表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/184

密雲不雨 ~暗雲立ち込める中、決死の覚悟で臨んだ先に待っている黒い影!に乞うご期待!!って、こんな風に言ってたらドラマチックかしら?~

「アタシよ、カレラよ!」

カレラはドアの向こうから聞こえてきたエリーゼの声に反応し言の葉を紡いでいた。


「カレラ、、、さん?あ、はいっ!直ぐに開けますね!」

エリーゼは唐突に現れた訪問客が、

最初誰か分からなかったが、

エリックの事を考えていた事もあって、

比較的直ぐにカレラを思い出したのであった。


「夜遅くにごめんなさいね。エリーゼさんから依頼されてたエリックさんの件で報告があったから来たんだけど、大丈夫かしら?」

カレラは慎重に言葉を選びながらエリーゼに向けて紡いでいく。


「えっ?!もう、エリックを探して頂けたんですか?!」

エリーゼはカレラから紡がれた言の葉に対して、

驚きを前面に曝け出しながら、

嬉々としてカレラからの言の葉を待っている様子であった。


「えぇ。単刀直入に率直に言うわね。エリックさんは、時計塔に()()()()()()わよ。」

カレラが紡いだ言の葉、これは決して嘘ではない。

だが、100%の本当だとは言えない。

その事を充分に分かっていながら、

カレラは言の葉を紡いでおり、

そんな事とは知らないエリーゼは、

自分の両の掌で鼻と口元を覆い隠す様に押さえ、

涙を浮かべながらカレラの紡ぐ言の葉を聞いていた。


「それならば、良かった。本当に良かった。そうだ!カレラさんがもし、、、また、エリックに会う事が出来た時、エリックに伝言をお願いしてもいいですか?」

エリーゼは喜びの涙を溢しながら言の葉を紡いでいく。

そんなエリーゼの表情をカレラは見ながら、

心が締め付けられる様に痛くなる思いでありながらも、

エリーゼに対して「伝言?」とだけ返したのである。


「ほんの少しでもいいから、一目でもいいから、元気な姿を見せてくれるだけでいいから、この部屋に帰って来て、、、って、そんな事だけでもあれば、わたしはあなたを待っていられるからって。そう、エリックに伝えて欲しいんです!」

エリーゼはエリックへの健気な想いを込めた伝言をカレラに託そうとし、

託されたカレラは更に胸を痛めながら、

「分かったわ!また会えたらきっと伝えると約束するわ!」とだけ返したのであった。



「ねぇ、エリーゼさん、エリックさんの事で聞きたい事があるんだけど、いいかしら?」

カレラはエリーゼからの『伝言』をエリックに伝えると約束した上でエリーゼに対して質問を紡いでいく。


「聞きたい事?わたしに分かる事でしたら、、、。」

エリーゼはカレラからの質問に応えるべく言の葉を紡ぎ、

それに対してカレラは「()()()って人の名前をエリックさんから聞いた事があるかしら?」と、

質問を投げたのであった。


「イコル、、、さん?エリックはあまり研究や対人関係の事を、わたしには話してくれなかったので、、、あっ!でもそう言えば、エリックの機嫌が凄く良かった時に、その方の名前を言ってた様な気がします!」

エリーゼは記憶の片隅から、

過去にエリックと話した記憶を呼び覚まし、

カレラの質問に応えていく。


「それが、いつ頃か覚えてる?」

カレラはエリーゼから(もたら)されるその応えに、

心がザワついていくのが感じられたが、

表情に出さず更に質問を紡いでいくのであった。


「正確な日にちは覚えてませんけど、確か、エリックの書いた論文の発表があって、その発表がきっかけで時計塔の内定を貰えて凄く喜んでいた時だった気がします!」

エリーゼはカレラの期待に応えようと必死に記憶を手繰り寄せ応えたのである。


「そう、分かったわ。ありがとう、エリーゼさん。それじゃあ、エリーゼさんの伝言は預かったから、必ず伝えるわね!」

カレラはエリーゼに対して言の葉を紡ぎ、

エリーゼが「はい!お願いします!」と返答すると、

「それじゃあ、アタシは帰るわね。おやすみなさい、エリーゼさん、いい夢を!」

カレラはそう言ってエリーゼの部屋の玄関先から出ていったのであった。


エリーゼは去っていくカレラの後を追う事をせずにカレラの背中を見送ると、

「今度、お店に来て下さい!いーーーーーっぱい、サービスしますからッ!!」と、

近所迷惑などを一切気にせず、

比較的大きな声を投げたのである。


カレラは背中が受け止めたエリーゼの言葉を聞き届けると、

振り返る事をせずに、

ただ右腕を挙げて返事とし、

自身のブーツに火を点し、

闇に包まれた(まば)らな星明りの空へと駆けていくのであった。


そのブーツの灯す光はエリーゼの目に、まるで空へと登っていく流れ星の様に映っていた。



エリックの論文の共著者としてあった名前は、

Ikol(イコル)=Crafty(クラフティ)」とあった。


エリックが引用文献として挙げた文献の著者や共著者の中に、

Ikol(イコル)=Tri(トリ)Ckster(クスター)

Ikol(イコル)=Tran(トラン)Sformer(スフォーマー)

Ikol(イコル)=Closer(クローザー)」といった名前があった事をカレラは決して見落としてなどいなかった。



「イコルが何者か分からない。でも、ジャイニを操っていたのもイコルだった。それならば、エリックの背後にもイコルがいるのなら、終わりの始まり(人間界の終末)に関わりが無いとは絶対に言えない!」

カレラはさっきまで分からなかった“WHY(何故そうなったのか?)”に繋がるピースを見付けられたと言える。


(いな)

それは正確には大倫図書館でエリックの論文を()()()()()()()()()()

それはエリックの()()()()()()()()()()

それは論文の()()()()()調()()()()()

そのピースは手に入れていたのだが、

それを認めたくない自分がいたのだが、

その微かな希望は打ち砕かれたと言っても良いかもしれない。


()()()確かにジャイニは言っていた。

「研究を手伝ってもらう代わりに、アタシの事を跳ばした」と。


それは即ち、

この時代でイコルがこれから「起こす」事を邪魔されない為であり、

それが“WHY(何故そうなったのか?)”に繋がると感じられたからである。



この時点でカレラが考えられる()()は幾つかあったが、その中で有力なモノは以下の通りである。



・エリックはイコルに研究を手伝ってもらうか、情報提供を受け、その結果、空間と時間に関わる魔術の研究を成功させた。


・エリックはその研究の成果によって時計塔に入り、その魔術によって、封印指定の空間を創り上げた。


・封印指定の空間の情報から察するに、終わりの始まり(人間界の終末)の起点は封印指定の空間に納められているモノでは無く、封印指定の空間そのものではないか。



エリックが関わったと考えられる()()は以上だが、

イコルが関与した明確な理由は依然として不明なままであり、

それについて考察するも、

物的にも状況的にも証拠が無いカレラの思考回路は悲鳴をあげるばかりだったのである。




「二人とも、集まってちょうだい!」

エリーゼの元からホテルへと戻ったカレラは、

古龍(エンシェントドラゴン)の二人に声を掛け、

自分達の部屋に集まるように伝えると、

自分は一足早く部屋へと戻っていったのであった。



「私が言うのもナンですけど、随分と遅かったですわね?」

カレラが部屋に戻るとルミネはカレラに声を掛け、

それに応じる様にカレラは、

「オドの回復は順調?」と、

質問の解答では無く別の質問を返していた。



カレラとルミネがそんなやり取りをしていると、

部屋の扉がノックされ、

古龍(エンシェントドラゴン)の二人が部屋へとやって来たのである。



「さてと、今日の調()()()で分かった事と、明日からの行動を伝えるわね。」

部屋に四人が集まり、

各々が自分の好きな所に座ると、

カレラの話しが始まったのであった。


カレラは事実と推論と仮説を入り交えて話しをしていく。

そして、それを三人は黙って聞いていた。


「先ず、終わりの始まり(人間界の終末)が始まる場所は、どうやら封印指定の空間内に()()()()()()()()()じゃなさそうね。」

カレラが紡ぐ言の葉に対して、

雷龍は「ガタッ」と椅子を揺らし立ち上がろうとしたが、

それはカレラが手を挙げ静止した事で、

雷龍が紡ごうとした言葉と共に抑えられていた。


「言い方が悪かったわね。終わりの始まり(人間界の終末)は、保存されているモノじゃなくて、()()()()()()()()ってコトよ!」

カレラが再度紡いだ言の葉に対して、

ルミネは驚いた表情を見せていたが、

何も口に出さずカレラの次の言葉を待っている様に窺えていた。


「あの空間を創り上げたのは、おそらくエリック・スチュアートという人物で、その後、何故かあの空間内に()()()()されたみたいね。」

カレラはそこで一旦言葉を止めると少しだけ間を置き、再び口を開いていく。


「よって、明日の計画は二手に分かれての行動になるから、順に説明するわね。」



・ルミネと乱龍の二人は、エリック・スチュアートの救出。


→これにはルミネから反論が出かけたが、

あの空間内に於いては、

ルミネは()()()使()()()()()()()()()()為、

その護衛として乱龍を配置すると説明を受け、

ルミネは渋々ながら承諾した。



・カレラと雷龍の二人は()()()()()()()()()()封印指定の空間の破壊。


→これに対して、またもやルミネから反論が挙がっていた。


「あの空間は、そもそも何処にあるのか分かりませんわ?それならば破壊するなら中から破壊するのが一番ではなくて?」

ルミネは至極当然の事を言ったのだが、その方法までは画策出来ていないと言える。


「確かに、それが一番かもしれないわね?でもね、おそらくだけど、封印指定の空間はあの()()()()()()()よ!」



ルミネは理解出来ないでいた。

何故ならば、

時計塔自体が空間を拡張していると考えても、

あれ程までに広大な封印指定の空間は、

時計塔の最上階に入りきるハズが無いと考えていたからである。


「ルミネ、これも恐らくなんだけど、時計塔にある研究室群自体が()()()()()()()のよ。」

カレラはルミネの疑問に対して荒唐無稽(こうとうむけい)とも取れる返答を返したのであった。



カレラは大倫図書館で調べた論文から得られた論理によって考察した結果をその場の三人に対して話していく。

勿論のコトながら、

古龍(エンシェントドラゴン)の二人は少しも分かっていないのは言うまでもない為、

その言葉の大部分はルミネに向けて紡がれていたと言っても過言ではないが、

これは余談である。



・時計塔の入り口は別空間へと転移させる扉であり、

その為、

最重要国家機密の研究室群を有事の際には敵の目から隠す為と、

もしも踏み入られた際に研究物を露出させない為と推察される事。


→雷龍が空から時計塔の窓から室内が見えなかった事、

ルミネが時計塔内部に侵入した際、

()()()()1()0()()であった事、

そして、

エリックの引用文献にあった『多空間の座標固定及び、機密保持に関する考察』という、

また別のイコルが書いた論文、、、これらの事から、

時計塔内の研究室は時計塔ではなく、

別の場所にあると結論付けたのである。


→それでは、時計塔の中に()()()()()()のであれば、本来の()()()()()には何があるのか?



・封印指定の空間は最重要国家機密の塊とも言える為、

厳重に隠されていると言っても過言では無い事。

その為、まるで迷路の様な手順を踏まないと辿り着けないと考察。


→ルミネが最上階に着いた際に見付けた空間の「歪み」。

それこそが研究室群としての時計塔と、

封印指定の空間としての時計塔を結び付けている()()()()()()なのでは無いかという事。


→時計塔本来の容積であれば、

空間拡張を施しさえすれば、

封印指定の空間の広大さをカバー出来るかもしれないが、

最上階のみを空間拡張したとしたら、

映像で見た封印指定の広大な空間をカバーし切れず、

もし仮にカバー出来たとしても、

費用対効果(コストパフォーマンス)の面に於いて、

非常に高コストにならざるを得ないと言える事からその可能性が非常に高いと言える。



それらの事が、大倫図書館で調べ物をする前に導き出したカレラの「閃き」を補足する結果となったのである。



「だいたい、言いたい事は分かりましたわ。でも、あの空間を破壊する事なんて出来るんですの?」

ルミネは至極()()()()な事を言っていた。


何故ならば、あの空間内では魔術が使えないからである。

カレラが持つ最も高火力な魔術、、、魔法の領域に足を踏み入れている究極(アルティメッ)魔術(ト・シリーズ)であればその可能性が無いとは言えないが、

そもそもあの空間の中では詠唱は効果を示さない。

本来であれば大気中にあるハズのマナも、

自身の体内にあるハズのオドですらも編む事が出来ないのだから。


「ルミネの言いたい事は分かってるわ。でも、さっきの仮説通りなら、封印指定の空間があるのは、()()()()()()()のハズよ。それならば、中から破壊しなくても方法はある、、、と思わない?」

カレラは少しだけ戯ける様にルミネに返し、

雷龍に対してウインクをしたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ