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第10話「その指輪──国を変える」

「こ、これは──────!!」


 暗殺者を退けたカーラ姫は、ビビアンとともに別室にて神官と鑑定士に囲まれていた。

 そして、たった今神官が呪いの指輪の解呪を試みようとしていたのだが…………。


「ど、どうしたの? マズイ呪い??」

「は、はい。いえ──はい」


 どっちだよ。


「ウリエリ大僧正────アナタほどの方が動揺するとは、それほどの呪いなのか?」

 ビビアンも難しい顔でカーラの手元を覗き込む。


 例の指輪は今もそこにあり、不気味に鈍く輝いていた。


「い、いえ……。その──解呪自体は簡単です。これは、そういった類の呪いです」

「ふむ……? では、その反応はなんだ?」


 冷や汗をかくウリエリ大僧正。


「こんな禍々しい呪い……初めて見ました。幾重にも凝らした呪いの粋──……これは並の呪術ではありません────なんというか、そのー……地獄の帝王が施したとでもいうか」



※ 注:怪しい露店のあんちゃんが施しました ※



「じ、地獄?! ま、まさか!!」

「い、いえ、もちろん比喩でありますよ。──ただ、あまりにも高度な技術なのです。これは呪具の制作を研鑽し、極めた者が作ったのでしょう──」


 そういって、順繰りに説明するウリエリ。


「まず、最上位の呪いを施し、代償に得られる付与効果を最大に引き上げております。……もちろんその代わりに、その対価となるバッドステータスも極めて大きなものとなりますが────この呪具を作ったものは、対となる呪いを重ねて消滅させ、その被害を極限まで薄めております」


「へ、へぇ?」


「……それだけではありません。もちろん上位の呪いゆえ、そして装着者への呪いが降りかかります。──しかし、この者はそれを軽減するため、複雑な呪術式をもって再構築。……一見すれば田舎の司祭レベルでも解呪できるように作られております」


「つまり?」


 眉間にしわを寄せたカーラ。


「その……。つまるところ、呪われているだけ(・・・・・・・・)の、聖遺物級の指輪です────詳細は鑑定士に聞くのがよろしいでしょう」


「失礼します」


 そういって代わりに現れた鑑定士、ルーペを取り出して、カーラ姫の指の上で輝く指輪を鑑定開始────。






「な、」



 な?


「「「な?」」」


 一言漏らした鑑定士と、首を同方向に傾けるカーラ、ビビアン、ウリエリ。






「なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーーーーーー!!」





※ ※


「うわ! うっるさいわねー」

「貴様! 姫様に何たる無礼を────って、手ぇはなせ!!」


「なんたる……。なんたる……!」


 カーラ姫の手をガッシリ掴んだ鑑定士は食い入らんばかりに指輪をみて、鼻息をプスープスー。


「こ、これは……。せ、聖遺物どころではありませんぞ!!」


「な、なんですとー!! アナタ、聖遺物を──」

「大僧正どの! 姫の前ですぞ」


 一瞬、聖遺物を愚弄されたことにウリエリが憤慨するも、ビビアンに制される。



「こ、ここの、これは……なんたる────……。姫様、落ち着いて聞いてください」

「は、はい……(おめぇが落ち着けよ)」


 ゴクリ。


「信じられませんが、その────ぼ、防御力が3倍上昇効果、さらに【即死耐性】がついております」



「「「な?!」」」


 かっぱー……と口を開けたウリエリと、ポカンとした女性陣。


 な、

 ななん、


「なんじゃそりゃーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「ぼ、防御力3倍……」

「そ、即死耐性って、うそでしょ──」


 ウリエリを始め、騎士としては防御力が気になるのか、思わず口を押えるビビアン。

 そして、王族として常に暗殺の危機にさらされているカーラも額に手を当て天井を仰ぐ──。



「…………た、たしか、教会の聖遺物の『天使の盾』という、重厚なタワーシールドにその効果があるのでしたね?」

「はい……たしかに、即死耐性がついてございます──しかし、このサイズで即死耐性となると、聞いたことがございません」


「いえ、一つだけあるわ────……」



「「「ええ?!」」」



「……かの帝国の財宝────『魔王の心臓』よ」



 ドキリ。



「し、しかしあれは────……いえ、同じく呪いのアイテムですね」

「そう。帝国が所持し、宝物庫にしまっているという、魔王の心臓をネックレスとした呪われた魔のアイテム」



 魔王の心臓



 即死耐性、ステータス上昇、魔法詠唱時間短縮などの様々な高付加をもたらす伝説のアイテムだ。


 しかし、その代償に使用中は常に生命力を吸い取られ、ついには命を落とすという代物。

 解呪が間に合わなければ、使用者を食らうという──、まさに呪われた魔のアイテムである。


「そうです……。普通ならばこれほどの高い付与効果を持つ呪われた品ならば、本来代償もはるかに大きくなるものです。いえ、代償があるからこそ、付与効果が高いのです」


 それが世の理。

 この世界の真理────。


 しかし………………。


「つ、つまり…………これは、」

「の、呪われた聖遺物ということになりますな──」


 ウリエリがびっしょりと汗をかく。

 鑑定士は未だ狂乱している。


 そして、ビビアンとカーラ。


「ビビアン……」

「ハッ!」








「あの青年を、すぐに捜索しなさい」

「ハッ! 切り刻むのですね」


「そう────……って、ちゃうわ! 何で今の流れでそうなるねん!! つーか、サラッと切り刻むとか……──アンタ、こわっ!!」


「し、しかし、姫に呪いの品など──」


 あたふたと言い訳するビビアン。

 意外とポンコツ……。


「ええそうよ────呪いの品よ。……だけど、(わたくし)はこれに救われた」


 どこか、うっとりと髑髏の指輪を見つめるカーラ。


 そして、


「ならば、礼の一つでもいうべきでしょ? これが金貨1枚だなんて、安すぎるわ」

「いや、大金貨────ま、まぁいいです。ところで鑑定士よ、これは市場に流せばどれくらいに価値がある?」


 狂乱していた鑑定士だが、価値と聞いてギギギギギギとクビを回すと、


「価値ですと? あひゃひゃひゃ」



 変な顔で笑いだす鑑定士。




「………………………小国が買える価値はあるかと」







「「「はぁッ?!」」」












※ 注:露店で売ってました ※

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