12 僕と姉の帰宅
昨日と同じ道をたどり、僕達は実家への帰路に着く。
行きと違い、ちゃんと自分の足で歩けているのがちょっと心地良い。
ただ……
「姉さん、ずっと手を繋いだままは歩きにくいよ」
「や~だ~! 抱っこできなくなった分、手を繋ぐの!」
「どうせはぐれてもすぐ合流できるんだし」
「そう言う問題じゃありません~!」
う~ん、何か急に子供っぽくなったな。つまり今まで、姉として我慢する部分があったって事か。
「お城、楽しかったね」
「う、うん」
むしろ超展開の方が多くて、それどころじゃ無かったけど。
「また行こうね」
「そうだね」
今度行く時は、家で採れた野菜でもお土産に持って行こう。そう思える位には、僕も楽しかったと感じていた。
「ただいま~!」
「お帰り、アビ、シニ」
「うむ、良くやった」
家に帰ると、ちゃんと人間に戻った両親が出迎えてくれた。
「どうだった? ……なんて、聞くまでも無さそうね」
「うん、とっても楽しかったよ!」
再び母と話せるのがよほど嬉しいのか、姉はいつも以上に上機嫌だった。
「ところで、父さん達は知ってたんだよね? 姉さんの事」
「……ああ」
血が繋がっていない事は知っていたが、まさか姉が王族の娘だとは思わなかった。だからってどうと言う訳では無いが。
「で、どうだ? 女王様とは仲良くなれたか?」
「ん? まあそれなりには。それがどうかしたの?」
「それは良かった。いよいよ私達も王族に名を連ねるんだな」
「いや、それは無いから」
この親父、まさかのとんでもない野望を僕に託そうとしてやがった。
この国の王家のヤバさを知った上で、こんな戯言を言っているのだろうか?
一通り両親と話した後、僕は姉に部屋に来てもらうようお願いした。
「え~と、何かな?」
「うん。姉さんに聞きたい事があって」
女王に諭された通り、僕は今まで踏み出せなかった一歩を、今日越えようと思い立った。
「姉さんは思い出したくもないだろうけど……」
姉の顔を見ると躊躇ってしまいそうで、そちらを見る事ができない。
「姉さんが僕に魔法を使わないと言った時、続けて何を言おうとしたの? あの時は聞こえなくて、でも聞き返せなくて……」
姉の返答は無い。されど振り向く勇気が出ない。
しばらくじっとしていると、背中から包まれる感覚がした。ちなみに、いつもの骨の軋みはない。
「それは……ひ、み、つ。だよ」
これは驚いた。いつもは不必要な情報まで逐一報告してくるような姉が、まさか僕に秘密を持つだなんて。
しかしその直後、空耳かと思う程の小さな声が、僕には確かに聞こえた。
「だって、もう叶っちゃってるから」
「え? それって……」
思わず振り返った時に見た姉の表情は、特に何か考えているものではなく、きょとんとしていた。
「何の事?」
はぐらかす、と言うよりは本当に気付いていないようだ。やはり聞き間違いだった?
……まあ良いか。結局真相は分からず終いだが、少なくとも問題の種にはならなさそうだ。
「これから忙しくなるね、姉さん」
なので、この話を終わりにするために、強引に話題を切り替える事にした。
「そうなの?」
「うん。今まで猫だった、久々に野菜が食べたい人達がいっぱいいるだろうからね」
窓から見上げた空は、今日も青々と晴れ渡っていた。これなら豊作が望めそうだ。
農作業が一段落ついたら、約束通り姉さんと一緒にまた城に遊びに行こう。我が家自慢の、とびっきり美味しい野菜を持って。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
姉はもっとア○の子に、女王はもっと大人しい感じにする予定だったのですが……どうしてこうなった?