クインスコード
「ある所に1人の少年がいたんだ」
「その少年は身体が弱くて外で走り回るコトも友達と遊ぶコトも出来なかったんだ」
「うん、それからそれから?」
人間界の端っこに1人の少年がいた。その少年の名前は「レイノルド・オルテンシア」だ。
元々は由緒ある貴族だったらしいけど、時代の変遷と共に没落した貴族の末裔だ。
でもその少年は生まれつき身体が弱く、20歳まで生きられないだろうと医者から言われており、両親はとても悲しんでいた。
没落した貴族が裕福なワケがなく、先祖から受け継いだ土地も大半を手放さなくてはならない程の貧乏っぷりだった。
それでも、土地は手放してもその屋敷はたくさんの思い出が詰まっていたから手放す事はせずにいた。
そんな時、1人の女性がやって来た。その手に金色に輝く林檎を1つだけ持って。
「ねぇねぇ、それからそれから?」
「その子はどうなっちゃうの?」
「あはは、レイミスはせっかちさんだなぁ。まだまだ時間はたっくさんあるんだ」
「そんなせっかちにならなくても、お話しは逃げたりしないよ?」
「でもさでもさ、凄っごく気になるじゃん?早く話しの続きを話してよ!」
林檎を持ってきた女性は人間じゃなかった。何故なら頭の上にリングがあったからだ。
俗に言う天使族と言うヤツだ。
レイノルドの両親はワラにも縋る思いでその女性に掛け合った。両親はその林檎の事を知っていたからだ。だが、その女性はその林檎をレイノルドの為に持って来たので、両親に縋られなくても渡すつもりだった。
そして林檎を食べたレイノルドはみるみるうちに元気になっていった。
レイノルドが林檎を食べてから3年後、15歳の誕生日を迎えた時に再びあの天使族の女性は現れた。
今度は一振りの刀を持って。
天使族の女性がレイノルドに渡した刀は特殊な願いに拠って造られた刀だった。
当然の事ながらレイノルドの両親は反対した。そんなモノを貰う謂れがなかったからだ。
だけど、本心は息子を危険な目に合わせたくないってのが一番の理由だった。だから精一杯反対した。
息子の生命を救ってくれたコトには感謝すれど、危険な目には合わせたくない。
だからそれは等価交換の原則に反する立派な感情だった。
でもレイノルドはそんな両親の感情に真っ向から反対するとその刀を手に取ったのだった。
「ねぇねぇ、その刀ってなんなの?」
「特殊な願いってなんなの?」
「それを先に言ったらネタバレしちゃうじゃないか!」
「それじゃ、お話しじゃなくて解説になっちゃうからツマラナイでしょ?」
「お話しは時間を掛けてゆっくり読み解いた方が絶対に面白いんだ。だから、ネタバレはしないよ?」
「ちぇっ。でもいいよ!もっともっと続きを話して話して!!」