ドーナツを広めた結果
タケルは子供たちと遊んでいた。ノブレスの屋敷の庭で子供たちを集めていたのだ。
現在ムナール王家が活動している。アンジォ教団がうるさいがやんわりと無視していた。
タケルは家族のいる者から浮浪児まで幅広く集めている。そしてみんなで仲良く遊んでいたのだ。
縄跳びをしたり、綾取りをしたり、かくれんぼやおにごっこなどで遊んでいた。
タケル自身も楽しんでいる。今まで母親の看病で遊ぶ暇などなかった。
だからタケルは今遊び直していた。ゲームとかはないが、みんなで一緒に楽しむのが大好きだった。
タケルはへとへとになっていた。子供たちも遊び疲れていたが、笑顔を浮かべている。
「さーみんな。おやつの時間だよ!!」
アグリが大声を上げた。子供たちは一斉にそちらに振り返る。
それは待ちに待っていたおやつの時間だからだ。
「さあみなさん、召し上がれ」
アムールとピュールは庭にテーブルが置かれ、テーブルクロスを敷かれている。
その上に大皿が三枚ほど置かれていた。
皿にはアツアツのドーナツが山積みになっているのだ。
砂糖をまぶした揚げドーナツである。
砂糖は貴族の伝手で手に入れたものだ。小麦粉も同じだ。
「わーい。おいしー!!」
「こんなお菓子、はじめて!!」
子供たちは手を油まみれにしながらも頬張っていた。
その様子を眺めているとタケルはうっとりとした表情になる。
「いい風景だな」
タケルはつぶやいた。
子供がお菓子を食べる姿は癒しである。見ているだけで心が温かくなった。
「だがいいのか?」
ノブレスが厳しそうな表情を浮かべていた。
「簡単にお菓子を与えるのはよくないな。子供たちがそれに慣れてしまい、他の食べ物を口にしなくなるかもしれないぞ」
その心配は織り込み済みだ。ムナール王国の現状を見て、タケルはきちんと考えている。
「大丈夫。それはきちんとコンフィアンスと一緒に考えていた。
僕は簡単にドーナツをあげたわけじゃない。労働の対価として与えたのさ」
実は子供たちと遊ぶ前にタケルは仕事を与えていたのだ。
ごみを集める、掃除をするなど命じたのである。
その対価としてドーナツを与えたのだ。
「週に一度簡単な仕事を与える。その後たっぷり遊んでドーナツを報酬にするんだ」
「なるほど。それならいいかもな」
ノブレスも納得した。親がいる子にはお土産を渡す。
そうやって都にドーナツを広めるのだ。
アンジォ教団が反発しているが、無視している。
この件は他の貴族たちも協力していた。ノブレスを中心に広がっていく。
それに貴族にもドーナツを試食してもらっていた。
これも貴族たちには大好評であった。この嗜好品をもっと広げたいと意気込んでいる。
アンジォ教団の不満が一気に爆発したと言えよう。
「いやー、おいしいね。もぐもぐ」
ピュールは子供たちと一緒に食べていた。
「こら、ピュール。それは子供たちの分だぞ」
「あら、アグリ。あなたも食べているじゃない」
アグリの手にもドーナツがあった。もぐもぐ食べている。
「大丈夫ですよ。ドーナツはまだまだたくさんありますからね」
アムールがお代わりを持ってきた。子供たちは大喜びである。
タケルはそれを見てほっこりするのであった。




