旅の終わり
のんびり亀更新で書きます。
世界は平和になった。
神の天恵を授かりし勇者が三種の神器を揃え、残虐な魔王へと立ち向かう。
聖女様が語る予言をさも倣うかのように進んだ旅の道は、時に山賊に襲われ、時に悪さをするドラゴン退治へ駆り出され、時に精霊王のお使いを任され、それでもなお旅を続けようと思える程の親切を村人達から貰い、喜怒哀楽を仲間と分かち合う……、そんな波瀾万丈なものだった。
楽しかった。
ずっと続けば良いと思っていた。
ずっと続くと思っていた。
それは俺の人生の中で唯一無二の思い出であり、掛け替えのない宝。
そして、俺が生涯忘れることの出来ない悲劇の物語である。
割れんばかりの拍手喝采の中、俺は玉座に腰掛けた国王様に向かって跪く。
腰には勇者の聖なる剣。
腕の中には聖女の愛読書である予言の書。
それらを一等大切に抱え、国王様による称賛の言葉をただ静かに貰い受ける。
「諸君らの名誉ある奮闘に、感謝の意を表する」
勇者 Lucas=Harold
聖女 Attina=Kelly
戦士 Alt=church
及びその仲間達に、神の祝福があらんことを。
両腕を仰々しく振り上げながら高らかに張り上げた言葉は、観覧席に座る貴族達の拍手を更に引き出し、階下で立ち並ぶ国民の涙を大いに誘った。
まさに大団円。
世界は平和になった。
…誰よりも勇ましかった勇者と、誰にでも優しかった聖女の命を、礎として。