まぶしい
ママのおなかには、あかちゃんがいる。
あかちゃんは、まだ外がみえない。だから、わたしがおしえてあげることにした。おなかに耳をつけて小さい声で話すと、ちゃんときこえるって、ママが言ったから。
「あのね、きょうは雨。雨はね、空がおそうじしてるの。おわると道がぴかぴかになって、水たまりに、もうひとつ空ができるよ」
「しんごうの『あお』はね、ほんとはみどり。でも、みんな『あお』っていうの。それがきまり」
「ねこはね、なでると、おなかの中でエンジンがかかるよ」
ママは、わらうとおなかがゆれる。そうすると、あかちゃんもわらってるんだとおもう。
パパは、ものしりだ。
「うまれたばっかりのあかちゃんはな、まだ目があんまり見えへんねん。明るいか暗いかが、わかるくらいや」
「じゃあ、わたしのおはなし、むだ?」
「むだちゃう。ちゃんと、ためとる」
ためとる、というのは、ちょきんのことだ。あかちゃんは、わたしのおはなしを、ちょきんしている。
三月に、あかちゃんがうちに来た。
小さくて、赤くて、ずっとないていた。ミルクをのんでも、おむつをかえても、パパがへんな歌をうたっても、なきやまない。
ママはつかれた顔で、まどぎわのベッドにあかちゃんをねかせた。おひさまがレースのカーテンをとおって、あかちゃんの顔にあたっている。あかちゃんはぎゅっと目をつぶって、もっとないた。
わたしは、わかった。
まぶしいんだ。
外はこんなにぴかぴかなのに、あかちゃんは、いっぺんにぜんぶ見ようとしてる。ためてたおはなしが、いっぺんに出てきちゃったんだ。
わたしは両手をおわんのかたちにして、あかちゃんの目の上にかぶせた。手の中に、小さいかげができる。
あかちゃんは、なくのをやめた。
「ほらね」と、わたしは言った。「ちょっとずつで、ええねん」
それから、ゆびを一本だけひらいて、ほそい光を、ひとすじ入れてあげた。




