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3 とりあえずは助かった、らしい。

ん?

よく見たらこいつら猪じゃない…?

なんか悪魔みたいなツノ生えてるし。

色というか雰囲気もちょっと禍々しいし。


あー、これが噂に聞く魔物かあ。

生で見るのは(当たり前だけど)初めてだなー。

…って呑気に考えてる場合じゃない!!


猪ならまだしも魔物って!

いや猪でもどうしようもないけどさ!

死ねって!? 死んで生まれ変わった(?)ばかりの私にまた死ねって!?


「ハードモードどころじゃなさすぎる!」


お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください。

あ、もうとっくに死んでたわ。

…なんだこの笑えないブラックジョーク。


くだらないことに思考をめぐらせていたら、魔物はもう目と鼻の先まで来ていた。

喉を鳴らして涎を垂らすその姿はどう見ても私のことを食料としてしか見ていない証拠で。


「せ、せめて優しく食べてね…」


届くはずもない願いを呟きながら、諦めて目を閉じる。

瞬間、ゴウッ!と台風みたいな風が吹いた。

周りにあった威圧的な気配が一掃される。

驚いて目を開けると、そこには15歳くらいの少年がその体躯に似合わない大剣を軽々と振り回している光景が。


え、何!?こわっ!?

いやもしかしなくても助けてくれたんだろうけど、魔物とは別の意味で怖い!

だって少年が剣振るう度に魔物が呻きながら溶けてくんだもん!


「ひぇ…」


そりゃ情けない声も漏れるって。

しかもどうやってるのか、私にはなんの被害もなく私の後ろにいる魔物だけ攻撃してる。どういう原理?


とはいえこの場所は自分に剣を振るわれてる様にも見えて気が気じゃない。

ひとつ間違えれば巻き込まれて即死だぞこんなん。


「××…、×××××××?」

「え?」


私が呆然としている間に片付け終わったのか、少年が怠そうに話しかけてきた。

けど、それは聞いたこともない言語。明らかに日本どころか私の知ってる地球にないもの。

当然、理解なんてできるはずもなく。


「××、×××××?」

「えっと…」


どうしよう、流石にここでお礼のひとつもなしっていうのは失礼だよね。

でも向こうの言葉が分からないなら、向こうも私の言葉なんて分からないだろうし…。


《××××世界の言語をインストールしますか?

YES NO》


おおう、ナイスタイミング。

天界にいた時同様現れた、空中の文字。

私は何やら苛立たし気な少年をこれ以上怒らせまいと、慌ててYESの文字に指を置いた。


《インストールを開始します。残り時間3秒です。3、2、1…インストール完了致しました》


「おい」

「ひゃい!」


怒気を孕んだ声に間抜けな言葉を返す。

でもさっきとは違ってちゃんと言語が理解できるから、そこは安心。


「助けて貰って礼も言えないのか?」

「あ、えっと…ありがとうございました。いきなりのことにびっくりして…すみません」


確かに助けて貰ったのは事実だけど、めちゃくちゃ偉そうな態度だな?

ちょっと、いやだいぶ感謝の気持ちが薄れた。

せっかく見た目はいいのに…日本で言う残念なイケメンタイプ。(命の恩人に失礼)


「ふん、まぁいい。それよりこんな所で何をしてた?ここは立ち入り禁止の危険区域だぞ」

「えっ、そうなの!?うわー、なんて場所に来てるんだ私」

「……知らなかったのか?」

「あ、はい。この世界…じゃなかった、この辺りに来るのは実は初めてで。正直、右も左もわかりません」


必要な嘘を混ぜつつ答えれば、信じられないという表情と共に、それはそれは深い溜め息を吐かれた。

しょうがないかもしれないけどめちゃくちゃ腹立つ。

命の恩人?知ったことか。礼儀のなっていない餓鬼は嫌いなんだ!


「…街まで案内する。着いてこい」

「あ、ありがとうございます…」


前言撤回。生意気なだけで、礼儀はあるのかも?


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