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神寄せの噂

その日は、落ち込んでしまった直彦を自宅まで連れて行き、そのまま自分も自宅への帰路についた。


自宅は都心から少し離れたところにある。

学校がある新宿から電車で20分、といったところだろうか。

今日は直彦の家のほうに回ったので、それより少しだけ時間がかかった。


駅前の商店街は、都心から離れているとはいえ、いつも活気がある。

今は夕方少し前。夕食の買出しを始めた主婦や、今が売り時と声を張る店の人の声であふれていた。


いつもなら、声をかけてくれる魚屋の店主や兄がひいきにしているバーのマスターなんかにも挨拶をするのだが、いかんせん今日はそんな気分にもなれない。

少し沈んだ表情で、商店街を抜けていく。


しばらく進めば住宅地。集合住宅もあれば、一軒家もある。

子供たちが遊ぶ声もまだしている。

道端には話に花を咲かせる女性たちの姿もある。

いつもの風景。

でも、どこか褪せている。

この住宅地にあるマンションが自宅だ。

現代的な造りのマンションで、温かみのある色合いが特徴だ。

都心から離れるとあまり見ることはない、7階建てのそれは住宅地の中では少し目立つ。

そこの5階の1室を長兄の名義で借りている。

オートロックのロビーを抜けて、とりあえずポストを見る。

カチャン、と金属音を立てて口を開けたポストの中には、長兄宛てのはがきや、自分の双子の兄がいつも通販で使っているサイトからのダイレクトメール、それから電気料金の明細書が入っていた。

それを手に持ち、エレベータに向かう。

2基あるそれの真ん中にある上を向いたボタンを押すとほどなく左側のエレベータが到着した。

それに乗り込んで「5」のボタンを押し、扉を閉じる。

無機質な運転音を響かせながら5階へと上っていくエレベータの中、先ほどの文を思い出した。


『死を受け入れよ。さすれば花園へと辿り着く』


『死』

そのワードが妙に鮮明に残った。

憂鬱だ。やはりこの言葉は。

そんなことを考えているうちにエレベータは5階へと辿り着いた。





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