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猫の国  作者: 氷上人鳥
7/12

7 僕の城の探検

 さっきも感じた事だが、この城はとにかく大きくて広かった。元々人間の大きさで作られたものを猫の尺度で見ているから、と言うのもあるが。

 その中で、多くの猫が様々な仕事をしていた。守るべき生活があるのは農家も城も変わらない、と言う事なのだろう。


「……いや、その発想はおかしい」


 その道中で、思わずツッコミを入れてしまう程、怪しい仕事をしている猫がいた。

 頭の上にお盆を乗せ、そこにお菓子らしきものが入った器を載せていた。


「あ……あの、ごめんなさい。今話しかけないで下さい」


 必死にバランスを取りながら、ゆっくりと歩いていく。器の中身と向かってる方向から見て、行き先はおそらく女王の部屋か。


「女王様に……お茶菓子を……」


 見るからに危なっかしく、何とかしてあげたいが、今の僕には何もしてやれない。せめて目的地まで落とさない事を祈ろう。


 そもそもの目的が時間潰しなので、城の外側だけでなく、入れそうな場所にはどんどん入っていった。


「首尾はどうだ?」


「問題無い。新入りの女中にあれを持たせ、女王の元へ向かわせた。あいつなら、女王が警戒せずに受け取るはずだ」


 大広間らしき場所に来たその時、何やら悪い予感しかしない会話が聞こえてきた。

 盗み聞きがばれるとまずそうなので、とりあえず隠れて聞き耳を立てる。猫だが忍び足の技能は無いので、立ち去ると言う選択肢は無かった。


「で。あれを食べれば、本当に女王は死ぬのか?」


「それこそ問題無い。今回のために用意した人間用の毒だ。」


 新入りの女中、食べ物、毒……ああこれ、さっきの子だよね。

 そもそも、ちゃんと届いたのだろうか?


「誰だ!」


 しまった! 見つかった!


「そこで何をしてるのかしら?」


 ……と思ったけど、どうやら違うらしい。


「なっ! 女王、だと?」


「なぜここに?」


 正直それは、僕も疑問である。


「ふふっ。あなた達、いつの間にやらずいぶん偉くなったのね」


 そう言って女王は、手に持った器を掲げて見せた。


「それはともかく、あなた達の気持ち、確かに受け取ったわ」


 さらに、器の中のお菓子を手に取り、そのまま口の中に入れてしまった。


「ふっ、ふはははは! 馬鹿め、そのまま死ぬが良い!」


「残念だけど、あなた達の思い通りにはならないわよ」


 異様に高揚しているあっちの猫と、妙に冷静な女王との落差が何だか奇妙だ。


「毒が入っていると分かってさえいれば、どうとでもなっちゃうのよ。つまらない結果でごめんね」


「くっ! 覚えてろ、この化け物め!」


 完全に悪党な台詞を残して、猫達は走り去って行った。彼等は本当にこの城の関係者なのだろうか?


「え~と……まずはごめんね、変な事に巻き込んじゃって」


「いえ、それはもうどうでも良いです」


「その辺もまとめて説明するから、とりあえず戻って来てくれるかしら?」


「分かりました……あの、自分で歩けますので」


「あら、良いじゃない。一度やってみたかったのよ」


「自分の所の猫でやって下さい」


 女王が僕を抱き抱えた格好で、僕達は部屋に戻った。

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