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南3・戦場の把握

 参謀次長室は、ごく一般的な会議室と同じ大きさだった。ふたりのデスクと、その他ソファーだったりテーブルだったりを置いてちょうど良い、広すぎもせず狭くもない部屋。


 部屋の右奥に桂樹(かつらぎ)のデスク、左手前に黒月のデスク。部屋の中央にはローテーブルと、それを囲むように向き合って置かれたソファー。


 「それじゃあ、参謀長が言ってた通り、この南方戦線の話をするわね。何か、資料とかもう読んでたりする?」


 「いや、大まかな地形とかそのぐらいは知ってるけど、軍の展開状況とか具体的な敵・味方の戦力は知らないな。」


 この南方司令部に来るまでの間、またもや3日ほどの列車の旅の中で、黒月は荒い情報には目を通したが、詳しい情報は知らなかった。一応、黒月は自分の知り得ている情報を桂樹に伝える。


 この南方司令部の対象敵国・ザック国は、ザックノア半島全域を支配する半島国家だ。ザックノア半島は下向きの正三角形の形をしていて、大陸の南部にくっ付いている。その半島全域がザック国、その北部にあるのがジークメシア帝国だ。この2国の国境が、半島と大陸の境目とほぼ一致している。


 ザックノア半島の東側、その海沿いには、万年雪を被る高標高の山脈が連なっている。一年を通じて西から吹く風がこの山脈にせき止められ、雲を作り、雨を降らすことで、このザックノア半島は特にその中央部が耕作に適した土地になっている。


 ザック国の首都は、そんな肥沃な半島中央の平野に位置している。また、東側の山脈の雪解け水が川となり、半島中央部を東西に貫いていて、この川は首都も通っている。半島西側の海から、この川を伝って内陸部まで船を航行させることができるのだ。首都は、この川の潮汐限界点にある。


 そして、問題の戦場はと言うと、半島北部西側の、平野部だ。東側は、そのすぐ南方に例の山脈があるため、兵の維持コストが高く、特に戦場とはなっていない(というより、山脈部を支配したところで得られる利益は少ない)。


 元はと言えば、ジークメシア帝国が半島中央部の肥沃な土地を欲してザック国に吹っ掛けた戦争であったが、予想よりも遥かに激しい抵抗を受け、戦線が長期化した。今は、国境付近での一進後退が続いているようだ。


 「なるほど。結構詳しく知ってるじゃん、黒月君。」


 桂樹は、自分のデスクのあちこちの引き出しを開けながらそう言った。何かしら資料を探しているようだ。そして、一番下の引き出しを開けると、小さく「あ、あった!」と言って、立ち上がった。


 「じゃあ、もう少し詳しい話するから、そこのソファーに座って。これ、戦線と半島の地図。それと作戦資料ね。」


 そう言うと、桂樹は部屋の中央のローテーブルに地図を広げ、自分はソファーに座った。黒月も、桂樹と反対側のソファーに腰掛ける。


 「じゃあ、まずは戦線の鉄道の話をしようかしら。鉄道は、この戦線のキーと言ってもいいか知れないわ。そもそも、この戦争が長引いたのだって、ザックの奴らが上手く鉄道網を使ってきたからだし。」


 桂樹が地図を指さしながら説明を始める。


 「まず、ここが今いる南方司令部ね。で、この町のコリ駅から、さらに真南にもうひとつ駅があるの。この駅が、戦線付近の各駅と繋がっているターミナル駅ね。そして、このターミナル駅から、西南、真南、東南に向かって三本路線が伸びていて、それぞれ西部戦線、中央戦線、東部戦線の自陣後方の駅と繋がっているわ。」


 「なるほど。」桂樹の説明に集中して聞き入る黒月。頭を突き合わせて地図を見るふたりは、先ほど廊下を歩いていた時よりも(物理的に)接近しているが、説明とその理解に必死で、そんなことには気が付かない。


 「つまり、この西部戦線、中央戦線、東部戦線の自陣後方の駅、それぞれを西部駅、中央駅、東部駅と呼ぶのだけれど、この3つの駅が、それぞれの戦線の補給拠点なわけね。だから、この駅と路線を死守することが、この戦争を継続するには必須条件。もしどれかひとつでも駅を取られる、もしくは路線を爆破されたら、補給物資が届かず、その戦線の敗北は必至よ。」


 黒月は小さな相づちを打ちつつ、話を聞く。


 「まあ、西部駅、中央駅、東部駅の3つの駅を、お互いに繋げる路線もあるわ。この路線、平時は戦線から戦線の移動に便利なことこの上ないんだけど、もし敵に取られたりしたらその分厄介そのものだから、本当に注意ね。」


 「なるほどね。鉄道は北方にはなかったから、新鮮な感じだ。」


 「そうね。北方は山脈だらけだから、鉄道は有用ではないのかもね。」


 桂樹はそういうと、地図から目を離して黒月の方を見る。そこでやっとふたりの距離が(物理的に)近いことに気付くが、あえて何でもないふりをする。黒月は地図を眺め続けているので、未だにそんなことには気が付かない。


 「じゃあ、次は敵戦線の話をするわね。これが敵の、半島の路線図よ。」


 桂樹が地図をずらし、半島中央部がテーブルの中央に来るように置き直す。


 「まあ、この地図を手に入れるのだって、何回も何回も偵察部隊を飛ばして、撃墜されて、それでやっと手に入れたものなんだけどね。まあ、そんなことはいいや。で、これが敵の鉄道網ね。」


 黒月は、敵国は空戦力もしっかりしているのか、と若干の気だるさを感じながら、説明の続きを聞く。

裏話コーナー


・説明が文字だけだと煩雑なので、Twitterに載せる予定の図解を参考にしてみてください。ザックノア半島の形は、おおよそインドを想像していただければ間違いないかなと思います。

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