表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

1日目

素人投稿です。つれづれなるままに書きました。

不定期投稿です。ご容赦ください。



・・・・剣戟・・



剣戟・・・・の・・音?



剣戟の・・・・音!!


ウッ!・・・・背中に激痛が。


いつの間にか地面にうつ伏せで倒れている。


土の匂い。鉄のにおい。血の臭い。


両手足は動かせる。 大丈夫、まだある・・・。 息も吸える。

しかし、背中が痛む。 力が入らない。


ぼやけた焦点の中に、誰かと誰かが切り結んでいる。


「ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドン、」

― 撤退の合図だ。 どうやら、この隊は見捨てられたようだ。 やはり、というべきか。


ぼやけた視界の片方が距離をとり、踵を返し走り去った。

一瞬こちらをみて「すまない」と声をかけながら。


身を起こしたいが、力が入らない。 顔だけでも上げて周りを把握しyo

― ズドッ!

目の前に剣が突き立てられた。 さっき切り結んでいた片方だ。


「動くな。死んでないのなら、お前は捕虜だ。じっとしてな。」


よく見えないが、声を聞く限り女性のようだ。―しゃがれた声だ。

「どう・・・・な・・っ・・・た」

うまく声がでない。息は吸えるが、苦しい。


「喋るな。動くな。じっとしていろ。 死にたくなければね。」

そう言って視界から消えた。

同時に意識が遠のいた。




― どれほど時間がたったのだろう。まだ、背中が痛む。


体に伝わる振動から察するに、荷馬車に乗っているらしい。

それに、どうやら目隠しをされているのか真っ暗だ。ただ、妙なことに拘束は手だけようだ。


「だレか・・・ぃひる・・・のか・・」

やはり声が出ない。かなり喉が渇いている。


「あぁ? 気がついたのかい。 いきなり声をだすンじゃないよ。」

戦場の声の主だ。


「水だ。飲みな」

革袋らしい物を俺の手に乗せた。


一気に飲むと、ようやく人心地がついた。


「あの・・・ここは?」

自分の声じゃないような、か細い声だ。


「ご存じのとおり、幌馬車の上さ」

記憶の声よりも、若い感じの声だ。しゃがれた声というより、ハスキーボイスだな。

落ち着くと、なんだか薬品の匂いが鼻に付きだしてきた。それに、雨が降っているらしい。

行軍するのに、捕虜に屋根付きを提供するなんて・・・


「どのくらい眠っていた・・・・・のですか?」

戦場に立って幌馬車に乗れるということは、女性であっても位の高い人なのかも。

しゃべり方は置いといて。


「3日だねぇ」

「3日?」


「お前さん、名は? 装備からして50人長か100人長クラスだろ?」


「・・・・・」


「・・・まぁ、いいさ。背中はまだ痛むかい?」

「はい」

捕虜といえども、安易に情報を敵に渡してはならない。帰った時が怖いし、郷の一族がどうなるかわかったものではない。


「失礼します。伝令がきました。」

― 別の男性の声だ。側近か護衛か・・

「今行く。」


程なく、幌馬車が止った。


しばらく外で会話している声が聞こえたが、内容まではわからない。

会話が終わると、

「今日はここで野営だ。お前さんはそこにいな。 メシは喰えるかい?」


俺は首を振り、

「あの・・目隠し・・・取ってもらっても?」


「・・・・・・・・そいつぁ出来ないねェ。」

そりゃそうだ。 俺は捕虜なのだから。


「目隠しなんてしちゃいないからね。 お前さん、目が見えてないんだね。」

―え? いまなんtー

「多分、背中に当たった矢のせいだろ。毒矢だったからねぇ。」

―え? 矢? 毒矢?

「ま、しっかり養生しな。どうやら国には帰れないみたいだからね。あと1、2日で領都だ。それまで辛抱しな。」

足音は遠ざかっていった・・・



え?目が見えていない?なぜ? 毒矢?なぜ?

ぐるぐる考えが巡るにつれ、だんだん記憶が鮮明になってきた。


あの日、国境警備の任に着いていた50人隊の長として、早朝に500人隊の隊長の執務部屋に呼び出され、威力偵察という名の越境攻撃を命ぜられた。目標は国境近くの砦とその道中の村2つ。


隣国とは戦争状態にはあるものの、ここ2,3年は小競り合いもなく、あえて刺激をする必要はないうえに、俺の隊だけで作戦行動することに違和感があったが、後から本隊が進軍するとのことらしいので、とにかく行動に移った。


同日、昼過ぎに最初の村が見えてきたところで敵守備隊と遭遇し、戦端を開いた途端・・・・・・

背中に激痛が走り、記憶が途切れた。



なんだか腑に落ちない任務だなとは思っていたが・・・・どうやらハメられたらしい。

敵にか、味方にかは判らないが。

身分も高くない50人長にどんな利用価値を見い出したのやら。


記憶が鮮明になってくると、少し落ち着いてきた。

しかし、目が見えないとは。一時的なものか、それともずっと・・・?

考えても仕方ない。 と思う事にした。 実際、今できることは少ない。


俺の隊が警備していた国境付近の隣国側で“領都”といえば、確かロナドマ辺境伯領の領都ナジナだ。国境から約5日の距離だったか。国境から近いので道中に砦がいくつもあるらしい。なかなか堅牢だとか。


俺は、そこまで護送されているのか・・・。

最後に“すまない”と言った声は、確かクトリだった。副長の。 

何に対しての“すまない”だったのだろう。

倒れた戦友を見殺しにすることか、それとも・・・・・・



どうやらそのまま眠っていたようだ。気がつくと、幌馬車は再び動いていた。


・・・何か体がおかしい。寒い。熱があるようだ。

次第にガタガタ震えが止まらなくなり、


「あ! 震え出したよ! 薬師を呼んで・・・・・・・・・」

そこでまた、記憶が途切れた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ