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まぶしい

掲載日:2026/10/17


ママのおなかには、あかちゃんがいる。

 あかちゃんは、まだ外がみえない。だから、わたしがおしえてあげることにした。おなかに耳をつけて小さい声で話すと、ちゃんときこえるって、ママが言ったから。


「あのね、きょうは雨。雨はね、空がおそうじしてるの。おわると道がぴかぴかになって、水たまりに、もうひとつ空ができるよ」

「しんごうの『あお』はね、ほんとはみどり。でも、みんな『あお』っていうの。それがきまり」

「ねこはね、なでると、おなかの中でエンジンがかかるよ」

 ママは、わらうとおなかがゆれる。そうすると、あかちゃんもわらってるんだとおもう。


 パパは、ものしりだ。

「うまれたばっかりのあかちゃんはな、まだ目があんまり見えへんねん。明るいか暗いかが、わかるくらいや」

「じゃあ、わたしのおはなし、むだ?」

「むだちゃう。ちゃんと、ためとる」

 ためとる、というのは、ちょきんのことだ。あかちゃんは、わたしのおはなしを、ちょきんしている。


 三月に、あかちゃんがうちに来た。

 小さくて、赤くて、ずっとないていた。ミルクをのんでも、おむつをかえても、パパがへんな歌をうたっても、なきやまない。

 ママはつかれた顔で、まどぎわのベッドにあかちゃんをねかせた。おひさまがレースのカーテンをとおって、あかちゃんの顔にあたっている。あかちゃんはぎゅっと目をつぶって、もっとないた。


 わたしは、わかった。

 まぶしいんだ。

 外はこんなにぴかぴかなのに、あかちゃんは、いっぺんにぜんぶ見ようとしてる。ためてたおはなしが、いっぺんに出てきちゃったんだ。

 わたしは両手をおわんのかたちにして、あかちゃんの目の上にかぶせた。手の中に、小さいかげができる。

 あかちゃんは、なくのをやめた。

「ほらね」と、わたしは言った。「ちょっとずつで、ええねん」

 それから、ゆびを一本だけひらいて、ほそい光を、ひとすじ入れてあげた。


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