「悪魔な天使」
「吹き抜ける風」「雲のない青空」「一面の花畑」僕は今小高い丘の上に立ち、この三つを感じている。
「よく来た、よく来た、さぁ、丘を下り、あの綺麗な花畑へ行こう」
耳元で囁く声がある。
その声に導かれるように、僕は、花畑へと歩んで行く。
歩き始めてすぐに、また囁きが聞こえて来た。
「あの花畑、悪い心の持ち主が、一歩足を踏み入れると、たちまちあの綺麗な花が一斉に枯れてしまう、あの場所は、心を写すとされる場所」
その声に戸惑うように、僕の足がピタリと止まる。
「悪い心・・・」静かに呟き、下を見つめたのち、ゆっくりと目を閉じる。
生まれてから今まで僕はいくつの悪い事をしてきたのだろう?
その事により、もしかしたら、僕の心は悪へと変貌してしまっているのかもしれないと思った。
「さぁ早く、あの場所へ」背中を押すように声が聞こえる。
一歩を踏み出す勇気のないまま、気が付くと僕は、後へと駆け出してしまっていた。
後へと駆け出す最中、その者の姿が目に飛び込んできた。
僕に囁いて来た者の姿、背中には羽根があり、体全体金色に輝く直径10cm程の小さな天使であった。しかし顔は別である。
顔は黒く目は釣りあがり、悪魔の姿である。先程とは、口調が変わり悪魔な天使はこう言った。
「ちっ、せっかく花畑へと誘い込み、失望の概念を心に植え付けようとしたものを、花畑に入って花が枯れると、俺は完全に悪魔になれる、もし仮に枯れることない場合は、俺は天使になることが出来るがな、まぁ人間は汚い生き物だから、まず天使にはなれないと思うが・・・、わしが天使になるか悪魔になるかは、おまえの心次第、お主、心を試してみる勇気はあるか?」
にやつきながら呟く。
「半分天使で、半分悪魔、まるで人間の心のようだ、人間の心にも善と悪があるように、天使になるか悪魔になるか、僕の心にかかっているというならば、今一度、勇気を出して、心を試してみよう」そう悪魔な天使に呟いて、僕は花畑へと歩んで行き、一歩を花畑へと踏み入れた。
その瞬間、鳴り響くベルの音で目が覚め、全てが夢だと気が付いた。
ぼんやりとした頭で、ふと思った、あの悪魔な天使は、天使になれたのか?それとも悪魔になったのか?
不思議な夢の結末は分からないが、僕は、あの悪魔な天使が、天使になれたと思いたい。
そして悪魔な天使にこう言いたい。
「人間も捨てたもんじゃないだろう」って。
読んでくださり有難うございます。
書きためた、たくさんの物語を、随時投稿していきますので、ぜひともまた読んでください。