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猫の国  作者: 氷上人鳥
5/12

5 僕と姉の謁見

 思った以上に紆余曲折があったが、僕達はようやく女王がいる城の城下町まで辿り着いた。

 朝食後すぐに出発して、今はもう日が傾き始める時間になっていた。


「姉さん、お腹空かない?」


「う~ん……お姉ちゃんは大丈夫だよ。それより早く女王様に会いたいかな?」


「そっか……」


 これは珍しい。

 姉は好奇心が強い方だが、それでも食欲の方が優先順位は高い。姉をどうしても大人しくさせたい時は食べ物を与えるのが鉄則、と言う程だ。

 お昼の時間は過ぎているのに、女王に会いたいが先にくるとは意外だった。


「それじゃあ、城に行ってみようか」


「そうだね!」


 それにしても、さっきから周囲が何やら騒がしい。どうやら姉が注目を浴びているらしい。

 ここは実家のような郊外ではないので、現地国民である猫に混じって、他国の人間も普通に行き交っている。つまり、姉が人間の姿である事が注目の理由ではない。


「みんな、どうしたんだろうね?」


 姉も周囲の視線には気付いているようだ。これは調べた方が良いのかも知れない。

 そう思っていると、気になる言葉が聞こえてきた。


「なぜここにあのお方が?」


「何をしにいらしたのかしら?」


 姉が誰かと見間違えられてる?

 しかもその口ぶりから、相手は身分の高い存在のようだ。おそらくは……


「気にする事は無いみたいだよ。城に急ごう」


「? 分かった」


 僕は姉を促し、城に急ぐ事にした。

 僕の予想が正しければ、さっさと城に行ってしまった方が、余計な騒ぎを抑えられるはずだ。


「なぜこんな所に!」


 城門を守る門番猫も、やはり同じ反応だった。


「失礼ですが、この人は人違いです。僕達は女王様に謁見したく参りました」


「人違い、だと? 確認して来るからしばし待て」


 そう言って、門番の一匹が城の奥へと消えていった。


「会わせてくれるかな?」


「それはどうだろう」


 しばらくすると、さっきの門番が戻って来た。


「事情は分からないが、お通しするように、との女王様のお達しだ。付いて来い」


「良かった。女王様に会わせてくれるみたいだ」


「楽しみだね」


 城の敷地は広く、目的の場所に辿り着くまでの間にいろんな人とすれ違ったが、さすがにここには猫しかいないようだ。


「ここで待て。じきに女王様がいらっしゃる」


 そう言って門番は部屋を出て行った。

 その部屋は、僕達一般人が想像する城の応接室とは全く違う雰囲気だった。

 むしろ、誰かの私室のようにさえ見える。しかも女の子の。


「うわ~、これかわいい!」


「こら姉さん、勝手な事しちゃ駄目だって」


 机や椅子はともかく、クローゼットやベッドまであり、そこかしこに可愛らしい装飾が施されているのだ。


「いいでしょ、それ」


 いきなり誰かの声が聞こえてきた。

 部屋に入って来たその声の主は……


「うわぁ~、私だ!」


「姉さん、人に指さしちゃ駄目」


 やっぱりと言うべきか、我が姉と瓜二つな見た目の少女だった。


「待たせたわね。私がこの国の女王、アンよ」

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