表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヘッドホン

作者: マフマフ

好きな音楽で耳を塞ぐ。


自分の好きな世界に身を浸し、歩き出す。


外の世界から聞こえる音は、ささやかな雑音。

おばさんたちの、笑い声の断片だったり、

車のエンジン音だったり。


聞く必要のない音たち。


聞く必要ないと、思っていた音たち。


9月、日が落ちる時間が、早くなったことを、

瞳で感じた。


秋だと感じた。


耳は、曲と曲との空白に差し掛かっていた。

空白の、少しの間に、普段聞きなれない、

雑音が混じった。


なんだか気になって、

思わず耳を外気に触れさせた。


「ピーヒャラ、ピーヒャラ」

「わっしょい、わっしょい」


お世辞にも、大きいとはいえない、みこしを、

何人ものおじさんが、掛け声をかけながら、

担いでいた。


曲と、曲の空白がなかったら、

曲の途中だったら、


気がつかなかったかもしれない。

音から感じる季節の変わり目。


それから、

音楽を切った。


外には、いろんな音があふれている。


靴の奏でる足音は、

人によって違うことに気づいた。


道路を横切るときは、

わざわざ後方を目視しなくても、

エンジン音が聞こえなければ、

横切れることに気がついた。


炊飯器は、

意外にも、ゴボゴボいいながら

ご飯をたいてるし、

炒め物は、いためるものによって

音が違う。


音楽にはない、

音が、聞こえる。


それでも、

自分の好きな音楽で、

耳を塞いでしまいたいこともある。


自分だけの好きな世界に、

入り込んでしまいたいこともある。


9月の夜のこと。


大音量の音楽が流れるヘッドホンを

外してみた。


涼しげな、

スズムシの音色が聞こえた。


たくさん聞こえた。


それは好きな音だった。


スピーカーからは、

小さく、私の世界が流れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 表現の仕方が詩的で素敵です(>_<)! 音から伝わってくる季節感……何気ない音も愛おしく思える様なエッセイですね。読後、思わず耳をすませてみたりしてしまいました^^;
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ