1章1話「イフの続き」
この作品に興味を持っていただきありがとうございます!
「イフの続きを、いつか聞かせてね」
その言葉だけが、心のどこかから響いてくる
……もし、誰かを救えるのなら
……もし、英雄になれるのなら
そんな〈可能性〉ばかりが自然と頭の中に浮かんでくる
どうして、そんなことを思ったのか
自分でも分からない
けど……
「僕が描く世界なら、僕は好きになれる」
自分の選択で未来は変えられる
その根拠のない強がりが
僅かな自信となり、
僕を突き動かしてくれる
「僕は英雄を目指す」
僕は星空を見上げ、静かにそう誓った
「おはよう想像者」
目の前には、見知らぬ少女
「目を覚ましたのね」
「あなたに会えて、本当に嬉しいわ」
優しく微笑んだ少女は
「また会いましょう」
とだけ言い残し、
次に目を開いた頃には
彼女の姿はどこにも見当たらなかった
覚えていたのはそれだけ
それから
何も分からないまま
あてもなく歩き続け
気づけばアルサリス帝国に辿り着いていた
「ここが帝都……」
道中でも見てきたが、本当に酷い
見渡す限り、瓦礫の山が積み重なっている
足場は悪いし、喉はカラカラ
わずか3日で帝国が滅亡したとは……
現実をまだ受け止めきれない自分がいる
それでも、幻影は街を彷徨うのをやめてくれるわけじゃない
「生存者は……もう、いないのかな」
正直この状況で生き残る方がおかしい
そう言い聞かせても、心が拒絶してくる
違う結末を迎えられたならな
物語の〈英雄〉ならこの景色を日常に留められたのかな
違う結末なんて、今さら願っても仕方ないのに
それでも、心のどこかで
幸せな世界があったんじゃないかって考えてしまう
深呼吸して、一口、水を飲む
……よし
それより、生存者を探そう
とはいっても、かれこれ3時間は探しているんだけど……
何も見つからない
もう誰もいないかもしれない
でもそれは足を止める理由にはならない
たとえ、それが自己満足だとしても
探すのをやめたくない
「……暑いなぁ」
そう言って少年は瓦礫を越えながら
城だったものへ向かっていく。
「ここも酷い……一応見ていくか」
ほとんど壊されて、残っていない
以前まで栄えていた面影もまるでない
あそこに誰かいる?
視線の先には玉座と傍ら佇む少女。
「女の子?」
自然と僕の目は彼女に吸い寄せられていた
「君、大丈夫?」
何故一人でここにいるんだろう……
「……」
返事がなかった少女を心配し、少年は駆け寄った。
「君、名前は?」
少女は少年の問いに長い間応えようとしなかったが、しばらくするとポツリと呟いた。
「……ない」
………
風の響きも幻影の呻き声も聞こえない
「そっか……」
少年は玉座のそばに落ちていた王冠を少女の頭に乗せ言う。
「今から君の名前は、ファイ」
王冠に付いている青い宝石が太陽に照らされキラリと輝いていた。
少女は不思議そうな目で僕を見つめる
「どうして、名前をくれたの?」
「名前を付けたくなったから」
即答。
「それだけ?」
「それだけだよ、自分でも理由を知りたいぐらい」
ファイが僕の顔を見上げる。
「変なの」
「よく言われる」
「ねぇファイ、僕と一緒に来ない?」
小さくファイは頷く。
そういえば僕にも名前がなかったな……
自分が納得できる名前を探していたから
でも、もう迷子じゃない
「英雄になる」か
そう少年は心の中で呟く
「僕はイフ、これからよろしく」
「……うん」
「行こうか、君に新しい景色を見せてあげる」
二人は城から少しずつ遠ざかっていく。
夕暮れはいつの間にか過ぎ去り、空には無数の星空。
「もう夜だね」
「…うん」
僕は空を見上げる
「僕は星が好き」
星空に魅了される
「自分でも分からないけど、何よりも好き」
ファイは不思議そうに僕を見つめる
「私も……好き」
どこまでも続く星明かりが僕の心を照らしてくれる
「ねぇ、ファイ」
「なに?」
「幸せって何だと思う?」
ファイは少し驚いた顔をする
「急だね」
「星を眺めてたら、少し思い浮かんだだけ」
しばらく沈黙が続く。
ファイも星空を見上げる。
「みんなが生きていること……かな」
その声は、砂時計の砂のようにすっと通り抜けた
再びの静寂。砂はまだ上に溜まっている。
「僕さ、分からないんだ」
「幸せも、英雄も……僕自身も」
最後の一言だけ、風に溶けるように呟いた
「星も風も教えてくれないから」
「だから、知りたい、この探究心は誰にも止められない気がする」
僕は星に手を伸ばす
「ねぇ、ファイ」
「僕と旅に出ない?」
彼女が驚いた様子でこちらを見つめてくる
「どうして私?」
助けたかったから?
一人だったから?
どの答えも夜風に吹かれて通り抜けてしまう
「……分からない」
「でも……」
「君となら、誰も見たことのない景色を見れる思うから」
ファイはクスッと笑う。
「いいよ」
「私に幸せな景色を見せてね、イフ」
その笑顔は、夜空に浮かぶ星みたいに綺麗に見えた。
「あぁ、任せて」
よし、今日を長い旅の始まりの1ページとしよう
きっと、夜風も僕たちの門出を祝福してくれている
旅の終着点で皆と笑い合えるその日が来た時、
僕は自分自身を好きになれているのかな
この作品が面白い!続きが気になった!など思われましたら是非、評価やブックマークをお願い致します!
(*´▽`)




