ユカイナナカマトイラダチ ν
「ここな……の?」
「おう、ここだぜ!」
「ど、どう見ても「神界」への入り口には見えないんだけど?」
少女の疑問は当たり前の事だ。そこにある物は、ただの「岩」なのだから。それが入り口と言われても俄には信じられないだろう。いやまぁ、国の境界ならなんとなく分からなくもないが、「世界」の境界と言われてもピンとこないと言うのが正確な解答かもしれない。
半信半疑どころかまったく信じていない少女に対して、スサノオは目の前にポツンと置いてある、ただの「岩」にしか見えない逸品を「ぺしぺし」しながら語り始めた。
まぁ、ポツンと置いてあると言ってもそのサイズは大きい為に「岩」よりは「巨岩」、そしてその形から「奇岩」と言えばしっくりくるかもしれない。
「これは「千引きの岩」だ。むかーし昔、オレサマのオヤジが、置いた岩だな」
「いやいやいや、ただの岩でしょ?」
「まぁ、見た目はな。だがこの岩が境界だ。「彼岸」と「此岸」、「幽世」と「現世」、そして、「隠世」と「常世」のな」
ごくり
「まぁいいわよ、そーゆーコトなら。で、これを押すの?引くの?投げるの?斬るの?それとも、壊すの?」
「まぁ、引いた事も、投げた事も、斬った事も、壊した事もねぇんだが、試してみたとして「神界」に行けなくなってもオレサマは知らねぇぞ?」
「じゃあ、押すのが正解なのね?」
少女はスサノオが誘導尋問に引っかかったと思って、ニヤリと口角を上げると岩に手を掛け、力任せに押していった。
スサノオはそんな少女の行動を見てニタニタしていたが、そんなコトとは露も知らない少女はそれこそ必死に押していた。
「ふッ……んッ……んッ!てぇりゃッ。はぁ……はぁ……な、何よ!び、びくともしないじゃないッ!」
「これは「千引の岩」だって言ったろ?要するに大の大人が千人掛かりでやっと引く事が出来るくらいの大岩なのさ」
「それじゃ、か弱いアタシには出来っこないじゃない!それに引くのが正解だったワケ?」
「まぁ、おめぇがか弱いかどうかはさて置いて……だ。コイツは引くにしてもそれに見合った力が無くちゃならねぇ。だからよ?こうすりゃいいのさ!」
「ま、簡単な話しが知恵比べってヤツだな。まぁ、そこで少ぉし離れて見てな」
スサノオは岩の下に手を回すと「ふっんッ」と気合いを込めていった。その瞬間、空気が振動し少女の耳には地鳴りのような音が聞こえた気がした。そしてスサノオは「千引の岩」を持ち上げたのだった。
その光景に驚いた少女はただただ、あんぐりと勝手に開いた口が閉じられなかった。
「ドスンッ」と豪快な音を立てて「千引の岩」は少し離れた場所に置かれた。
そして、その「千引の岩」があった場所にはワームホールがポッカリと開いていたのである。
「ほらッ、さっさと行くぞ!」
「えっ、えぇぇっ?!どんだけ馬鹿力なワケ?」
「早く来ねぇと、閉まっちまうぞ?自力で出来んなら構わねぇが、オレサマは先に行くぜ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよッ」
こうして2人は「冥界」を後にしたのだった。
かつんかつん
「あれ?岩は戻さなくて平気だったの?」
「まぁ、それは気にすんなッ。あの岩そのものが、ここへの入り口だからよ、動かせれば元々あった場所に一定時間「入り口」を作るだけの概念だ。逆に言えば時間が経てば「入り口」は岩の中に戻るって寸法だ」
「へぇ、まったく理解出来ない、とんでも理論なのね」
2人は灯りがまったく無い真っ暗な世界で、ただひたすらに階段のような坂のような場所を上へ上へと登っている。足場が良いとは決して言えないし灯りがないので目が慣れても視界は非常に悪い。
そんな中で、唯一の灯りとも言えるモノは、たまに上から降りてくるふわふわとした、なんかよく分からない「光」だった。
「これ微精霊だっけ?こんなトコにもいるのね?」
つんつん
「あぁ、それ?それは人魂だぞ?」
ぴきッ
少女はその場でフリーズした。生ける屍なんかの屍躯種や屍喰屍といった魔獣として認識されるモノ達は、気味が悪い事に変わりはないがどうにか割り切れる。
死霊種や幽霊種と呼ばれる魔獣は生理的にイヤだがなんとか割り切れる。
だが、魔獣ではなく元々生きていた人間の魂であれば割り切る事は出来なかった。
狩る対象なのかどうかが、少女にとって割り切る割り切れないのラインなのかもしれない。
要するに存在が認められていないオバケが苦手と言い換えられるだろう。
「ここは黄泉比良坂だ。「此岸」と「彼岸」の間。おめぇの世界で死んだ者が「根の国」に行く為の道だ。だから、おめぇが今、触ってたのは微精霊なんかじゃなく、ただの死者の魂ってヤツだな」
「それってオバケみたいなモンじゃないッ!がくがく」
「がっはっはっ、オバケか。まぁ、死者の国の連中はそしたら、みんなオバケだ。がっはっはっ」
少女は身体を震えさせるとスサノオの近くまで小走りで近寄り、スサノオの服をさり気無く掴んでいた。スサノオは少女のその行動がよく理解出来なかったが、少女が震えている様子だったので特に何も言う事をしなかった。
2人はそのままひたすら無言で何も紡がずに坂を登り続けていく。途中で道が分かれていた気がしたが、少女はスサノオの服を掴んでいるので道の選択権は無く、付いていく一択しか選択肢は無い。そして、その道がどこに繋がっているかも気にしない事にした。
こうして暫く経った頃に、漸く坂の上の方に明かりが見えて来たのだった。
「やっと、着いたわね。って、アレ?ここは?高天原とは違う光景ね?どうなっているの?って言うより、最初にタケミカヅチさんに連れて来られた場所に凄く似てる」
「まぁ、そりゃそうか。知らねぇのもワケねぇか。さてはタケの野郎、ちゃんと説明しなかったな?まぁ、タケの野郎は根の国に行けねぇから当然っちゃ当然か」
「そもそも「冥界」に行くコトになるなんてアタシも思わなかったわよ」
「ま、当然だわな。しゃあねぇから説明すっとだな、「根の国」から帰って来た者が「高天原」に入る為には禊をしてからじゃねぇと入れねぇ」
「えっ?!禊?それって、まさか……」
「だがな、ここはまぁ一応は「神界」だ。暴虐姉が治める「高天原」じゃなくて、その属領の「葦原中国」ってトコだ」
「属領になるのね。で、アタシは禊が凄っごく気になるんだけど?」
「まぁまぁ焦らず聞けや。人間界から来た場合も最初にここに辿り着く。ここの近くに禊池があっから、そこで禊をすれば「高天原」へ行けるようになるって寸法だ。とは言っても人間界から来た場合は禊はいらねぇがな」
「最初にタケミカヅチさんに連れて来られた時、「葦原中国」の事も「高天原」って呼んでたけど、違ったのね?」
「「葦原中国」は「高天原」の属領だから、強ち嘘ではねぇさ。ただ、「天津神」と「国津神」で主張は違うがな」
「なんか「神界」も複雑なのね、で、禊よ禊!禊池ってやっぱり……」
「んあ?何をさっきから気にしてやがんだ?まぁ、いいや。で、禊池はどっちかな」
「あぁ、こっちか。付いてきな」
少女はどこか不安そうな表情でスサノオに付いていく。まぁ、「神界」の土地勘も地理にも疎いので付いていくしかないのだが、少女の心配などスサノオは意にも介していない様子だったのは言うまでもないだろう。
「わぁ、凄いッ!底が見えるくらいキレイな池なのね。これがさっき言ってた禊池なのかしら?」
透明度が高く殆ど真円に近い「池」がそこにあった。池の中に生き物の姿は見えないが、色とりどりの花が池の周りを囲み、池の真ん中には大きな蓮の花が咲いている。
スサノオは池の畔で徐ろに装備を外して服を脱ぎ、上裸から一糸纏わぬ姿になると盛大に水しぶきを上げながら池の中へと飛び込んでいった。
「やっぱりこうなるのね、はぁ……。そしてなんてデリカシーが無い人なのかしら」
ぱしゃッぱしゃッ
「おめぇも早く入れよッ!」
少女は真っ裸のスサノオを直視する事が出来るハズもなく、後ろを向いて顔を手で覆い隠していた。流石にまじまじと見詰める勇気なんてないし、その前にそんな事をしたら恥ずかしさのあまりに死んでしまうかもしれないだろう。
しかしスサノオは少女のそんな気持ちなんて知る由もなく、池の水をバシャバシャとこれまた豪快に自身の装備や服へと掛けていた。
一通りお清めが終わると、もたもたしている少女にスサノオは声を掛けた。
だが、池の中に入ってるとはいえ、少女はスサノオを直視出来ないコトから声を張り上げる事しか出来ないのだった。
「こここ、こんな所で素っ裸になれっての?しかも、アンタがいる前で全裸になれっての?こここ、こう見えてアタシ、処女なのよ/// そそそんな破廉恥なコト、軽々しく出来る尻軽じゃないのッ!」
「だから、さっきも言っただろ?おめぇの貧相な……」
ぶちっ
バリバリバリバリバリッ
「ぐぎゃあぁぁぁぁ」
「ふんすっ」
少女は動揺し声が上擦りながら盛大にカミングアウトしたのだが、スサノオは察する事なく少女のコンプレックスにズカズカと踏み込みかけたのだ。拠って全てを言わす事なく雷撃の魔術をその手に湛えた少女は、禊池の中へと投げ込んだのだった。
流石に逃げる事が出来なかったスサノオは、池の真ん中に、ただただ「ぷかり」と浮かんでいた。
ぷかりぷかりと漂う憐れなスサノオの姿に、池の真ん中で咲く大きな蓮の花は我関せずの様子だったが、周囲に咲く花々は追悼を捧げている様子で視線を池に向けていたが、まぁそれは偶然だろう。
いくら気を失っているとは言えども、池に浮かぶスサノオがいる側で一糸纏わぬ姿になる事を少女はやっぱり躊躇っていた。更に言えば、ここが野外である事に変わりはない。
開放感があり過ぎるこの場所で、気を失っているスサノオ以外誰もいなかったとしても、やっぱり全裸になるのは少女の純潔が許さなかった。だからせめてもの譲歩で、装備を外してインナーのままでなら……と、その状態で池の中へ恐る恐る浸かる事にしたのだ。
だがそれでもスサノオが意識を取り戻した時に、絶対に見られない位置に隠れた上で……という徹底ぶりは取っていた。
足の指先から浸かった池の水は冷た過ぎず、肌へと染み渡るようなきめ細やかな真水だった。
こうして少女の肢体が全て水に浸かる頃には、開放感からか「気持ちいぃぃぃ」と思わず素直な心を漏らしていた。
純潔を徹底する少女は池の中に自身の口まで潜ると、スサノオがいる方向に背を向けて水の中でインナーだけを脱いでいく。そして、下着姿のままで「禊」を行っていったのだった。
下着の中に手を入れて身体を洗い終えた少女は、未だに浮かんでいるスサノオをチラ見し、気を失っている事だけを確認すると水の中で直ぐさまインナーを着た。
更には装備に対して音を立てないようにそっと水を掛けると、水から上がって直ぐに近くの茂みに身を隠したのだった。
そこで少女が何をしていたかはご想像にお任せするとしよう。
さて、方法が合っているかは別として全ての「禊」が終わった少女は、池の畔に座って気持ちの良い穏やかな風にその身を晒し、暖かな陽の光を一身に浴びて英気を養っていた。
当然の事ながらにスサノオに対する気遣いは存在していなかった。
暫くの時が流れ陽の光が頂きに達した頃、少女は声を掛けられた。どうやら、うたた寝をしていたらしい。
少女が目を覚ますと横にはスサノオの姿があった。
「ここで寝転がっていると気持ち良いだろ?」
「えぇ、そうね」
「そだそだ、おめぇにコイツをやる」
スサノオは少女に「何か」を差し出していた。だが陽の光が眩しくて少女はそれが「何か」分からなかった。
結果として上体を起こしスサノオから差し出された物を見る事にしたのだが、差し出されたモノが何なのかはサッパリ分からなかったのだった。
しかし見た目だけなら、不思議な色をした球体なのは分かった。
「これは?」
「それは恐らくだが神獣の卵だな。さっきの「禊」の時に産まれたモンだ」
「あ、アンタ、実は女だったの?」
「がっはっはっはっ!おめぇ、面白いな!だが、そうじゃねぇ。オレサマは男だ。神族は「禊」をすると「神族」を産む事が出来る。女とまぐわっても子供は作れるが、その場合、産むのは女だろ?」
ぼんッ
「え、えぇ、まぁ、うん、そう……よね。ままま、まぐわうとか、ごにょごにょごにょ」
「まぁそれにな、神族の「禊」から産まれた「神族」は自身の分身みたいなモンだ。本来なら「神族」の姿で産まれてくるモンだが、今回はおめぇがいたからかもしんねぇな」
「えっ?アタシ?アタシがいると、卵が産まれるの?」
少女としては初めての経験だった。いや、少女が卵を産んだワケではないし、処女な少女が子供を産んだコトがあるハズもないが、自分の影響で産まれて来た子供が卵だったという事は何か引っ掛かるモノがあった。
「まぁヒト種と神族がまぐわえば子供を成す事は出来っから、本来は半神半人として産まれてきてもおかしくはねぇんだが、ソイツが産まれた」
ぼんッ
「ままま、またまぐわわわわわ、もう!デリカシーないわねッ、そそそそれにアタシ達2人の子供みたいに言わないでよ!これでも、まだそーゆー経験ないんだからッ/// あぁもう、アタシ何言ってんだろ」
「がっはっはっはっ。なんつーかまぁ随分と初々しいじゃねぇか。まぁ、そーゆーワケでそれはオレサマのモンじゃなくて、おめぇのモンだ。だから、おめぇにやる。大事に育てなッ!」
「ど、どんなワケなのよッ」
「オレサマ1人の子供ならいざ知らず、おめぇもいたんだ。だったら、おめぇにも責任はある」
「何よ何よ、アタシの事は遊びだったのね」
「そーゆー冗談は処女が言うモンじゃねぇぜ。それにな、オレサマよりもおめぇの方が弱いだろ?神獣ならちゃんと育てれば戦力になっから、おめぇが育てな」
「え、えぇ、まぁ、そうよ……ね」
スサノオは哂っていた。少女は色々と複雑な心境だったが、卵を受け取ると眩しく輝く空に向けて卵を眺めていた。
陽の光を受けても中の様子は分からなかったが、不思議な色をした卵は陽光を受けてキラキラと輝いていた事だけは確かだった。
「神族の子供かぁ」
「じゃあ、そろそろ行くか?」
「えぇ、そうね」
「でも、ここから先はどうやって「高天原」へ向かうの?空を行くの?」
「それでもいいが、時間も掛かるし面倒臭ぇからポータルを使う」
「確かこっちの方にあった気がすんだけど……」
「こんな場所にポータルがあるの?」
「おぉ、ここだここだ。あったぞ。ここにあれば、禊してからスグに高天原に帰れっからだいぶ前に創っておいたのさ」
それは前にオリュンポスへ向かった時に使った物よりは少し小さめのサイズで、形はそのまんま「ストーンヘンジ」のような物だ。そしてそれを創ったとスサノオは話していた事から、少女としてはその事に驚かされていたのだが、特に何も言う事はしなかった。
こうして2人はポータルに入ると「葦原中国」を後にしていくのだった。
しゃッ
「あぁ、なんか、戻って来たって感じね?」
「あぁ、そうだな」
「ッ!?何か起きてる……の?」
「ちっ!行くぞッ」
スサノオの表情は高天原に着いた途端に険しくなっていった。そして少女もまた、その異変を察知しスサノオと顔を合わせたのだった。
こうして2人は息つく暇もなく、ダッシュで「異変」が起きている方向へ向かっていったのである。
「これは一体、どういう事ですか?あたくし達「高天原」と戦争を起こそうと言うのですか?解答を求めます、北欧「アースガルズ」の主神、オーディンよ」
「先に手を出したのはそちらであろう?知らぬとは言わせぬぞ、「高天原」の主神、アマテラス!」
2人の主神はアマテラスの社の中で対峙していた。アマテラスは天蓋から出て階段下にいるオーディンを侵略者に対する憎しみを持って見下ろし、オーディンはその瞳に怒りを宿してアマテラスを見据えている。
「何の事を仰っているのです?あたくし達が「アースガルズ」に攻め込んだ事は御座いませんよ?」
「何を世迷い言を!こちらには目撃者も多数いるのだ、しらばっくれる事は出来んのだぞ!」
アマテラスは憎しみを宿しながらも毅然とした態度でオーディンに問い掛けるが、その言の葉を受けたオーディンは怒りの業火を更に燃え滾らせている様子だった。
「つい先日の事、貴殿の弟を名乗る者が吾の神殿にやって来て破壊行為を繰り返した挙句、捕らえにいったトールをも打ち倒し「雷神の鎚」を奪って逃げたのだ。その事を知らぬとは言わせぬぞ!」
「身の潔白を証明するなら、今すぐに貴殿の弟の「スサノオ」をここに連れて参れ!」
「はぁ、この状況では何を言っても駄目ですね」
「はんッ!諦めたか?それならば、破壊された吾の神殿の代わりにここは破壊されても文句はあるまい!」
「「「「主!大丈夫ですかッ!」」」」
アマテラスの社に異変が起きた事を知った「高天原」の神族達は続々と集結し始めていた。
こうして状況は一気に悪化の一途を辿り一触即発の状態へと移り変わっていく。数では勝る「高天原」だが、相手は1人とは言え絶大な力を誇るオーディンであり、睨み合うままに時だけが流れていった。
もしもここでどちらかが先に手を出して、開戦の火蓋が切られるような事態に万が一にでもなれば、大国である2つの国は「神界」に数多の戦乱を巻き起こし、巻き込まれた幾つもの国々が危急存亡に晒されることになり兼ねない。
だからこそ互いに睨み合うだけで手は出さずにいたが、いずれにしても衝突は避けられそうになく、意地と意地のぶつかり合いは激しく火花を散らしていた。
「おめぇら、何やってんの?こんなところで」
かつんかつん
「えーっと、知らねぇ顔が1つあるけど、どちらさん?アンタがこの騒ぎの発端か?」
「スゥゥサァァァノォォォォオォォォォォ!!出よ真神征槍」
突然のスサノオの登場にオーディンは憤怒の形相を以って、スサノオ目掛けて特攻を仕掛けていった。
当のスサノオとしては襲われる謂れも心当たりも無かったが、生来の気質が強者である者との闘いを拒むワケもなく、その顔は哂っていた。
がきんッ
ぎりりッぎぎぎ
「吾の顔を見忘れたか、この痴れ者めッ!」
「忘れるも何も、見た事も会った事もねぇよ!残念ながらな。それにしてもオッサン、強ぇな」
「オッサン……だと?!飽くまでもシラを切ると言うなら、その身が思い出すまでこの槍を味合わせてやる」
「オーディンさま?」
「おい、来んじゃねぇ!このオッサン強いぜ、巻き込まれたくなければ離れて……ろ?ん?オーディン?」
「何故ここにお嬢さんが?」
「こいつが、オーディンなのか?」
スサノオはオーディンの方を向きながら、その名を口ずさんでおり少女の方を見ると少女は黙って頷いていた。
当のオーディンはオーディンでここに少女がいるワケも分からない為に一度冷静になった様子だった。
「これはどうやら、話し合う必要があるみたいだな」
スサノオはオーディンとの間合いを取ると握ってい剣を鞘に納めた。オーディンの名を聞いたからには事の真偽を確かめるのが先決だと判断したからなのだが、オーディンとしてはその言葉の本心が理解出来ていたかは現時点では定かではないだろう。




