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南8・やればできる?

 「そうそう私よ私!久しぶりね!元気してた?黒月君。」


 ミラレットは相変わらずエネルギッシュにはしゃいでいる。その元気さを象徴するように、明るい金髪を束ねたポニーテールが左右にユラユラ揺れる。


 「お、お久しぶりですミラレットさん。ミラレットさんは他の司令部に異動になったってミケじ……ミケルチョフ参謀三段から聞いたんですけど、その異動先って――」


 「そう!ここよ。北方の戦線が終わったから、南方に異動になったの。隠密飛行隊士は、戦場で使うのが一番いいっていう上の判断でね。まさか黒月君もここに異動になってたとはね。祝勝会の後、気付いたら黒月君いなくなってたからビックリしちゃったよ!」


 黒月の言葉を遮って、ミラレットが応えた。会話のペースの速さと言うか、その気力の高さを久々に感じ、黒月は懐かしさを覚える。


 ミラレットは、黒月の向かいの席に腰を下ろした。どうやら食事を終えた後のようだ。料理の油が付いた唇が、少しばかり室内灯の光を反射している。


 「で、どうしたの黒月君?相変わらずテンション低い顔して。何か悩み事?」


 ミラレットは黒月の顔を覗き込むようにしてそう言った。黒月は、いや、僕がテンション低いんじゃなくて、あなたが高いだけですよ、と今までに何回も抱いたツッコミを再び抱きつつも、食事の手を止めて、話し始めた。


 「まあ参謀ですからね。悩むのが仕事みたいなとこありますよ、実際。今の考え事も、作戦についてですから。」


 「え、何々?なんの作戦?言えることなら、聞かせて下さいよ。」


 もちろん、「海中飛行士作戦」はまだ立案にも至っていない「アイデア」レベルの話なので、ミラレットにも話せる。


 そこで、ミラレットに話をしようとしたその時、黒月はミラレットが「空の祝福者」であり、さらに隠密飛行隊士だということを思い出した。再会の衝撃とミラレットのエネルギーにやられて忘れていたが、今思い出した。


 「そういえば、ミラレットさんは『空の祝福者』ですよね?」


 「そ、そうだけど?」


 「それでもって、北方で最高の隠密飛行部隊の大隊長ですよね!?」


 「北方で最高って……いきなりどうしたの黒月君?まあ、最高の隠密飛行部隊長ではあるけど?」


 黒月は、恰好の相談相手を逃さんと、積極的な会話に出る。ミラレットが「それほどでもないけど……」と言う顔で自賛していた気もするが、そんなことは気にせずに話を続ける。


 「ですよね!良かったぁ~。実はですね、今考えてるのが――」


 それから、黒月は「海中飛行士作戦」を話した。ミラレットは驚きながらも、興味津々に聞いてくれた。持前のポジティブさもあって、黒月の突飛な話も受け入れているようだ。


 そして、作戦についての各種の確認を取る。まずは半島東の山脈を飛行で越えることはできるのか、などの基本的な確認事項から。その確認を終えると、今の黒月の悩みの種である、「水中飛行の水圧どうする問題」について尋ねた。


 ミラレットは質問を受けると、唇を軽く噛みながら、真面目に考え込んだ。そもそも、海中を飛んだことなんてないので、答えようがないのかもしれない。


 「どうですかね……この作戦。僕の『空の祝福者』の同僚が言うには、隠密飛行隊士だったらもしかしたら、って言ってたんですけど、どうですかね?」


 黒月が、考え込むミラレットに声をかける。ミラレットは、「ん~。」と謎の声を出して唸っていたが、その声を切って、やけにあっさりと答えた。


 「まあ、できるんじゃないかしら。」


 「え!できるんですか!?」


 ミラレットの悩む姿を見て勝手に諦めモードに入っていた黒月は、ミラレットの意外な答えに驚く。


 「たぶん、簡単じゃないけど、やろうと思ったらできると思うわ。今の飛行形態や飛行服よりも、もっともっと抵抗を削減して、新しい陣形とかも組んだら、多分できるわ。」


 ミラレットの言葉を聞いて、黒月は心の中で小さなガッツポーズを取る。しかし、ここでぬか喜びはできないと、すかさず確認をまくし立てる。


 なんとか海中飛行ができたとしても、そこで精魂尽き果ててしまっては意味が無い。この奇襲作戦の肝は、Ⅱ駅の襲撃にある。


 「海中飛行ができたとして、その後山脈を越えて、Ⅱ駅の襲撃までできますかね?そこまでできますか?」


 「ええ、それも大丈夫だと思う。特に北方から来た人なら山脈での飛行は慣れてるだろうし、飛行体力も訓練次第でなんとかなるから。」


 ミラレットが「できる」という返事をするたびに、黒月は心を躍らせてゆく。そして、本人も気が付かないうちに、どんどん細かい話まで詰めてゆく。


 「おお~!それは頼もしいですね。じゃあ、それで、この作戦を実行するとしたら、どれくらいの人数がいいと思いますか?奇襲ですから、敵には悟られない、それでいてⅡ駅をしっかり襲えるような人数が望ましいんですけど。」


 さすがはミラレット。その辺の勘はしっかり持ち合わせているようで、この質問にも即答する。


 「一個小隊(=27人)でいいんじゃないかしら?それぐらいがベストだと思うわ。」


 次々と先が見えてくる作戦に、黒月は興奮を加速させてゆく。そんな興奮した黒月と、やっとテンションのレベルが合ったのか、ミラレットも前のめりに会話してくれる。


 「分かりました。人数もそれがいいですね。じゃあ最後に、もしいまから海中飛行部隊を結成して、実践投入できるまで育てるとしたら、どれくらい時間かかりますかね?2,3カ月はかかりますか?」


 黒月は、最後に期間の確認を取る。もしこれで2年かかるとか言われたら、さすがに実践的な手ではなくなってしまう。


 しかし、ミラレットの返事は、そんな黒月の杞憂をすぐに吹き飛ばした。


 「いや、3週間ね。メンバーの選出に1週間かけたとしても、全部含めて3週間で行けるわ。」

裏話コーナー


・ミラレットさん、再登場!ミラレットさんは私の好きなキャラです。バリバリ戦闘してる空飛ぶ小柄な女性……いや、幼〇戦〇じゃないから!あっちは幼子だけどミラレットさんは成人してるから!そこのところよろしくお願いします(震え声)。

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