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第25話「王女の憂鬱」

「姫!……カーラ姫ッ! 姫さまぁぁあ!!」


 王城に響き渡る呼び声。


「姫! 姫ぇぇええ! カーラ姫はどちらであるか!!」


 王城内を騎士装束の女性が颯爽と歩いていた。

 隙のない武装に所作、そして美人────()のカーラ姫の護衛騎士を務めるビビアンである。


「ったく! どこ行ったのよ!」


 カツカツカツ!!


 あちこち探して回ってさすがに疲れた様子。大理石の床を叩く靴音が彼女のいら立ちを現していた。

「あーもう!! せっかく、姫が捜索している男の新情報が入ったというのに……! まったくッ!」


 ただでさえ忙しいビビアンは、業務に忙殺されていた。


 カーラ暗殺事件に、

 護衛計画の見直し、

 そこに、カーラ姫直々に「呪具を売った青年の捜索」までもが言いつけられていたのだ。


 ……正直いってキャパオーバーである。


 そこに、余計な業務である「青年の捜索」の新情報が舞い込んできたのだ。

 一刻も早く余計な仕事を終わらせたいビビアンは、こうしてカーラを探しているわけだが……。


「カーラ姫ぇっぇええ! カーラぁぁぁああああ!」

(あんのガキぃぃぃい……!)


 今の時間は家庭教師からお作法を習ってるはずだろうが!


 しかし、カーラはお作法の先生、メリンダ婦人から逃亡し、いずこかに隠れていた。

 そして、その捜索も当然、護衛騎士ビビアンの仕事……。


「もう! いい加減にしてください! ほとんど探しましたよ! 姫ぇぇぇ!」


 広い城内を行ったり来たり。

 姫が隠れそうなところを重点的に───。


 最後に、「まぁ、さすがに自分の部屋にはいないだろうなー」と思いつつ、

 それでも、念のため彼女の部屋を捜索しようとビビアンは向かっていた。


「姫ぇぇえええ! ひぃぃめぇぇl どこにいかれましたかーーーー!! ったく、あのアマぁ……!」

 ───ガチャ。

「おう、ごら! 誰がアマじゃ!」

 カーラの自室が開くと、額に青筋を浮かべたカーラが顔を出す。

「あ、いたッッ!!」

「げ、みつかった!」


 バターーン!!

 すかさず、ガチャリと扉を閉めて引っ込むカーラ姫。


「……ちょ───」


 しーーーーーーーーん。


「………………いやいやいや、「ゲ、みつかった!」じゃねーっつの!!」


 一瞬硬直しちゃったビビアンではあるが、気を取り直してカーラの自室に乗り込んだ!

 まさか、自室に隠れているとは!


 くっそ~「裏をかかれたか!」と頭を抱えるビビアン。

 だが、ここで諦めるはずがない!


 ───おらぁぁあああ!!


「やぁっっっっと、みつけましたぞ! 姫ぇぇえ!」


 ドンドンドンドンドン!!

 叩き壊さんばかりに扉をぶっ叩く!


「ごら! あけろぉぉおお! 姫ぇぇぇええ!!」


 ガンガンガンガンガン!!


「(ちょちょちょ、壊す気?! ちょぉぉお)」

 室内から姫野くぐもった声。


 ガチャ!!


「ちょ、ちょちょ、なに?! なんなの?! ちょっと~! 開いてるわよ!! ノックくらいしなさいよ!!」


「今しとるわぁぁああ! 見て、聞いて、(おのの)け!!」


 ガンガンガンガン!!


「それはノックじゃない! 破壊よ! 破壊! アンタ、破城槌(パイルバンカー)で攻城戦でもする気かってーーーの!!」


 あと、(おのの)かせるな!!


 ───ガチャ。


 ……ブスゥと口をとがらせるカーラ。

「なんなのよー……」

 しぶしぶ、顔を出したのはいいけど……。


 中ではゴミ山───もとい、高尚なインテリアに囲まれたカーラが不機嫌そうな顔でビビアンを睨んでいた。


「で、なに? 何の用? アタシ忙しいんだけど~?」


 ゴロゴロしながら、ゲイルから買った指輪を眺めているカーラ。


「忙しい奴はゴロゴロしねぇよ」

「あ゛?! なんつった今?」


「ナンモ?」


 しれー。


「それより、姫……「何よ?」ではありませんぞ! どうして、授業をサボってゴミ部屋に?」


「げ、バレてる────……って、お前今ゴミ部屋つったよな?!」

 ギロリ。

「……それよりも、例の件────有力情報です」


「いや。そ、それよりもって──おまッ!…………それ、お前から言うのおかしいからな!! 色々もろもろで。ツーアウトやぞッ!!」


「うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ~」


 ぎゃーぎゃーぎゃー!!


「……ま、まぁいいわ。寛大な(わたくし)ですからね」

「よくねぇよ……。部屋に隠れてるんじゃねーよ……」ボソッ


 おま?!


「なんか言ったぁぁああ?!」

「いーえ。(なぁん)も。……あ、お作法の先生が激おこでしたぞ? ほら、あのメリンダ婦人が」


 うげ。


「め、メリンダはまずいわね……。も、もう帰った?」

「さぁ? 自分は、彼女に部屋で待つように言い置いて、カーラ姫を捜索に参りましたれば──」


 ガクン!!


「そこは気を利かせて、帰らせなさいよ!!」

「知りませんよ、そんなこと」

「…………はぁ、もういいわ。メリンダにはあとで謝っとくから────で、なによ? アンタがわざわざ探しに来たのはそんな理由で?」


 ガックリと疲れたカーラ姫がソファーにぶくぶくと沈み込む。


「いや。そうではなく、例の件です」

「例の件?? はて───」


 ───ポクポクポク、ちーん。

 ポカーンとしたカーラ姫。


「………………なんだっけ?」

「ぶん殴りますよ。───青年の捜索の件に決まってるじゃないですか」


 顔面に思わずパンチを叩き込みたくなるのを、グッとこらえるビビアン。


「あーあれね!! えへへ。ゴメン──────……って、今なんつった?」

「なんも?」


「うそつけ!! お前は心の声を少しは押さえろっつーーーの!!」

「さーせん」


「口の利き方ぁっぁあああああ!」


 ふー……!

 ふー……!


「………………で、どーなったの?」


 さすが王族。

 切り替えが早い。


「ハッ!───実は今朝がたのことではありますが、かの者を知っているという者たちが王国府を通じて申し出ておりまして、」


「えー。またガセネタじゃないの?」

 以前は、褒賞目当てのガセネタばかりであったのだ。

「……どうでしょうね。……私見ではありますが、有力情報だと思います───ただ、」


 ん?


「……ただ?」


 いまいち煮え切らないビビアンの様子を訝しがるカーラ姫。


「いえ───その。素行があまりよろしくない連中のようでして」

「……は? それが問題なのかしら?」


 情報の確度に、素行不良も優良もないだろうに。


「はぁ、その───例の青年は露店商人とのことでしたが……。情報提供者はその……」

「その……?」


 何を言い淀むのだろうか?





「──────S級の冒険者なのです」


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