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11 おしまい

本日、10話、11話 2話分を更新しています。

 




 それから――1年が経ちました。



 “神の花嫁”のナオは、今も森の中の神殿で暮らしています。


 王子はというと、国の呪いも解け、アイリも居なくなった今、あらゆる国の姫や貴族の娘が后候補にあがっているそうです。しかし、ナオという少女の美しさとこの1年で知った彼女の人柄にすっかり心を奪われてしまった王子は、ほかの后候補が霞んで見えてしまいます。


 騎士はというと、ナオに全然覚えられていなかった事が未だに忘れられず、ナオの護衛の候補に出る始末。ナオには国一番の魔術師と、神が近くにいるので、なんの心配もないらないのですが、神殿の入口に立ち今日も神殿の平和を護っています。


 宰相はというと、仕事の鬼といわれた彼は、徐々に部下に仕事をまわすようになりました。「下の育成の為です」と時間を作っては神殿にやって来て、ナオとお茶を楽しんでいます。手土産に、ナオの好きそうなお菓子と小さなブーケを持って。もしかして、彼が一番侮れないのかもしれません。


 魔術師はいうと、相変わらず一日の半分は神殿で過ごしています。時々来る、王子や宰相、門番をやめない騎士を見ては「やはり、あの時に、もっと早くに隣国を煽っておけば」と独り言を言っていました。


 神はというと、やはり毎日のように、ナオの元に訪れ、愛の言葉を囁いては、ナオに邪険にされていました。そして、それを喜んでいるのです。





 それから、何年かたったある日の事。



 ナオが、やっとの事で成功し始めた納豆作りに取り掛かってると、手にした藁で指を切って(・・・)しましました。


「痛っ……」


 血が、ポタン。ポタン。


「!」



 いつものようにやって来た魔術師は驚いて、慌ててハンカチを傷口にあてました。そして、目を見開いてい固まっているナオを見て、とても心配そうです。



「…痛い」



 ナオは、少し切れた指をじっと見つめていました。傷はすぐに消えず、そこにあるまま。“神の花嫁”として生かされた時には、傷一つ負えなかった身体に“小さな傷”。



 ナオも知らない事実。


異世界へ渡った時、赤ん坊に魂を宿した事により力を遣い果たした神の花嫁の魂は、神の“加護”の力が弱まっていっている事を。


 アイリの加護が消えた時に、神はこう言ってました。


『愛しのそなたの願いなら、叶えたいのだが…一度与えて、消えた加護は二度(・・・・・・・・)とかからぬ』


「神の花嫁」とは、孤独な心を癒すため神が生涯に一度だけかける事の出来る“神自身の祝福” 神は、ナオにその生涯の一度をつかったのです。


 そういえば、心当たりはいくつかありました。

あれだけ伸びるのが早かった髪も、その速度を緩め、少し身長も伸びた気がします。


 ナオの頬は、上気してバラ色に染まり、心臓の音がトクトクと打ち立てました。

 そんなナオの様子に、魔術師は不思議そうに見つめます。


「ナオ様?」


 ずっと、この世界に来てから側にいてくれた魔術師。


 ナオは微笑んで、ハンカチをあてている魔術師の手を、もう片方の手で大切に包み込みました。



「魔術師様、聞いてもらえますか?」









 神がナオが“神の花嫁”で無くなったと気付くのは


  もう少し――先の話。





 










ここまで読んで下さってありがとうございました。

想像以上の方に読んでいただき、感謝しております。


次回は「あとがき」を更新予定です。

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