異世界へ辿り着く
舞台は王宮の庭。
剣を持ち、構える先に見える相手は鎧を着た細めの男。
開始の合図とともにその男に向かって剣を突き刺した。
「うっ…」
僅か一瞬の決着だった。
気がついた時には俺はベットの上に横たわっていたのだった。
「はぁっ!ふぅ… また同じ夢か」
俺がこっちの世界に転生してから数年が経ち、ある出来事を境にして毎回見る夢がある。
負けて追い出された日の夢だ。
転生して騎士候補として育てられた俺だったが、才能が無く周りの人にも親にも失敗作だと言われ家を追い出されてしまった。
そんな俺の現在はというと……
「はやくしなさい。朝食はまだなのかしら」
「すみません。今持って行きます」
魔王の娘の召使いである。
転生以前の俺は田上宗馬という名で高校生活を謳歌していた。
平時はサッカー部に入っていたので週5回くらいの練習に参加していた。
特段強いわけでは無かったのでそれなりに楽しみながらできた。
休みの日は友達と遊びによく繁華街などに行っていた。
勉強はあまり得意ではなかったが、大学進学を考えて過ごしていたある日の帰りのことだった。
帰り道一人で歩いていると目の前に何やら怪しい光が地面から出ていた。
光っているものの正体はよくわからない魔法陣だった。
(誰の遊びだよ。しょうもないことするなよな)
ただのお絵かきのようにしか見えなかった。
(どっかの厨二病が書いたんだろうな。もっと現実みろっての)
こんなふうに馬鹿にしていた俺はそのまま帰ろうとした。
しかし―――
魔法陣の上を通った次の瞬間、魔法陣の中に吸い込まれてしまった。
そして、俺は異世界の地へと辿り着いてしまったのだった。
異世界では俺はなぜか、8才の姿で生まれ変わり騎士候補として育てられることになった。
こっちの世界での名はソータ=ディグラである。