11 僕と姉と謎のイベント
朝食の片付けを昨日まで猫だった女中の人に任せ、僕達は家に帰るべく城を後にした。
姉の姿が人に見られると面倒な事になるので、なるべく人目につかないように行動するつもりだったのだが……
「ねぇシニ君。あそこにアンちゃんがいるよ」
「……何あれ?」
結果としては杞憂に終わった。
町の中央に広場があり、さらにその中央に円形の一段高くなった場所がある。
その高台に女王が一人立っており、周囲に人の壁ができていた。その量は、町にいる人全員が集まっているのかのようだった。
「国民全員を猫に変える事で、私の目的はある程度果たせた。でも、それだけだは不十分だと知った。だから今日、みんなの猫化を解除したわ」
いわゆる釈明会見か。それならもう僕達が関わる問題では無い。
「そこで私は考えた。みんなに、私が女王である事をより納得してもらえる方法を。そしてこの結論に達した」
……何だろう。なぜか凄く嫌な予感がする。例えるなら、姉が一日中部屋に籠って何かしている時みたいだ。
「これより私は、誰からの挑戦も受けて立つわ。そして見事私を打ち負かした人に、この王位を譲る事にするわ!」
女王の突然の宣言に、周囲がにわかに沸き立った。
女王にちょっと尊敬の念を抱きつつあった僕がバカみたいだ。あれじゃ姉以下の脳筋……
「愚かなり女王。その思い上がり、この私が打ち砕いてやろう!」
早速挑戦者が女王の元に上がっていった。
「来ると思っていたわ、大臣」
あの人大臣か。猫の時にしか会っていないが、確かにあの変な勢いはそれっぽい。
「いつでも良いわよ」
「ふふふ。受けるが良い、我が究極魔ほグボァ!!」
大臣が魔法を撃つべく構えを取った直後、女王は一気に肉薄し、大臣の腹部に拳を叩き込んだ。
大臣は人垣の上まで吹き飛ばされ、そのまま沈んでいった。
その後、さっきよりさらに大きな歓声が上がった。
「さ、次は誰かしら?」
さらに煽って挑戦者を募る女王。
対する民衆の反応は……
「次は俺が!」
「私とお手合わせ願おう」
予想外に盛り上がり、対戦志願者がひっきりなしに現れた。
「俺も一発殴ってくれ、女王様!」
いや、お前はダメだろ。
まさかの盛況ぶりに呆気に取られていた僕だったが、むしろ人々の意識が女王に向いている今のうちだと思い直し、僕は姉の手を引いて町を後にした。
「ふぉっふぉっふぉっ、懐かしいのぅ」
最後に聞こえた、老人らしき言葉がちょっと引っ掛かった。
「前の王も、こうやって並みいる猛者達をぶっ飛ばしておったわい」
代々この方法やっとったんかい!
もうやだこの国。