロー!」
彼氏との『オリジナルカードバトル』は私の夜の楽しみだ。カードは手作り。ルールもめちゃくちゃだけど楽しい。これを楽しいと思える人に会えて本当に良かった。
「『台所の支配者』を召喚!お前は俺にご飯を用意する!」
「甘いわ!私の『ディナーメイキングゴブリン』の効果によりあなたのカードは無効化される!」
「ぐわぁぁぁ!やられたーー!」
彼氏は胸を押さえながら私が用意したご飯をテーブルまで持ってきてモシャモシャ食べ始めた。
それからしばらくは普通の会話をしてバトル再開。
「フィールド魔法!『ちょっといいワイン』をドンキから召喚!乾杯をする!」
「うわぁぁぁ!そうきたかぁぁ!」
わーい。私の好きなワインだ。買ってきてくれたんだ~。やったー。グラスを用意しよーう。
「おっと!浅はかだぜ!彼女さんよ!墓地から『台所の支配者』を再召喚!貴様がグラスを用意する間に俺は後片付けをさせてもらうぜ!」
というわけで今日あった事を話しながら酒盛り準備。ゆっくりと飲みましょー。かんぱーい。
「……」
彼氏が深呼吸しながら自分の手札を見ている。長い付き合いだから分かる。これは……『コンボ』ね。1ターンキルされないようにしなきゃ。
「『昇任』を召喚!祝福効果により俺の給料がアップするぜ!」
えっ!そうなんだ!やったじゃん!
「おめでとー!」
「勘違いしてないか?まだコンボ中だ。これは俺の切り札だぜ!給料3ヶ月分を墓地に送る代わりに『永遠の輝き』を召喚!」
「……マジ?」
指輪だ。これってプロポーズじゃん。
「……このカードが場にある時。お前は返事をしなくてはならない」
「トラップカード!」
「なにぃ!?」
「『毎朝の味噌汁』!このカードの召喚に成功した時。あなたは永続的にこの効果を受ける!」
「オッケーって事だな!」
いいでしょう。あなたの朝の味噌汁は私が生涯引き受ける!これが私なりのデステニードローよ。
「……墓地から墓地を召喚。俺たちは死後、ここに入る」
「いいでしょう」
私たちは抱き合った。今日の勝負はドローね。
「でもさ。お前のお母さんは結婚を認めてくれるかなぁ?」
「うーん」
お父さんはともかくお母さんは反対するだろうなぁ。『娘には自分みたいに金銭的な苦労はかけさせたくない』って言ってたし。でも昇給するならワンチャンあるかも?これは改めて実家にダイレクトアタックするしかないわね。
ガララッ!和室のふすまが開いた。誰!?泥棒!?
お……お母さん!?いつの間に来てたの!?どこから!?
「お母さん!お久しぶりです!」
「話は聞かせてもらったわ。そしてドロー!『次世代へのバトンタッチ』を召喚!!」
『『!?』』
なにこれ?通帳とカード?
「あんたがいつか結婚した時の為にしてた貯金よ。娘を幸せにしてやってください」
「はいっ!」
「……お母さん。絶対反対されると思ってたのに……」
「泣くんじゃないよ。母親ってのはこういうもんよ。あんたもいつか分かる。『愛』『希望』『勇気』『絆』『信頼』。あんたたちはこの5つを揃えた。私は孫という名のエグゾディ⚪を待ってるよ……さーて年寄りはサレンダーさせてもらうよ」
お母さんは玄関に向かう。私たちは慌ててお見送りをした。お母さんが夜の町に消えていく。
私と彼氏の頭のなかには『渇いた叫び』が流れていた。