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奴隷ゾンビを作って最強を目指そう!  作者: 江保場狂壱
第3章 高貴な人を奴隷ゾンビに変えよう
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うさぎがいっぱい

 タケルは町に戻った。そしてその足で図書館へ向かう。館長であり相談役であるサージュ・サージュに会うためだ。

 さて石造りの図書館に入ると中に二人の女性が本棚に向かって作業している。

 ブラン・グルーとヴェール・トルチュだ。

 二人ともバニーガールの姿で山積みの本を運んだり、書類とにらめっこしたりしていた。うさ耳のヘアバンドを揺らし、お尻のしっぽをふりふりさせながら働く姿は喜劇にしか見えない。

 ちなみに白いほうがブランで、黄色い方がヴェールである。

「……あのブランさんにヴェールさん?」

 タケルたちは唖然となっていた。ブランはけだるそうで、ヴェールは少し恥っている。彼女の胸は平坦だ。

「おやタケル様いらっしゃいませ。本日はどのようなご用事ですか」

 ブランはペンを持つ手を止めた。彼女の胸は豊満である。

「あの、二人ともどうしてそんな恰好をしているのですか?」

「そうだよ。すごい色っぽいな!! どこで手に入れたのさ!!」

 タケルの言葉を遮り、アグリが喰いついた。

「私は制作しました。昔は服をよく作っていたのです。これは貴族のパーティで給仕が着る衣装ですね」

 ブランが答えた。バニースーツは異世界にもあったのかと感心する。

「それほしい! あたいも着てみたいな。それでタケルに色っぽいあたいを見てもらうんだ」

「了解しました。あとで寸法を測りましょう。アムールさんもいかがですか?」

 話を振られ、アムールは戸惑った。

「わっ、私は無理です!! こんな身体の線がはっきりとわかる服など着られません!!」

 バニースーツは身体の線がくっきりと出る。女性はワンピースよりビキニを好む。体の線が知られるより、肌を露出させたほうがマシなのだ。

 アムールは無理だと断るが、ヴェールが知らぬ間に後ろへ回り込んだ。

 そしてメジャーを取り出し、アムールの服の中から寸法を測りだす。

「うふふ。アムールさんの身体はすてきですね。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでます。あなたも恥ずかしい思いをすればいい!!」

 ヴェールの眼が据わっている。彼女は自分の意志で着たわけではないようだ。

「そうなのか。よーしアムール負けないぞ。どっちが色っぽいかタケルに決めてもらおーぜ!!」

 アグリは妙な対抗心をむき出しにしている。ブランは微笑ましく笑った。

「いや~~~!! 測らないでください~~~!!」

 館内ではアムールの絶叫が響いた。


 ☆


「いったい何をしているのですかな?」

 サージュである。目の前にはタケルたちが正座していた。図書館で騒動を起こしたからである。

「ごめんなさい。ぼくはみんなが騒ぐのを止められなかった」

「いきなり結果だけ言われても困ります。理解できません。きちんと理由も教えていただかないとわかりにくいです」

「ブランさんの作ったバニースーツにアグリさんが目を輝かせた。

 それでアムールさんも一緒にということでヴェールさんが無理やり身体を測りました。それが騒動の原因になったのです」

 サージュは納得した。

「うむ。非常にわかりやすかったですぞ。厳しく言いすぎましたが、タケル様には期待しておりますので」

「ありがとう。そういってもらえるとうれしいよ」

 これで話は終わりである。さて本題に入ろう。

 タケルはノール村での出来事を話した。

 プルミエとスゴンがイラ・カヴァーロに変化したこと。そしてアンジォ体操のことを話した。

 それに村に住むアポー・ファナティックという老人のことも話す。

 サージュはそれを聞いて頷いた。

「まず魔王サタナスは五百年前にムナール王家が作り上げた宗教です。当時はデウザ教といって女神デウザを崇拝しておりました。それに対抗するために作られたそうです。

 魔王崇拝といっても悪徳を賛歌するのではありません。あくまで悪魔を祀ることで逆に厄払いをする意味合いがありました。

 ムナール王家はその際にサタナスの配下である怪物を作ったのです。穢れた魂を喰らうことでその人間の魂を浄化してくれる。そんな怪物ですね」

 タケルの世界でも京都では祇園祭で疫病神である牛頭天王を祀っている。

 怨霊だからこそ祀るのだ。サタナスも同じだろう。

「そういえばサージュさんは最初サタナスのことを疑問視していたよね。どうしてかな?」

「それは私が体験していないからです。私は実際に見た物しか信じません。私が物心を付くころには奴隷ゾンビはいなかったし、話を聞いても誇張ばかりで要領を得ないのです。

 それに百年前デポトワールは戦乱に明け暮れていました。そのためサタナスのことをプロパガンダみたいなものだと思っていたんです。

 ですがそれは本当だった。タケル様は私の目の前で抜魂術を施したのです。ですから伝承は正しかったと判断したのですよ」

 なるほどとタケルは思った。サージュらしいとも思う。

「さて天使憑きのことですが、これは霧散せずに固まった人の魂だそうです。人は死ねば体から魂が出て霧散するという。稀に固まったままの魂があり、それが幽霊やゾンビの元となることがあるのです」

 この世界での天使はタケルの世界のものとは違うようだ。

 さて天使憑きの条件がよくわからない。フェアネンは現状に不満を抱いていた。プルミエとスゴンも同じであろう。

 だが彼らよりもっと不満を抱く人間がいてもおかしくはないのだ。

 オネットとシャルルは今まで高い地位にいたのに、六十歳になったからといって捨てられたのだ。それなのに彼らは恨み言を言わず魂が浄化され木に変化した。

 サージュは自分を捨てた人間たちに復讐心を抱いている。なのに怪物になる徴候は皆無だ。アンジォ体操がきっかけになったのかもしれないが、まだ秘密があると思われる。

 サージュはさらに調べを進めてみるという。タケルは現状を維持するように指示された。奴隷ゾンビを増やし、子供たちに教育を施す。それが最優先事項なのだ。

 

 ☆


「申し訳ありませんでした。悪ふざけがすぎてしまいました」

 ブランが謝罪した。相変わらずバニースーツを着たままである。頭を下げた拍子に大きく開いた胸元が広がる。

 まるで乳の大海原であった。下手にはまれば溺れ死ぬ。まさに魔の海域である。

「私も同罪だね。こんな恥知らずな恰好をさせられて頭がどうかしていたよ」

 ヴェールも頭を下げる。こちらは断崖絶壁であった。室内に風が吹き、すり抜ける。

「タケル様。あまり胸をじろじろ見ないでくださいな。六十過ぎとはいえ恥ずかしいですわ」

 ブランがおどけて言った。からかい半分が入っている。タケルは慌てて顔が赤くなった。

「ごごご、ごめんなさい!! あまりにもきれいなものだからつい見とれてしまって」

「見とれるのは構いませんが、年寄りをホメても何も出ませんわよ。どうせならそばにいる方をホメてくださいな」

 ブランにからかわれ、耳まで赤くなる。

 いつの間にかアムールとアグリの姿がない。いったいどこにいったのだろうか。

「あたいはここだよ!!」

 館内に大声が響き渡る。タケルの目の前にバニーガールが一人現れた。

 赤いバニースーツとうさ耳をつけている。アグリだ。胸は平坦だが網タイツに包まれた足に注目する。すらりと伸びた健康的な足だ。ハイヒールと共に蹴られたら悶絶すること間違いないなしである。

「アグリ。いったいその恰好はなんだい?」

「ふふん。ブランさんが用意してくれたのさ」

 いったいいつ用意したのだろうか。もしかしてこの日のためにこっそり準備していたのかもしれない。ブラン、恐るべし!!

「で、どうよ。この姿。あたいを見て興奮してくれた?」

 アグリが積極的に迫ってくる。服装が違うだけでこんなにも印象が変わるのかとタケルは頭がくらくらになった。

 アグリは胸を押し付けてくる。平坦だがほどよい山になっており、当てられるとほのかな熱を感じた。女性特有の柔らかさと、甘酸っぱい香りに刺激され、目が回り始める。

「さあ、アムールさんも参戦してくださいな」

 ヴェールに引っ張られ、アムールが出てきた。

 彼女は黒いバニースーツだ。こちらは豊満な胸があふれ出そうである。ブランには及ばないが若さあふれるパワーを感じた。

 熟する前の実である。ブランは熟れ切ったところだ。

「あっあの、タケル様。変では、ないでしょうか?」

 たどたどしく訊ねるアムール。タケルは熱に浮かされたようにぼーっと眺めていた。それは美の女神が目の前に降り立ち、見とれるような感覚である。

「う、うん。似合っているよ」

 当たり障りない答えだが本心である。実際タケルの眼はアムールの身体にくぎ付けであった。胸元の開いたスールに、足は網タイツで覆われている。露出は少ないがその分色気に包まれていた。

 アグリはそれを見て不満そうに膨れた。タケルの右腕を組み、胸を押し付ける。

「タケル~。あたいのほうが似合っているだろ? あたいってば健康的なのが取り柄だけどさ。男はそういうのが好きって聞いてたぞ」

 アグリの積極的な攻勢にアムールの火が付いた。左腕を組むと、その胸をぎゅっとタケルに押し付けたのである。

「わっ、わたしのほうが似合っています!! いえ、似合っていると思います!! あうぅ、似合っていると思いたいですぅ!」

 アムールの頭は混乱している。誘惑したいけど、奥ゆかしい彼女は本能を晒せない。頭上で天使と悪魔の激しい攻防戦が繰り広げられていた。

「あたいのほうがいいだろ!?」

「私のほうがいいと思います!!」

 二人のバニーガールに囲まれ、タケルは夢心地であった。元の世界では味わえなかった快楽である。まるで船酔いになった気分だ。

 その後再びサージュに叱られ、数刻正座させられたのはいうまでもない。


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