閑話休題こぼれ話 第1夜 種族と職業 ν
ぱちっぱちぱちっ
これは旅の途中での一幕。
少女とルミネは野宿の為に魔獣防御用の結界を敷いて焚き火で夕飯を作り食べていた。そしてこれは、そんな夕食の楽しいひと時が終わってからの話し。
「ご馳走様でしたわ」
「今日もご飯が美味しかったですわね」
「やっぱり旅って改めていいモノだと思いますわ」
「そだねッ!気の合う友達と旅するのってホントに楽しいッ!!」
「明日も楽しい1日になるといいねッ!」
「それじゃあ明日のルートを考えたのですけど、意見を頂けますかしら?」
「えっ?!いいよいいよ、アタシはこの世界の地理とかサッパリだし、ルミネが決めてくれたルートで間違いはないでしょ?」
「あら?そこまで言って頂けると照れてしまいますわ」
「これも広域探知のお陰ですわね」
「広域探知?それって魔術なの?」
「えぇ、そうですわ、無属性魔術ですわよ?それがどうかなさりましたの?」
「そう言えば、探知って名前の通常能力があったなって思ったのよ」
「この際だからルミネにちょっと確認したい事があるんだけどいいかしら?」
「確認?わたくしに確認しなくても、御子様ならご存知ない事などないのではなくて?」
「な、何を言ってるの、ルミネ。アタシにだって、知らない事は一杯あるのよ?」
「へぇ、例えばそれはどんな事ですの?」
「え、えっと、例えば……///」
「何で顔を赤くなさってるんですの?」
「御子様、まさか卑猥な事を想像していらっしゃるのかしら?」
「ちょッ///そそそ、そんなんじゃないわよッ!!だってルミネが知らない事って言うから」
「そ、それにルミネだって知らないコトの1つや2つはあるでしょ?」
「それは当然ありますわよ?当たり前のコトですわッ!」
「森羅万象全てのコトなど理解出来ませんし、知ってるコトしか知らないのは当然ですわよね?」
「それで、話しを戻しますけど、確認したい事って一体なんなんですの?」
「あ、うん、そうだったそうだった」
「「魔族」についてなんだけど、いいかしら?」
「わたくしに解答出来る事でしたらいいですわよ?」
「他の種族って「固有能力」を持ってるじゃない?魔族にも「固有能力」ってあるのかなって思ったの!」
「それを言ったらヒト種に「固有能力」はあるんですの?」
「えっ?!そう言えば考えてもみなかったわね。あるのかしら?」
「正解から言えばありませんわね。大きく分けると世界は4つ。まぁ、本当はそれ以上にありますけど今は4つとして説明致しますわね」
「「人間界」「魔界」「神界」「冥界」ってコト?」
「えぇ。そうですわ。他にも世界はありますけど、説明が面倒なので省きますわ」
「端的に申しまして、各世界は元々冥界以外は全て単一の種族で構成されておりましたの」
「拠って、その各「世界」の代表種族と呼べる種族には「固有能力」はないってコトになるのですわ」
「えっ?でも、「人間界」は単一種族以外にもたくさんの種族がいるわよね?」
「えぇ、ですから本来であれば「人間界」も単一種族で構成されていたのでしょうけど、世界はその進化の過程で複数の種族を世界側が内包する形で再構成した結果なのだと思いますわ」
「要するに進化の過程の振れ幅が1番大きいのが「人間界」ってコトでその結果、多様性の種族世界になったのだと思いますわよ?」
「えっ?それじゃあ、「魔界」とか「神界」も振れ幅があれば単一種族じゃなかったかもってコト?」
「それは違いますわ。「魔界」や「神界」に於いては少なくとも表舞台に出て来ない他の種族はおりますわよ」
「でも色々な意味で表舞台に出て来れないので認知されないだけなのですわ」
「あっ、そうなんだ?魔族や神族以外の種族もそれぞれの世界にいるんだ?知らなかったわ、流石ルミネねッ!」
「だから話しを戻しますと、「固有能力」は数の暴力に対する為に進化の過程の振れ幅が、代表的な単一種族以外に用意した「特殊な力」と解釈すれば1番しっくり来るのではなくって?」
「あっ!なるほどねッ!」
「それにしても「人間界」にはどれ程の種族がいるんですの?」
「うん、代表的なのは「ヒト種」よね?ヒト種も地球人族とテルース人族があって、それ以外だと「亜人種」に「獣人種」……後は「精霊種」に「幻想種」「不死種」くらいは聞いたコトがあるけど?」
「「亜人種」はエルフ族やダークエルフ族、ドワーフ族といった種族でしたわよね?他にはどんな種族が?」
「巨人族や小人族も亜人種としてメジャーかしら?」
「そんな亜人種の方々もいらっしゃるのですわね。でもってそうしたら獣人種……はたくさんいそうですわね。「精霊種」はどんな種族なんですの?」
「そぉね、樹人種や羽人種(ティンカー)、蕗葉種、善精霊種とかかしら?他にもたくさんいるみたいだけど」
「それじゃあ次に「幻想種」はどうなんですの?」
「実は「幻想種」は種族として認知されていない種族もいたりするのよ。だから種族としては結構曖昧な分類なの」
「認知されていないとはどういう事ですの?」
「種族ってそもそも、同じ様な系統の力だったり、外見的特徴が同じだったりする者達の集まりじゃない?」
「えぇ、そうですわね。更に言えば生殖して子孫を増やせる事も念頭に入れなければなりませんわね」
「でも、幻想種の中には個体の力が強過ぎて単体で「幻想種」って種族になってるのもあるのよ。それは魔獣の「幻想種」に近いっちゃ近い扱いかしらね」
「でもそうなると子孫繁栄は難しいですわよね?」
「えぇ。でもその場合は大体長命種だったりするから個としての存在が消えなかったり、他種族との交配で混血を作ったりするみたいね」
「それはなんと言うか、凄い世界ですわね」
「そうよね。幻想種としてはセイレーンやゴルゴーン、ハーピーなんてのが有名かしら?後は霊獣や神獣と呼ばれる魔獣扱いの幻想種が長い年月を掛けて人化して理性を持った鳳凰とか白虎なんてのもいたりするみたいね?似たようなのだと龍種も本来は魔獣扱いだけど人化して理性が目覚めるとると幻想種として扱われるみたいよ?」
「幻想種として人間になった魔獣って、なんか戦闘になったら凄く強そうですわね?」
「そうね。まぁ、だいたいは理性を持てば他の種族に対して悪さはしなくなるからハンターに依頼は来ないでしょうけど、もしも依頼が出た場合、討伐出来るのかしらね?」
「さて、最後に残ったのは「不死種」ですわね。そもそもこれは魔獣とは違うんですの?それとも幻想種みたいに理性が目覚めた的な種族なんですの?」
「確かに生態系上に魔獣のジャンルで「不死種」もいるわ。それは動屍種だったり食人種だったりそう言う魔獣だけど、人間ってジャンルの「不死種」は別物なのよ」
「大分類と小分類みたいなモノになりますの?」
「それは大分類の名称と同じ名称を持つ小分類ってコトよね?例えば「恐竜種」の分類の中にある「恐竜種」っていう魔獣ってコトよね?」
「違うんですの?」
「ええ違うわ。「不死種」に関しては魔獣にも「不死種」がいて、人間にも「不死種」がいるってコトなの。要するに同じ名前の大分類があるってコトになるわ」
「はぁ、ややこしいのですわね?」
「まぁ、人間としての「不死種」が魔獣としての「不死種」を産み出す事も出来るみたいだから確かにややこしいわね」
「えっ?!魔獣を人間が産み出すなんて、そんなコトが出来ますの?」
「まぁ、そこら辺はよく分からないけど、人間としての「不死種」には吸血人族や吸血鬼族、屍人族なんてのもあるらしいわ」
「そんなにたくさんの種族がいて「人間界」は大変そうですわね?」
「そうね。だからそれなりに衝突はあるみたい。でも少数の種族達は個々が強くてもやっぱり数の暴力には勝てなかったりするから大規模な衝突は最近では起きてないみたいね」
「でもそんなに種族がいればやっぱり得意な武器とかもありますでしょ?得意な武器に合わせて戦場さえ選べれば優位に戦闘を繰り広げて一方的な数の暴力にも勝てるんじゃありませんの?」
「それは確かにそうね」
「でも、人間界にはたくさんの種類の武器が出来たからそれに応じた形で戦場での戦闘方法を変える事も出来るし、それらの武器を専門に扱うジョブと呼ばれる職業も出来たのよ」
「だから一概には地の利だけでは勝てないかもしれないわ」
「やっぱりそうなると数の暴力は強いってコトになるわね」
「基本属性と同じで地の利に対しても武器の有利不利があるんですわね?」
「えぇ。そこに更に魔術や能力を上乗せするから戦況は読み難くなるわ。だから、無駄な衝突回避の為の抑止力になってるのかもね」
「ところで、さっき御子様が仰ってた「ジョブ」ってなんですの?」
「「人間界」でハンターは職業だけどそれは飽くまでも漠然とした大分類での職業なのよ。例えば料理人とか商人みたいな……ねッ!」
「料理人だって、宮廷料理人だったり小料理人だったり色々いるのと同じよッ」
「だからハンターを小分類で分けるとジョブが必要になるの。武器商人とか防具商人とか、生活雑貨の商人とか、商人にも取り扱う商品の向き不向きがあるでしょ?それがハンターでいうところのジョブよッ!」
「例えば戦士職。基本的にはソロでも活躍出来るジョブよ。逆に言えば魔術士職は立ち回り方次第だけどソロだと辛いわね」
「更に更に回復職なんてソロじゃ何も出来ないわ。回復職から能力と経験を積めばランクアップして闘える様にもなるけど回復職の初期は完全ソロじゃ死ぬわね」
「ハンターはどんなジョブでもなれるんですの?」
「そうね。基本職は戦士、魔術士、銃士、弓使いの4種類よ」
「あれ?基本職の中に回復職はないんですの?」
「回復職は専門職と呼ばれる特殊職なの。だからなろうとしてなれるワケじゃない職業よ」
「専門職もいくつかあって、基本職を鍛えていく事でなれる専門職と天性の才能があってなれる専門職に分かれるわ」
「戦士系の職業は戦士からランクアップで重戦士か軽戦士になれるわ。だけど戦士系の職業はそれぞれ武器の熟練度が問われるから剣の重戦士でも槍の重戦士になれるワケじゃないの」
「魔術士系の職業は魔術士からのランクアップで魔導士になれるわ。魔術士に関しては戦士みたいに熟練度はないから直接魔導士になれるけど、そもそも基本属性の魔術特性がなければなれないから、獣人種と地球人族はなれないわ」
「銃士系の職業は銃士からのランクアップで機工士になれるわ。銃士は特になれない人種はないけど、テルース人族は苦手な人が多いみたいね」
「最後に弓使いだけど弓使いはランクアップすると弩弓使いになれるわ。でも弓使いは覚える能力が重要になるの。なんでかって言うと銃士の能力も必要になるからなの。だからテルース人族にはちょっとだけ難しいのも事実ね」
「なかなか職業も奥が深いのですわね?でも、先程の専門職と言うのはランクアップした職業とは違いますの?」
「そうね。基本職からランクアップしただけだとそれは専門職ではなくて上級職と呼ばれるの」
「そして、その上級職をいくつか組み合わせたのが専門職と呼ばれるジョブよ!」
「専門職は2つ以上の上級職を条件として満たせばなる事が出来るのもあるし、上級職で得られる能力に拠って専門職になれる場合もあるわ」
「まぁ、専門職の更にその上もあるんだけど、そこまでいくとなる為に必要な能力があり過ぎて覚えられないわね」
「なかなか本当に難しいんですのね」
「能力は固有能力の他に通常能力があるじゃない?」
「えぇ、ありますわね」
「流石に固有能力は種族が違えば覚えられないけど、通常能力は条件さえ満たせば覚えられるわ。だけど逆にその種族の固有能力次第では通常能力の上位互換もあるからその場合は覚える通常能力が少なくて済むって場合もあるわね」
「それにね、ジョブは何も1つしかもてないワケじゃないの。だから凄い人だと、専門職にならずに上級職のみを極めようとするハンターもいるわッ」
「種族同様に人の考えも多様性なのですわね」
「上手いこと言うわね、ルミネ」
「ちなみになんだけど、専門職は特殊専門職と呼ばれるのが回復職全般と錬金術士系よ」
「それ以外は全て専門職で、十字騎士、親衛騎士、白銀騎士、狂戦士とかが戦士系専門職で、魔導師、召喚術士、呪術士、調教士とかが魔術士系の専門職ね」
「銃士系専門職は砲術士、鍛冶士、機械技士、化学士とかかしらね。弓使い系の専門職は長弓使い、忍者、呪符士、連弩使いとかが有名な所かしら?」
「まだまだ他にもいろいろと専門職はあるからもう、ややこしくてホントに覚えられないの」
「あれ?そう言えば、「魔法使い」は職業ではないんですのね?」
「ルミネ、それを本気で言ってるの?」
「冗談ですわよ。「魔法」なんて存在しないですし、使えたらそれこそ大事一大事ですわよね」
「でも、魔術を使う者としては「魔法」に憧れはありますわ」
「それはそうね」
「「人間界」だと「魔法」は禁忌として即封印指定の場合もあるから気を付けないとだし、そうそう簡単に到達出来ないから「魔法」なのよ」
「ところで御子様?」
「なぁに、ルミネ?」
「確認したい事の内容から大分脱線してますけど、時間は大丈夫ですの?」
「あぁ、そう言えばそうね。明日も早いからもう寝ましょッ!」
「結界も張ってあるから魔獣の心配もないしねッ」
「それじゃおやすみ、ルミネ。いい夢を」
「えぇ、御子様もいい夢を。おやすみなさいませ」