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奴隷ゾンビを作って最強を目指そう!  作者: 江保場狂壱
第5章 奴隷ゾンビを最初に作った人に会いに行こう
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寝ぼけた代償

「ふぁぁ……。トイレ、トイレ」

 夜中、タケルはノブレスの屋敷の廊下を歩いていた。

 トイレに行くためである。結構広いためいまだに迷うことがあった。

 それに屋敷は暗く、明かりはない。

 一応、コンフィアンスやピュール、アムールとアグリも住んでいるが、

 それでも部屋数は多く、迷路のようである。

 なんとかトイレの場所にたどり着き、用事を足す。

 そして自分の部屋に戻ろうとした。

 ベッドの上に倒れこむ。だがそこに異物を感じた。

 いったい何が置かれているのだろうかと、タケルはそれに触れた。

 とても暖かく、柔らかい。甘い香りのするものだった。

 月夜に照らされその正体が判明する。

 ノブレスであった。自慢の銀髪ロールを後ろに束ねて寝ていたのである。

 するとここは彼女の部屋であったか。タケルの部屋とは隣同士なので間違えたようである。

 ちなみに奴隷ゾンビに睡眠は必要ない。だがストレス解消のために必要なのだ。例え苦痛を感じなくても今までの生活からかけ離れることはできない。

 それに怪物になる可能性もある。食事などもたまに食べることがあった。今まで食べたことのない物を食したりしている。

 タケルは慌てて立ち去ろうとした。だが右手をはっしと捕まれる。

 まさかばれたのかとタケルは焦ったが、ノブレスは寝たままだった。

 寝ぼけていたのである。

 タケルは懸命に外そうとするが、力が強く離れない。それどころかますます力が増していく。

 そして強引にタケルはベッドの中に引きづりこまれた。

 ノブレスは自分の腕をタケルの後ろに回し、逃げられないようにしている。

 それでも目を覚まさない。寝ぼけるにもほどがあった。

(こっ、これは~~~!!)

 タケルは抱き着かれて初めて気づいた。

 彼女は裸だった。下着を一切身に着けていないのだ。

 彼女のたわわに実った乳房がぺろりとさらされている。

 目に毒であった。タケルはあまりの恥ずかしさに爆発しそうになった。

「むにゅ~ん、えへへ」

 ノブレスはタケルに頬ずりした。まるで猫を相手にしているようだ。

「かわいいでちゅね~。コンフィアンス」

 相手はコンフィアンスなのかよ! タケルは心の中で突っ込んだ。

「いやそうな顔しないでよ~。もう、ほんとかわいいんだから~」

 ごろごろと甘えてくる。その様子だとノブレスは嫌がるメイドにまとわりついているようだ。きっとコンフィアンスは無表情のまま、心の中では毒づいているに違いない。

「えへへ、だめだめ~。心の中で舌打ちするなんて~。そんな態度を獲ったらノーちゃん泣いちゃうぞ~」

 主はメイドの思考を読んでいた。だが自身でノーちゃんと呼ぶとは意外である。普段は厳しく仕事をしているから、その反動で甘えん坊になっているのかもしれない。

「うう、早く逃げないと。これ以上ここにいたらすごく危ないぞ」

 タケルは困った。彼女の甘い香りは男の理性を消し飛ばしそうな威力がある。

 肌も珠の様にすべすべだ。ほどよい柔らかさを兼ね備えている。

 そんな彼女に抱き着かれて理性を保てるだろうか。

 否、無理である! 据え膳食わぬは男の恥というが、彼女は王族だ。

 手を付けたら王家が相手をしらみつぶしに探し、秘密裏に処刑するかもしれない。

 もっとも彼女の兄であり王代理だったアンサンセが暴君時代の時なら彼女を陥れる材料として受け入れていた可能性はある。今は父親のティミッドが執務をしているし、アンサンセの魂はタケルの骸骨、タケルトンに乗り移っていた。

 ばれたら処刑はされないだろう。代わりに結婚を要求されるかもしれない。

 奴隷ゾンビが子供を生めるかどうかは不明だが、明るい未来など待ってないのは間違いなしだ。

「えへへ~。タケルったらそんなことするなんて~」

 今度は夢の中にタケルが参加したようだ。いったいどんなドラマが展開されているのだろうか。不安しかない。

「も~、タケルったら~。ノーちゃんのおっぱい、そんなにおいしいの~。いいよ~、もっと吸っちゃって~」

 タケルは吹き出しそうになった。夢の中で何恐ろしいことをしているんだと、突っ込みそうになる。

「あん♪ そこ触っちゃヤダ~、くすぐったいよ~、えへへ♪」

 ノブレスはタケルに抱き着いた。とろけそうな笑顔である。口から涎が垂れていた。ちょっと人には見せられない光景である。

「もう、逃げちゃダメ~。こうしてやるぅ!!」

 バキバキっと骨が軋む音が聞こえた。

 ノブレスが力の限り抱きしめたのである。

 タケルは目を剥き、気を失ってしまった。


 ☆


「おはようございます。お嬢様」

 朝、ノブレスの部屋にコンフィアンスが入ってきた。主を起こしに来たのである。

「ふぁぁ。よく寝たな」

 ノブレスは朝の日差しに当てられ、目を覚ます。

 上半身をさらけ出して伸びをした。コンフィアンスはそんな主の奇行に慣れっこである。

「うーん、もう朝か……」

 ついでにタケルも起きた。タケルは朝まで気絶していたのである。

「おう、いたのかタケル。もう朝だぞ」

 ノブレスはタケルがいたことに疑問視していない。それどころか華麗にスルーしている。

「……お嬢様。なぜタケル様と一緒のベッドで寝てらしたのですか?」

 コンフィアンスは冷静に、そしてこめかみを引きつらせながら訊いた。

「ああ、昨夜タケルが間違えてベッドに入ってきたようでな。それでちょっとからかってやったのだ」

 その言葉にタケルははっとなった。昨夜のあれが演技だと言うのか? 甘えたような口調はみんなわざとだったのか!?

「ピュールがいつも言っていることを真似してみたのだが。まったく引っかからなったのはつまらなかったぞ。それにちょっと抱きしめたら朝までこうしていたというわけだ。少しは身体を鍛えた方がいいかもしれんな」

 ノブレスの告白にタケルは真っ白になった。

 惚けているタケルをしり目にノブレスはベッドから降りる。そしてコンフィアンスが下着を付け始めた。

「ノブレス様。本当に演技だったのですか?」

「嘘だ」

 ノブレスはあっさり認めた。

「本当はタケルが横にいてびっくりした。昨夜の私はきっと寝言を言っていたに違いない」

 ノブレスの顔が真っ赤になっている。彼女はタケルに対して嘘をついたのだ。

 何もかも知っている、演技だったと言い切ったのは嘘なのだ。

 戦場ではほんの油断が死につながる。突発的な出来事にも臨機応変に対応できなければ意味がない。

「安心しました。もしお嬢様がタケル様を誘っていたとしたら、私も覚悟を決めるところです」

「どんな覚悟か知らないが、受けて立つぞ。今日の朝食は何だ」

「ホットケーキでございます」

「そうか。おいタケル。早く起きろ。朝食がなくなるぞ」

 ノブレスは着替えを終えた。だがタケルはまだ向こうの世界にいる。まさに魂が抜けている状態であった。

 それを見てノブレスは鼻でため息をつく。

「やれやれ、薬が効きすぎたか」


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