プロローグ
最近幽霊を見るようになった。
初めは同じ制服だし違うクラスの子かなって思ってたけど、明らかに普通じゃない。透けてるし。
私の通学路、必ず後ろを歩いている。
振り向くとニタァと笑って私を見ているだけ。
「なんのようですか?」
聞いても笑って私を見ているだけ。
ひたすらに、ずーっと。
授業中も、授業参観中の保護者みたいに後ろで立って私を見ている。テストを返してもらう時なんか、点数が悪いといつもの倍以上に憎たらしい笑みを浮かべる。本当に腹がたつ。
初めは先生や友達に言ってみたが、熱があるんじゃない?と馬鹿にされて終わる。
誰にも信じてもらえないから、腹立つけど気にしない事にした。
何故かこの幽霊が見えるのは朝から、夕方にかけて。大体放課後には居なくなってる。幽霊のくせに夜出てこないのはおかしな話だ。
「優衣帰ろう!」
「ごめん!今日は瀬戸くんと帰るの」
「また瀬戸?お熱いね〜!じゃ、お幸せに」
そんな私にも付き合って一ヶ月の彼氏がいる
隣のクラスの瀬戸翔太くん。
カバンを持って隣のクラスを覗きに行くと、瀬戸くんが友達と楽しそうに話している。ちょっとだけ声かけづらいな…
「あ、優衣ちゃん!ごめん、帰るね。また明日」
教室を覗いてる私に気付いて、出てきてくれた。申し訳ない事をした気分になる。
「ごめんね、大丈夫だった?」
「大丈夫、明日も会うんだから」
そう言って笑ってくれる、この笑顔に一目惚れしちゃったんです。
たとえ毎日幽霊に馬鹿にされも、私には瀬戸くんが居るから平気
帰り道、他愛もない話をしながら歩いてる。付き合って一ヶ月まだ手も繋いだ事もない。そろそろ何かアクションを起こしてくれてもいいんじゃないかなぁ
「あの、優衣ちゃん」
真剣な顔をして呼ばれるから、期待しちゃうじゃん
「何?」
「付き合ってもう一ヶ月ぐらいたつじゃん」
「そうだね、早いね!」
「言っておかなきゃいけない事があって…」
「…何だろう」
風向きが思わしくない、瀬戸くんの表情はなんとも言い難い事を今から言います!と言った顔で…
付き合ってみてなんか違うから別れよう、とかだったらどうしよう…
「実は俺、忘れられない女の子が居るんだ。」
冗談なんかじゃない、その言葉に鼻の奥が熱くなる。確かに瀬戸くんから何もアクション起こしてくないし、付き合ってって言ったのも私からだったし、そりゃそんな女の子が居たら私に何もしようと思わないよね。
「そう、だったんだ。ごめんね、無理やり付き合ってもらってたんだよね!」
泣くのはズルい、私は出来るだけ笑顔で言った。
帰ったら泣きまくろう。
「いや、そうじゃなくて…」
「何年も前の話にはなるんだけど、その女の子事故でもう亡くなっちゃってて…。いつまで引きずってるんだって話だけど、すごい好きな人だったから…。ただ、それでも前に進まなきゃって思って、優衣ちゃんと付き合ったんだ。もちろん優衣ちゃんの事は大好きだし、大事にしたいって思ってる。だからこそ、こんな気持ちのまま付き合っていいのかなって…」
その時の私は妙に感が冴え渡っていた。
「その子の写真とかあるの?」
「ごめん…消さずに携帯に残ってる」
「見せてもらってもいい?」
そんなに好きだったんだ、とかそんな事を思う前に確かめたい事があった。私は写真を見せてもらう。
「…やっぱり」
「ごめんね、いい気持ちはしないだろうけど…消せなくて。」
「ううん、これでスッキリした!正直に言ってくれてありがとね?私はそれでも瀬戸くんが好きだし、それを乗り越えてでももっと好きになってもらいたい!」
瀬戸くんと付き合って一ヶ月、幽霊が見えるようになって一ヶ月、そして写真を見ていま確信に変わった。
私に見えてるのは、瀬戸くんの元カノだ