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約法三章 ~ねぇ、約束して!法を犯さない、人を悲しませない、アタシを幸せにする!えっ?最初は出来るけど、後の2つは出来かねるって?~

「何故、エリックは封印指定されたのか?」


それは意外にもカレラの想定の範囲内だったと言える。

要はロンドン国による()()()である。


だが(しか)しながら、

「何故そうなったのか?」と言われれば、

やはりあの空間の実現に関する事が一枚噛んでおり、

その為にはイコルの話が必要不可欠であった。


だが当然の事ながら、

イコルの話を深堀(ふかぼり)すれば、

ジャイニの()()()()になる可能性がある為、

カレラは深堀(ふかぼり)するのを止め、

途中で引き下がったのである。


そして、

「エリックさん、まだ、この国にいたいかしら?」と、

話しを切り替えたのであった。


「ボクがあんなモノを作ったから、ボクは封印指定されてしまいました。それならば、ボクはこの国から出たい!!、、、です。」



話しの流れ的に前にエリーゼが言っていた、

「エリックは人が変わってしまった」と言う部分は話す限り一切合切辻褄が合わないとカレラは考えていたが、

そこはウィル(神奈川国のマッド)の例がある為、

「研究熱心なのだろう」と割り切る事にしたのである。


またもう一つの可能性としては、

既に操られてはいない為、

「変わってしまった」様には見えない可能性がある、、、とも言える。


現状に於いて、

エリックは何者かに操られている気配は無く、

ルミネに拠る魔術的介入の検査にも引っ掛からなかった為、

そう結論付けられたのであった。



「それじゃあ、エリックさんに言伝(ことづて)を伝えるわね?」

カレラは先程までとは違い、

幾分か柔和な表情を作ると、

エリックに対して言の葉を紡いでいく。


言伝(ことづて)?」

エリックは急にカレラから紡がれた言の葉に対して、

「?」を頭の上に生やした状態でカレラから紡がれるのを待っていた。


「えぇ。貴方の帰りを、あの部屋でエリーゼさんは待っているから、一目でも貴方に会いたいそうよ?」

カレラはエリーゼからの言伝(ことづて)をエリックに伝えるとウインクをしたのであった。


「とは言っても、このまま貴方を一人で向かわせるワケには行かないから、ちょっと待ってて貰えるかしら?」

カレラはエリックにそう伝えるとルミネにアイコンタクトを送り、

そのまま部屋を出ていったのである。



カレラは部屋を出るとマムに連絡を取り、

エリックとエリーゼの亡命の可否とそれが()()()()()()()直ぐに神奈川国へと帰投する旨を伝えていた。


マムはロンドン国に於いてエリックが()()()()()()()()()と聞いた段階で、

(当然の事ながら)難色を示したが、

「神奈川国に亡命出来ないのであれば、他の亡命先を見付けた後で帰投する」と、

カレラに脅された事もあって渋々と了承したのである。


世界の一大事と、

二人の幸せを天秤に掛けた結果、

カレラが先んじたのは二人の幸せであり、

依頼(クエスト)を受けた以上、

カレラが達成(クリア)を選んだ結論であったと言える。



カレラはマムとの話が終わると、

ルミネに不可視化をかけて貰った上で、

ホテルの部屋を全員で後にしていた。

そして、其処には誰一人としての痕跡も残されてはいなかったと言える。


ロンドン国には到着の折から色々と世話になった事もあって、

申し訳無い気持ちが少なからずあったのだが、

エリックを脱獄させ匿った上、

その亡命の手配までした手前、

ロンドン国には内密に国を出ていった方がいいと判断したのである。


その為、

三人は不可視化した状態でエリーゼの部屋まで行き、

エリックとルミネをその部屋に留守番させると、

カレラは一人でエリーゼのいるカフェへと向かったのであった。



カフェに着いたカレラは先ず、

真っ先にエリーゼの元では無く、

カフェの店長の元へと向かい話しをしていた。


エリーゼはカフェに来たカレラを見た途端に満面の笑顔でカレラを迎えたが、

そのカレラの表情にエリーゼは多少なりとも怖じ気付いたと言える。



店長と話しを終えたカレラが店長室から出てくるまでにかかった所要時間は五分ほど。

その間エリーゼは店の客の対応もままならない様子であった。


カレラが店長室から出てくると、

カレラはその足でエリーゼの元へと向かいその手を引き、

そのまま訳も分からず狼狽(うろた)えているエリーゼを抱きかかえる様に空を駆けたのである。



「カレラ、、、さん?」

エリーゼがカレラに対して言の葉を紡いだ時には既に空の上であり、

冬空で寒くて震えていたのもあるが、

それ以前に自分がこれからどうなってしまうのか不安で、

どうしようもなく身震いしていたとも言える。


「エリーゼさん、聞いてもらえる?」

カレラはエリーゼから紡がれた言の葉に呼応する様に、

エリーゼに対して言の葉を紡ぎ、

エリーゼはその真剣な表情と、

重たい口調からそれ以上何も言えず、

ただ「こくッ」と頷いたのであった。


「エリックさんが貴女の部屋で待っているわ。でも、エリックさんは、この国にいられないの。だから、アタシの国に亡命してもらう事になったわ。エリーゼさん、、、貴女は付いて来る?」

カレラの紡ぐ言の葉を聞いたエリーゼの感情の起伏は、

激しかったと言うのは言うまでもない。


嬉しい、悲しい、寂しい、戸惑い、、、。

エリーゼは今までに無い程の感情の起伏を表情に現しながら、

最後に「はい、お願いします」とだけ伝え、

その後は何も口から漏らさずただカレラに抱きかかえられていた。


ウェイトレスの格好のままでかなり寒かったが、

久し振りにエリックに会えると思うとそれも苦には()()なっていなかった。



エリーゼとエリックの感動の再会は、

恋人同士をイチャイチャさせる事無く、

「即刻亡命」の方針に因って慌ただしく過ぎ去っていく。


エリックもエリーゼも、

大切な物だけを自身のリュックとカバンに詰めると、

急かされるままにルミネに拠って開かれた扉を潜らされたのであった。


カレラは神奈川国へと無事に着くと、

二人を神奈川国の公安へと連れていく。

公安の中では既に退館を促すメロディが流れていた。



「ねぇ、ミトラ、マムから二人の事、聞いてない?」

カレラは二人を連れ、

ルミネと共に公安2Fの受け付け嬢・ミトラに声を掛けるが、

ミトラはとても残念そうな表情で首を横に振っていた。


その為、

四人で最上階のマムの元へと向かったのである。



「こんこん」軽い音を響かせ二回のノック音が、

カレラ一行の他に誰もいない廊下に響いていく。


「入っておいで。」

カレラのノックに呼応する様に、

声高なしゃがれ声が部屋の中から返って来たのを皮切りに、

カレラはドアを開け、

ルミネ、エリック、エリーゼの順に中へと入っていくのであった。


「話しはカレラから聞いてる。アンタ達が、エリックとエリーゼだね?」

マムの紡いだ言の葉の中に、

ルミネの名前はいないが、

まぁそれは当然である。


そして名前を呼ばれた二人は、

神奈川国のトップとの会談に緊張感を(あらわ)にしていた。


「は、はい、エリック・スチュアートです。」

エリックは声が裏返しながら、

マムの眼光に足を震わせつつ応じていた。

そして一方でエリーゼは何も言えずに、

ただただエリックの服の裾を強く握り締める様に掴んでいた。


「そんなに緊張するんでないよ?何も取って食おうってワケじゃないんだ。ただ、カレラからアンタ達の事は聞いてるが、詳しい事は聞いてない。だから、アンタ達がこの国に本当に亡命()()()のか知りたいのさ。なぁに、それに亡命するなら国籍を再登録して新たに戸籍を作らないといけないからね。」

マムは二人に対して緊張感を和らげようと多少の()()()()()言の葉を紡いでいく。

何故ならば国のトップとして、

国に害を(もたら)す者の亡命など言語道断だからである。


要は、「カレラから詳しい事は聞いてない」あたりが()()()であったと言える。


マムはカレラから二人の亡命の打診を聞いた折、

名前、職業、種族、二人の関係性、

そして、()()()()()()()()()などは既に聞き及んでいた。


だが敢えて知らない()()をする事で、

前以て聞き及んでいる内容と差異が無いかの確認と、

二人が信用に足る人間かを図ろうとしたのである。


そんな裏事情がある事を知らない二人はマムに対して包み隠さず話していく。


エリーゼはエリックが封印指定されている事を知らない為、

エリックはそれを知られる事を(はばか)っている様子にも見られたが、

そもそもエリーゼは封印指定の意味を知らないでいた事もあってそれはエリックの杞憂に終わっていた。



「まぁ、だいたい分かった。」

マムは一通りの情報を二人から聞き出すと、

マムの執務室に一人の女性が、

タイミングを見計らったかの様な絶妙なタイミングでやって来たのであった。


「二人はその人と共にお行き。色々と手続きがあるから終わったら戻っておいで。」

マムは二人に対してそう促すと、

二人は入って来た女性と共に部屋を後にしていったのである。

エリックはどこか気が抜けた様子で、

エリーゼはカレラに対して一礼をした後で。



「さて、これでアンタの望みは叶ったかい?こっからは、こっちの話しをさせて貰うが構わないね?」

マムはカレラを見据えると言の葉を投げていく。

当のカレラはマムが言おうとしている事の詳細は全くと言っていい程分かっていない為、

「ゴクリ」と唾を飲み込むと首を縦に振ったのである。


「先ずは各地の戦況からだ。現時点で施設の破壊及び、周辺の魔獣制圧に成功しているチームはどこも無い。」

マムは重苦しい口調で話し始めていた。



まだ各地での戦線が始まってから数時間しか経過していない為、

それは当然とも言えるのだが、

それでも幾つかのチームは既に制圧が終わっているとカレラが考えていたのもあった事から、

どことなく拍子抜けした感じが絶えなかったとも言えた。


だが、

マムがカレラに対して伝えたい事は()()()()()()()()()と思ったからこそ、

カレラは口から何も発する事無く、

黙って聞いている事にしていた。


そうすると続いてマムはカレラに対して本題を切り出していったのである。


「敵の拠点と思しきモノがもう一つ見付かった。」

マムが紡いだ言の葉、

それはカレラが知っている未来とは違う結果であり、

カレラが知らない事であったと言える。



時間の逆説(タイムパラドックス)、、、時間の修復力とは違うモノであるが、

得られる結果は似ていながら非なるモノとも言える。



時間の修復力は、

本来あるべき姿に戻ろう/戻そうとする力を指し、

その結果、

未来が()()()()()()()事が起こる。

また、

同一時間軸帯に於ける同一個体の重複不可など、

()()()()()()が管理者になっている(だろう)と(憶測の上で)定義されている。


だが一方で時間の逆説(タイムパラドックス)は、

修復力の範疇外で()()()()()()()()()()()のである。

そして、

それの主体は世界及び惑星ではなく、

故意にそれを行った第三者であると言える。


時間の修復力が発生し、

同一の過去から未来Aに至る道筋が未来A'へと近似値の範囲で変化し、

元の未来Aとほぼ同等な未来へと変わってしまう修復力とは異なり、

時間の逆説(タイムパラドックス)に於いては、

本来の未来Aを未来Bが()()()()()と書き換えるのと同じ行動であり、

その未来Bが確定してしまえば、

時間の修復力は()()()()()と定義されてしまう。


未来Aが未来A'になろうと、

未来Bになろうと、

時間転移を行えるモノ以外には()()()()()()()()なのだが、

さも()()()()()()()それを行っているモノの存在が明らかになったと言う事は、

今回の黒幕が()()()()()可能性を示唆している事に他ならなかったのである。



尚、

今回カレラ達がやろうとしている事は、

未来A(荒廃した未来)未来B(比較的平和な未来)へと変化させようとしている時間の逆説(タイムパラドックス)であると言えるが、

今回更に施設が発見された事は、

カレラ達がやろうとしている時間の逆説(タイムパラドックス)に対する時間の逆説(タイムパラドックス)であり、

二重の時(ダブル・タイム)間の逆説(パラドックス)とも言えるだろう。


要は、

どのタイミングで時間の修復力が介入して来るかが争点になるが、

二重の時(ダブル・タイム)間の逆説(パラドックス)()()()()()()()()()()()()

それは時間の修復力の近似値になる為、

未来A(荒廃した未来)若しくは、

未来A'(荒廃した未来の近似値)が発生する事が確定すると定義されてしまうのである。


その為、一刻も早くその施設へと向かう必要性が出来たと言えた。



「場所は、何処なの?」

カレラは重々しい口調で、

マムに対して言の葉を紡ぎ、

それを受け取ったマムは、

「南極到達不能極だ」と一言だけ返したのであった。


南極到達不能極、、、そこは神奈川国から優に14000kmはあり、

ロンドン国への旅程以上の日数がかかる事は明白と言える。

一日に1000kmを飛び続けても14日は掛かるし、

全くと言っていい程陸地の無いエリアを不眠不休で空を駆け続けるなど出来ようハズも無い。

かと言って船を使い向かうとしてもそれでは数ヶ月近く掛かってしまう。

要は詰みゲー(バッドエンド)とも言える状況なのである。



現在11月13日、PM5:30過ぎ、

公安施設からは人の気配がなくなっていた。


エリックとエリーゼの手続きを行っている公安職員は漏れ無く家には帰れず、

今日は公安に泊まることになるだろう。


外は既に暗く、

魔獣達が出歩く時間、

カレラは外に魔獣がいようと家に帰る事は出来るが、

エリックとエリーゼの神奈川国に於ける生活がどうなるのか心配だった事もあって、

恐らく今日は公安に泊まる事になるだろう。


だがそれ以前に、

南極到達不能極までどうやって行くかが纏まらない限り、

これ以上の進展は無いと言えた。

それは即ち、

あの未来が()()()()()()と言う事であり、

それは絶対に見過ごせないカレラであった。

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