5 僕と姉の謁見
思った以上に紆余曲折があったが、僕達はようやく女王がいる城の城下町まで辿り着いた。
朝食後すぐに出発して、今はもう日が傾き始める時間になっていた。
「姉さん、お腹空かない?」
「う~ん……お姉ちゃんは大丈夫だよ。それより早く女王様に会いたいかな?」
「そっか……」
これは珍しい。
姉は好奇心が強い方だが、それでも食欲の方が優先順位は高い。姉をどうしても大人しくさせたい時は食べ物を与えるのが鉄則、と言う程だ。
お昼の時間は過ぎているのに、女王に会いたいが先にくるとは意外だった。
「それじゃあ、城に行ってみようか」
「そうだね!」
それにしても、さっきから周囲が何やら騒がしい。どうやら姉が注目を浴びているらしい。
ここは実家のような郊外ではないので、現地国民である猫に混じって、他国の人間も普通に行き交っている。つまり、姉が人間の姿である事が注目の理由ではない。
「みんな、どうしたんだろうね?」
姉も周囲の視線には気付いているようだ。これは調べた方が良いのかも知れない。
そう思っていると、気になる言葉が聞こえてきた。
「なぜここにあのお方が?」
「何をしにいらしたのかしら?」
姉が誰かと見間違えられてる?
しかもその口ぶりから、相手は身分の高い存在のようだ。おそらくは……
「気にする事は無いみたいだよ。城に急ごう」
「? 分かった」
僕は姉を促し、城に急ぐ事にした。
僕の予想が正しければ、さっさと城に行ってしまった方が、余計な騒ぎを抑えられるはずだ。
「なぜこんな所に!」
城門を守る門番猫も、やはり同じ反応だった。
「失礼ですが、この人は人違いです。僕達は女王様に謁見したく参りました」
「人違い、だと? 確認して来るからしばし待て」
そう言って、門番の一匹が城の奥へと消えていった。
「会わせてくれるかな?」
「それはどうだろう」
しばらくすると、さっきの門番が戻って来た。
「事情は分からないが、お通しするように、との女王様のお達しだ。付いて来い」
「良かった。女王様に会わせてくれるみたいだ」
「楽しみだね」
城の敷地は広く、目的の場所に辿り着くまでの間にいろんな人とすれ違ったが、さすがにここには猫しかいないようだ。
「ここで待て。じきに女王様がいらっしゃる」
そう言って門番は部屋を出て行った。
その部屋は、僕達一般人が想像する城の応接室とは全く違う雰囲気だった。
むしろ、誰かの私室のようにさえ見える。しかも女の子の。
「うわ~、これかわいい!」
「こら姉さん、勝手な事しちゃ駄目だって」
机や椅子はともかく、クローゼットやベッドまであり、そこかしこに可愛らしい装飾が施されているのだ。
「いいでしょ、それ」
いきなり誰かの声が聞こえてきた。
部屋に入って来たその声の主は……
「うわぁ~、私だ!」
「姉さん、人に指さしちゃ駄目」
やっぱりと言うべきか、我が姉と瓜二つな見た目の少女だった。
「待たせたわね。私がこの国の女王、アンよ」