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3日目

「起きなさい。」



「起きなさいってば!」

肩を揺さぶられて目が覚めた。

この声は、確かラディと名乗った女だ。


スープを飲んだ後、眠ってしまったらしい。

上半身を起こすと、背中痛みは無くなっていた。


「無理すンじゃないよ。毒矢を受けてまだ日が浅いんだ。」

「ラデイ、支えてやンな。」

あの“戦場の女”の声だ。湯浴みでもしたのだろうか。血と汗の体臭がしない。


「御意。」ラディが背中を支えてくれた。


「俺はどれくらい眠っていたんだ?」

無理矢理起こされたので、まだ頭が回っていない。


「お前がスープを飲んだのが昼前で、今は宵の口だ。」

ラディの声が淡々と応えた。


「さて、待たせちまって悪かったね。いろいろと、ヤボ用があってね」

何で、ただの捕虜にこんなに丁寧に言うのだろう?身分は高そうなのに。

しかし、口調は粗野だ。素なのか演技か・・・・


「ハハッ!ワドルの言った通りだね。お前さん、考えが顔に出すぎだよ。根は生真面目なんだね。きっと。」

「まあ、腹芸が得意じゃないのはいいこった。腹の探り合いも嫌いじゃないが、やり過ぎると胃がもたれるンでね。」


そりゃそうだ、こちとらただの兵士だっての! ー顔が赤面するのが感じられた。


「まぁ、こっちも単刀直入の方が性に合ってるンだよ。」

「お前さんが名乗らないのも、軍人なら当然だよ。情報は安易に渡さない方が良いからね。」


本当に心を読まれているんじゃ・・・って顔に出ているのか。今俺はどんな顔をしているのだろう・・・


「じゃぁ、お互いの状況を整理するとしようか。といっても現時点で話せると思った部分でいい。こっちも同じだからね。」


裏表がない人物のように思える。悪い気はしないな・・・素なら。


それから、「まずはこっちから喋れる範囲を話す。」といって、しゃべり始めた。

曰く、

○自分の隊が通常の警備巡察中に“国境沿いに中規模の盗賊が潜伏している”と、ある筋から報告があった。

○国境に最寄りの村に到着すると、まだ襲撃は無かった為、周囲を警戒していた。

○そこに、敵性集団を発見し迎撃した。

○先端を開いた途端、指揮官らしき人物が背後から射られ、倒れると同時に敵はすぐ撤退した。

報告のある限り、負傷者はこの一人のみ。


「まぁ、だいたいこんなモンかね。そうそう、お前さんの背中に刺さっていた毒矢の毒はゲナイの毒だったよ。暗殺用だね。」

聞いたことがある。確か、すぐ効果のある毒だったはずだ。


「まぁ、そんな顔にでもなるさね。お前さんが生きているのは、単に運が良かっただけ。毒矢が当たったのが、前掛け鎧の背中側ベルトの交差部分だったから、矢じりの先端しか刺さらなかったんだよ。射手のウデも悪かったがね。」

俺はいま、どんな顔をしているのだろう・・・


「それでも、意識の混濁と視力がなくなるってんだから、強い毒だねぇ。」

つまり、俺を射た人物は本気で殺しに来ていたということだ。


「その様子だと、“ハメられた”ってある程度予測していたね。」


「!!!」


「ハハハッ!そんな顔をするんじゃないよ。これは褒め言葉だよ。お前さんは、目が見えなくなってから特に取り乱すこともなく、冷静に状況の把握と分析をしているように見えたからね。」

「普通の人間なら、突然目が見えなくなったら、取り乱すもんさ。」


やはり、この人物は領内でそれなりの地位にいる様に思える。人の行動をよく見ている。

郷では、人の行動を観察する大切さは、小さい頃から教えられてきた。

それがよくできる人物ほど、上に立つとも。


「さて、次はお前さんの番だね。」

来た。さて、どこまで話したものかー っとその前に


「その前に、一つ質問がある。」


「何だい?」


「あなたは、この領内では身分の高い人物のように思える。なぜ、一兵卒の私にここまで良くする?懐柔するメリットもなければ、必要もないのに。」


「ふーむ・・・・・今は、アタシがお前さんを気に入った。ということで、どうだい?」


「“今は”ということは、いずれ話すと?」


「その時がくればね。まぁ、実際アタシはお前さんを気に入っているのは嘘じゃないがね。」


「ふーーっ。わかった。話せる範囲で話そう。」

ここで、押し問答をしても意味はない。


「やっぱり。お前さんは、頭の回転がいいね。道理を弁え、筋が通る。話が早いのは助かるよ。」


俺は、あの日の朝からのことをかいつまんで説明した。

○あの日、上官から威力偵察という名の越境攻撃を命ぜられたこと。

○目標は国境近くの砦とその道中の村2つ。

○自分の隊だけで作戦行動することに違和感があったが、後から本隊が進軍するとのことらしいので、とにかく行動に移ったこと。

○同日、昼過ぎに最初の村が見えてきたところで敵守備隊と遭遇し、戦端を開いた途端背中に激痛が走り、記憶が途切れたこと。


「後は、知っての通りだ。」

説明の間、相手は一言も口を挟まなかった。


「そうかい・・・・・思っていたより根は深そうだねぇ。」

!? どういう意味だ?


「そんな顔しなさんな。今はまだ、推測の域を出ないから話せないよ。」

いきなり厳しい口調になった。彼女にとって状況は良くないらしい。


「すまないね。至急確認することができたから、邪魔するよ。何かあれば追って指示する。それまで待機しといてくれ。」


そう言うと、足早に立ち去った。


ラディの声が

「スープを運ばせる。今日はそれを飲んで寝ろ。」


そう言うと、直ぐに運ばれてきた。


それを飲むと、やはり眠くなり記憶が途切れた・・・。“捕虜”というのは確実らしい・・・





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