8 僕と女王の答え合わせ
「ところで、姉さんは……」
女王の私室に戻り、姉の姿を探した僕に対し、女王はベッドの方を指差した。
そこには姉と、見覚えのある猫が並んで眠っていた。本当にここまでちゃんと運んで来てたのか。
「さて、何から聞きたいかしら?」
「本当に、お体は大丈夫なのですか?」
「ええ、大丈夫よ。私達王家は、一般には知られていない魔法の活用方法を受け継いでるの。その中には、今回のように体内の毒を無力化する術なんてのもあるのよ」
なるほど、分からん。でも大丈夫そうなのは理解した。
「それで、どうしてあそこにいきなり来て、お菓子の毒まで見抜けたんですか?」
「結論から言うと、君がそこにいたからよ」
僕が? どう言う事だろう?
「まず君は、一つ勘違いをしているわ。人と猫は、はっきり言って会話なんてできない。君以外の猫の声は、すべて“にゃ~”なのよ」
「え?」
それじゃなぜ、僕は姉さんや女王と会話できているのだろう?
「もちろん、原因は君にあるわ。おそらく、君の魔法なのだと思うけど」
「僕の、魔法……」
自分は魔法が使えないと思っていただけに、そう言われても実感は無い。
「あら? もしかして無意識だったのかしら。君の心の声、全部駄々漏れよ。何なら城の外からも聞こえてたわ」
つまり、僕達が城門の前にいた辺りから聞こえてたって事かな? すんなり通してくれた理由はそれか。
そして奇しくも、以前姉さんが言っていた言葉の真相が、まさかの自分に原因がある事が判明してしまった。冗談どころか、本当にどこからでも聞こえていたのか。
「それじゃあ、女王様があの時大広間に来れたのは……」
「ええ、君が必要な情報をちゃんと拾っていてくれたからよ。お陰で大臣の企みも知れたわ」
あの猫大臣だったのか。ここの人事は大丈夫なのだろうか?
「女王様はそうおっしゃりますが、周囲に僕の内心が聞こえてる様子はありませんでしたよ」
「ふ~ん。それじゃあ、聞こえてるのはアビと私だけなのかもね」
それならまだ良かった。
……あれ? もしそうなら、かなり恐ろしい現実があったのでは?
「その点に関しては、申し訳ないと思っているわ。あの時は私も笑っちゃったけど、あの娘にとっては至って本気だったのでしょうね」
「やっぱり……」
姉にとって、自分も猫になりたいと言う願いは、僕達が思っていた以上に切実なものだったのだろう。何せ姉は周囲が猫になってからは、僕を介さないと一切会話ができなかったのだから。
「私には君がいなかった分状況は厳しいけど、こっちは自分でやった事だしね。そう言う意味では、あの娘の側に君がいてくれて本当に良かった。感謝しているわ」
「それなら……」
僕は、最も聞きたかった質問を女王にぶつける事にした。