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転生した勇者が、同じく転生した魔王に世界を救えと催促される件について(仮)  作者: ふぉるてっしも
元勇者は転生しましたけど、田舎で靜かに農業をしていたい件につてい(仮)
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第五話 全盛期の数倍な件について(仮)


「はあ、とりあえず。こんなもんだろう。でも、お前、これで本当に石化が解けるんだろうな?」

「ええ。私のメデューサの魔眼は自然力によって少しずつ解かれていくわ」


 場所は村のはずれにある高台、そこに俺は石になってしまった聖騎士三人を運び出した。

 しかも一人で。

 村の人間の目をかいくぐるために持っている振りをしながら適当に重力魔法で重さをなくして運んだから疲労はほとんどないわけだが・・・。


「ってか、なんで俺が全部運んでんだよ! お前のせいじゃねえか?!」

「半分はヒカルのせいじゃない!」

「はあ……」


 ――駄目だこいつ。


 この俺の隣にいる元魔王の目は、魔眼である。まさかそれが転生した後も効力を持っていたとは驚きだが、しかしまさか催眠解読魔術によって開眼されてしまい。聖騎士様を見事に石化してしまったのは予想外過ぎる。


 ――ああ本当に頭痛い。これからどうすんだよ……。


「それで、こいつらが目を覚ますのはどれくらいなんだよ?」

「そうねえ……」


 シャルは指を折って数え始めた。

 それは、右手の五本を超えて、左手の二本まで折ったとことで止まる。


 ――七本ってことは七日間か、長いな。しかし、あの魔王の魔眼だ。短いほうか……。


「七百年かな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 俺は驚きのあまり言葉を失った。

 そして、相手の言葉をもう一度、確認するために今度はゆっくりと聞きかえす。


「七日間かなー?」

「いや、だから七百年」


 ――はああははおははおはあはあっはっははっははあははいあ!!!!!!!!!!


 ――何いってんのこの子、意味わからないんですけど?!


「まあ、千年にはいかなかったから、よかったわね」


 ――怖い怖い怖いわい! 良くねえよ! 死ねよ!


 え? なにこれ、何かの冗談なの? 魔王ジョークってやつなの? それとも俺がおかしいの?

 その後も、本当ならゼロが一個増えるところだったとか、相手が聖騎士じゃなかったらおそらく死んでたとか、もしかしたら、このままずっと石のままの可能性があるとか言ってたけど、全部俺の耳を左右に流れていった。


 ――ああ、もう駄目だ。終わりだ。俺の平穏な生活がああああ。


「どうしたのよ。ヒカル、まるでこの世の終わりみたいな顔してさ」

「終わりだよ!!」


 俺はシャルにつばが届く距離で叫ぶ。

 これだから常識のない子は嫌いなんだ。俺も勇者時代、どれだけの常識はずれたちと戦ったり、共に冒険をしたことか、本当に辛い記憶だぜ。この世界ではそんなことはないと信じていたのに!


「ちょっと、なんなのよ!?」

「お前、人間の寿命がいくらか知ってるか?」

「そんなの知っているわよ。長くても百年でしょ? 短いわよねえ」

「そう、長くても百年だ。そして、こいつらが石になっている時間が?」

「七百年よ」


 シャルはそれがどうしたという顔をしている。もうやだこの子、全然理解してくれてない。早くおうちに帰りたい。


「俺たちも人間だよな? 俺は元から人間だからあれだけど、お前は魔物から人間になったわけだよ」

「ええ、そうね」

「ってことは、俺もお前も百年くらいで死ぬんだよ」

「そりゃそうよ。人間だもの……!!」


 シャルの顔が面白いくらい変わる。

 うん、理解してくれたみたいでお兄さんうれしいよ。


「そう。いくら石化中に生命の進みが進まないといっても、この聖騎士たちが目覚めるころには俺たちはもちろんのこと、この世界だってどうなっているかわからないし、そもそもこの石、雨風にさらされたら絶対に七百年も持たないよね?」


 俺はシャルに畳みかける。

 俺の言葉を一通り聞いたシャルは視線が遠くなっていく。


「わかったか?」

「まあ、世は徒然……、運命っていうのは残酷よね」

「お前がな!」

「この三人も、これから立ちはだかる宿命に立ち向かわなければいけないのよ」

「向かえないけどな」

「私はこの三人を心の底から応援するわ」

「心の底から詫びろ! このポンコツ魔王が!」

「ああ! もううるさい! やってしまったものは仕方がないでしょ!!」


 シャルが、地団駄を踏む。しかもかなり本気で。

 やめて! この高台が崩れちゃうから! そしたらこの三人粉々になっちゃうから!

 俺はシャルの肩を抑えて落ち着かせる。

 正直この手は使いたくなかった。いや、本当にやりたくなかった。

 なぜなら、力を使えることはシャルに知られたくなかったからだ。



 俺の力の中心は加護の力。

 人々からの祈りや想い、想念と呼ばれるものによって俺の力は強化される。この力はどの力よりも上位である。

 それと対となる力が、元魔王の持つ力である畏怖の力。

 加護とは違い恐怖や不安から得る力だ。これは人々の悩みや苦しみ、痛みによってその力が増すことになる。

 つまり、俺はこの世界では勇者ではないので、いくら加護の力を持っていたとしても意味がないと思っていたわけだ。

 ところがどっこい、そうではなかった。

 異世界からの想念でもその力は効力を発揮するらしく。俺は元居た世界では勇者から英雄、さらに賢者まで上り詰めている。これはあの憎き魔王を倒したからだ。

 それにより俺の力は全盛期よりも下手したら数倍くらいはありそうな勢いだ。


「はあああああ」


 俺は深いため息を漏らす。

 全盛期よりも強くなった俺の力、おそらく今の元魔王が放った魔眼の力くらい打ち消すことができそうな予感……。

 だが、この元魔王の力も健在。この世界では俺たちが居た世界同様に混沌が満ちているらしいからな。こいつの力の栄養源はいっぱいだ。

 俺はシャルから離れて、石と化してしまった聖騎士に近づく。かわいそうに。せっかくの金髪オールバックが台無しじゃないか。いや? このほうが髪が乱れないからいいのか? もしかして元に戻さないほうがこいつらも幸せなんじゃない? 

 などと思いながら手を祈りのポーズにする。

 できれば成功して欲しくない気持ちも半分くらいある。これを見られればシャルのやつは確実に調子に乗る。

 だが、俺も元勇者だ。ここでこいつらを見捨てるわけにはいかない。

 俺はもう一度、大きなため息を漏らした。


「我、英雄にして豪傑、汝らの魂を救わせたまらん……」


 詠唱により、俺と聖騎士の周りの地面に大きな魔方陣が出現して発光する。少ししてそれが収まった。

 俺は聖騎士に視線を向けた。


 ――はあ、マジかよ……。


「わ、私たちは何を?」


 残念なことに、魔眼の力を解除することに成功してしまったらしい。


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