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奴隷ゾンビを作って最強を目指そう!  作者: 江保場狂壱
第4章 奴隷ゾンビを作って国を変えよう
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謎の剣士

「サタナスを呼び出すと言うのですか?」

 アムールが聞き返した。魔王を呼ぶなど前代未聞だと思っていたからだ。

 ここはタケルが作った町。タケルの自宅である。現在タケルは一週間ぶりに帰宅していたのであった。

 ティミッドが法を変え、都を自由に行き来できるようにしたからであった。おかげでタケルはひさしぶりの我が家に帰ることができたのである。

 もちろん問題はあった。アンジォ教団だ。勝手に町を作ったのが許せないと取り潰しを叫んだのである。ティミッドはなんとか口八丁で誤魔化してはいるが、その勢いは止まらない。

 タケルは奴隷ゾンビに変えた兵士たちを利用し、アンジォ教団が町に来れないようにしたのである。国王の命令に逆らうものは不敬罪だと言って、信者たちを次から次へと逮捕したのであった。

 さてタケルが帰宅したのは理由がある。本来はアンジォ教団の大司祭トキを奴隷ゾンビにするまで戻らないつもりだった。だがサタナスを召喚するために時間がかかると言う。その間にタケルのメイドであるアムールとアグリを迎えに行くことになったのだ。

「その通り。サタナス本人から直接問いただすのさ」

 アムールの問いにタケルが答える。

「魔王って簡単に呼び出せるものなのかい?」

 アグリが疑問を投げかける。それもタケルが受け止めた。

「簡単ではないらしいね。時期や召喚に必要な道具をそろえないといけないんだ。でも時期は占いによって数日後が吉と出たらしいし、道具もその日までに揃えられそうなんだ」

 そう。すべては初代抜魂術師サダのことを知るためである。そして大司祭トキが同一人物にしてもなぜそいつが今回の騒動を起こしたのか知る必要があるのだ。

「とゆーか、タケルさんは浮気者です。あたしらというものがいながら女性とおしゃべりするために仰々しいことするんだから」

 これはピュールだ。彼女はタケルの作った町を見たくて付いていた。きょろきょろと町を見回し、紙袋に詰まったドーナツを頬張っていた。

「でもこのドーナツは最高ですね。こんなおいしいものは初めて食べました。もぐもぐ」

「……タケル様。こちらはどなた様でしょうか?」

 アムールが訊ねる。あまりにピュールが馴れ馴れしいので気になったようだ。

「あたしはタケルさんの嫁です。あなた方は愛人ですか?」

 いきなり嫁発言と来た。しかも初対面の人に愛人呼ばわりと来たものだ。

 さすがにアムールとアグリはむっとしている。相手の無礼に怒り心頭のようであった。

「私は愛人ではありません! いうなれば魂同士が繋がった主と奴隷の間柄です!!」

 アムールがわけのわからないことを抜かし始めた。相当てんぱってるようである。いつもの冷静なアムールが暴走特急の如く突っ走り始めた。

「はぁ? 何小難しいこと並べているのよ。愛人なら愛人と素直に言いなさいよね。あたしとタケルさんはもうすごいことしちゃったんだから♪」

 ピュールはタケルの左腕に抱き着く。そして頬をすりすりとこすり始めた。

「ちょっとあんた! あんまりタケルにべたべたしすぎじゃない!? 第一すごいことって何さ!! どうせ、たっ、大したことないんだろ!!」

 アグリの声がずれている。彼女もかなり興奮状態であった。

「ふふん。聞いて驚きなさいよ。タケルさんはあたしの手料理を食べたんだから。もうあまりのおいしさで天国に行っちゃったくらいなんだからね」

 あの毒殺料理であの世に行きかけたのは本当だ。だがタケルは突っ込めずにいる。彼女の無垢な瞳に見つめられて心が折れない男はいない。

 ピュールは腕に抱き着きながらドーナツを食べていた。

「くっ、抱き着くか食べるかどちらにしなさいよ!!」

 アグリのこめかみが引きつる。手料理はアグリにとって痛手らしい。

 それを聞いたアムールは急に胸を張りだした。

「ふふん。手料理がなんですか。タケル様はあなたと会う前は私の手料理を毎日食べていたのですよ。しかも毎日同じ屋根の下で暮らしていたのですよ。三週間近くも!!」

 やたらと語調を強めている。それほどアムールにとって我慢ならないことなのだろう。

 しかしピュールはアムールを上から下へと見定めている。するとぷぷっと笑う。それにイラッと来るアムール。

「一緒に暮らしていたですって? 正直地味なイモ臭い格好の人にタケルさんが興味を抱くはずないじゃないですか~。どうせあなたなんか置物か、もしくは野菜としか判断してなかったんじゃないですか~」

 挑発しまくるピュール。なぜ彼女はこうも強気なのだろうか。たぶん何も考えていない。感覚で思いつくまま口にしているだけだ。

「おいおい。あんまり失礼なことを言うなよ。置物や野菜がかわいそうだろ?」

「あのそれってフォローしてませんよね。私のことを暗にけなしてますよね?」

 アグリの毒舌にアムールが食いつく。話が全く進まない。なんでこうなったのかさっぱりだ。

「……ピュール」

 彼女の後ろに声がした。野太い男の声だ。振り向くとそこには見るからに頑固おやじ風の男が立っていた。ピュールの父親テチュである。いつの間にか家に入ってきたようだ。

「せっかく親子の再会ができたというのにお前というやつは……」

「げっ、父ちゃん!!」

「げっ、じゃない。お前は相変わらずだな。人様に向けて顔が出せんよ。さっさと来い」

 テチュは自分の娘の襟を引っ張る。そのままずるずると引きずっていった。

「いや~~~ん! あたしはタケルさんと一緒にいたいのに~」

「お前は少し道徳を教えないといけないな。都では仕事にかまけていたが、こちらではきちんと躾けてやろう。母さんも一緒にな」

 テチュはタケルに挨拶した後、娘を引っ張る。

 こうしてピュールは頑固おやじに連れていかれたのであった。

「え~~~ん!! 覚えてなさいよ~~~!!」


 ☆


「やっとうるさい人が消えて何よりです」

 コンフィアンスである。彼女は四人の絡みに参加せず遠巻きで見ていたのだ。

 四人ともソファーに座っている。タケルの隣にコンフィアンスが、アムールとアグリは向かいのソファーで座っていた。

「うるさい人って……。もう少し言い方があるんじゃないかな?」

 タケルは注意する。確かにうっとうしい部分はあるが彼女は仕事仲間だ。

「申し訳ありませんでした。訂正します。うざい人が消え去って何よりです」

「変わってないよ! しかも言い方がひどくなっているよ!!」

 タケルの命令で人の悪口は言えないはずである。なのになぜコンフィアンスの毒舌はさらっと出たのだろうか。

「おそらくは本人が悪口だと自覚していないからではないですか? 他人には悪口に聴こえても本人は褒め言葉として使っている気がします」

 アムールである。彼女は先ほどの会話からそう判断したのだ。先ほどのアグリの言葉も悪意はなく、好意として出たのかもしれない。

 悪口や陰口は相手を陥れて楽しむものだ。ほめ言葉として使うならお目こぼしになるのかもしれない。

「申し遅れました。初めてお目にかかります。コンフィアンス・サージュと申します。ノブレス様の屋敷に仕えるメイドです」

 ちなみにノブレスは来ていない。タケルトンが護衛をしているし、新しくメイドを雇うことができたのだ。妨害がなくなったおかげである。

「初めてお目にかかります。コンフィアンスさん。アムール・セルヴァントです。タケル様のお世話をしております」

「どうも初めまして。アグリ・キュルトゥールだよ。タケルの世話係をしている」

「ちなみに先ほどのピュールさんの姓はムニュイジエです。テチュさんの実の娘ですよ」

 コンフィアンスが補足すると、アムールとアグリは驚いた。よく頑固者のテチュからあんな娘が生まれたとは意外である。

「ところでコンフィアンスさん。姓がサージュということは、サージュ・サージュ様と縁があるのでしょうか」

「はい。サージュ・サージュは父方の祖父です。おじいさまにはいろいろ勉強を教わりました」

 礼儀正しく挨拶する。コンフィアンスは生まれはよいのだ。境遇さえ変わらなければいいところのお嬢様として育っていただろう。環境が彼女をささくれだつようにしたのかもしれない。

「ほっほっほ。フィアはまったく変わっておらんのう。安心したわい」

 そこにサージュ・サージュが現れた。

「ああサージュさん。ご無沙汰しています」

「ほっほっほ。タケル様、こちらもご無沙汰しておりました。元気そうで何よりです」

 サージュは主に挨拶を交わすと、孫娘にも声をかけた。

「ひさしぶりじゃな。お前の仏頂面に変わりがなく安心したぞ」

「おじいさまもまだ川を渡っていないようで何よりです」

「ほっほっほ。わしは金づちでな。川には怖くて入れんよ。それに死んだばあさんや息子たちはわしが来るのを拒んでおるでな」

「それはおじいさまの小うるさい話を聞きたくないからでしょう。私は好きですけどね」

 こうして祖父と孫娘の会話は終わった。さて本題に入るとしよう。

 サージュ曰く、アンジォ教団の大司祭トキとは会ったことがないのでわからないと言う。そもそも現在何歳なのか不明なのだ。

 フラメル商会の会長、ニコラ・フラメルも似たようなものらしい。ただこちらは代々名前を世襲しているそうだ。十数年に一度は会長交代を従業員の前で行うらしい。現在は三代目だと言う。

 初代抜魂術師サダの正体はよくわからない。百年前にそんな人物がいたのは確実だが、詳しい資料はまったく残っていないのだという。当時は城の方でも被害が上がり、図書館の貴重な本が焼失したというのだ。

 ただサダがトキに成りすましているのなら話は別だ。サダの方は百年前の人物なので知る人はいない。だから現在抜魂術師が存命しているなど知る由もないのだ。

「相手が抜魂術師ならばなぜ自分で行動を起こさないのでしょうか。なぜわざわざムナール王国を戦乱の渦に巻き込むようなことをするのだろうか。その謎が解けない限り、トキとフラメルを奴隷ゾンビにしても解決しないと思いますぞ」

 サージュの言葉にタケルはうなずく。すべてはサタナスを召喚してからだ。彼女からすべてを話してもらうのが一番のに近道である。

 一同が考え込んでいると、家に何者かが入ってきた。

 そいつは剣をぎらつかせて立っていたのである。

今回はピュールの絡みで使っちゃいました。

本当はもっとキリよく進むはずだったのですが。

アクセスは励みになります。ありがとうございました。

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