06(足音)
「しっ! 足音だ。誰か来る。犯人かも?」
俺達はヒソヒソ声で話す。
「俺が片付けてやる」
「おっ、おい。武器を持ってたら、どうするんだ?」
「大丈夫、実力は柔道初段だ」
「そればっかりだな」
俺は廊下の角で相手が来るのを待ち構える。ミシッ……ミシッ……。
来た! 先ずは八方崩しで相手の袖と襟を手前に引っ張る。相手が後ろに重心を移動させたところで……バターン!
「ぐあっ!」
俺は渾身の大外刈を決めて、男の顔を見る。
「……実君!? 気絶してくれたか」
「だっ、誰?」
「自販機にイタズラする隣人だよ」
「気を失ってる間にコイツを縛りましょう。中村、ビニール紐があったよね?」
「ああ、すぐに持ってくる!」
「犯人が実君なら安心だ」
「どうしてだ?」
「友人とか居ないから。多分、単独犯だよ」
「黒木先輩! 紐です。どうやって縛ったら?」
「後ろ手に縛ろう。足首も」
俺達は実君を縛り上げる。
「これで一安心だな」
「早く外へ出ましょう」
「そうだな。ここが実君の家だとすると、近くに交番がある」
俺達は玄関に行くと、板でドアが封じられていた。
「これじゃ、外へ出られない!」
「バールか何かないか? 探そう」
「痛っ!」中村の声だ。
「どうした? 大丈夫か?」
「床が濡れてて、転んじゃいました。って赤い!? 血か?」
「隣の部屋から流れてきたのかな?」
「開けてみよう」
「止めましょうよ。先に逃げた方が良いですよ」
「これだけの血溜まりだ。人が亡くなってるかも知れない。確認しなくては」
俺は血溜まりで滑らないように、気を付けながらドアを開ける。
「やっぱり、人だ…………。えっ!? 清水!? 実君、人を殺したのか。頭から血を流してる……」
ガツン!
「ぐおっ!」
俺は後頭部に衝撃を受けた。