王都の扉
王都の門をくぐり抜けると、ルークたちは一気に都市の喧騒に包まれた。大きな石造りの建物が立ち並び、道行く人々が忙しそうに行き交っている。その姿に、ルークは異世界での生活が少しずつ現実味を帯びてきたことを感じた。
「すごい…、やっぱり王都は違うな。」ルークが感嘆の声を漏らすと、アリスも目を輝かせながら答えた。
「はい、私も初めて来た時は驚きました。街全体が活気に溢れているんですね。」
セレスティアはその様子を微笑ましく見つめながらも、少し真剣な表情を浮かべて言った。「王都は、ただの観光地じゃない。多くの人々が集まり、情報が行き交う場所だ。気を引き締めて行動しないと、すぐに巻き込まれてしまうから。」
「そうか…。」ルークは頷き、少しだけ警戒心を持って周囲を見渡した。今までの冒険では、自然の中での戦闘やダンジョンの攻略がメインだったが、王都には人々や様々な勢力が集まっている。それだけで、危険が潜んでいることを実感した。
馬車が王都の中心街に進むと、最初に目に入ったのは、豪華な建物が並ぶ広場だった。その中央には大きな噴水があり、周囲には市場が広がっていた。さらに、その先には威厳を感じさせる王宮がそびえている。
「ここが王宮か。」ルークはその建物を見上げながら呟いた。
「はい、王宮はここから少し歩いたところにあります。でも、まずは市場で必要なものを調達しましょう。」セレスティアが提案した。
「市場か…。確かに、王都の市場は面白いものがありそうだな。」ルークはうなずきながらも、少し心配そうに言った。「でも、気をつけた方がいいよな。色々な人がいるから。」
セレスティアは軽く笑って答えた。「心配しないで。私がちゃんとついているから、危険なことはないわ。」
アリスも心配そうな顔をしていたが、セレスティアの言葉に少し安心したようだった。「私も、初めて王都に来た時は緊張していたけど、大丈夫だったわ。」
王都の市場は、色とりどりの布や食材、アクセサリーが並べられており、ルークたちが歩いているだけでも、様々な声が聞こえてくる。商人たちが声をかけ、商品を手に取ってみては買うように勧めてくる。その活気に、ルークは少し圧倒されながらも興味津々に周囲を見渡した。
「すごいな…。こんなに多くの人が集まってるなんて。」ルークは感心したように言った。
「はい、王都の市場は一番賑やかな場所の一つです。」セレスティアは笑いながら言う。「ここで何か役立ちそうなものを見つけたら、少しだけ買っていこう。」
その言葉を聞いたアリスが突然、真剣な顔で言った。「あの…、私、少しだけ行きたい場所があるんです。」
ルークとセレスティアは驚いてアリスを見た。
「行きたい場所?」セレスティアが問いかける。
アリスはうつむきがちに言った。「王都の神殿に行きたいんです。少しだけ、家族のことについて調べてみたくて。」
セレスティアは少し考えた後、にっこりと笑って言った。「それなら、私たちも一緒に行こう。もし何か問題があれば、すぐに力になるわ。」
ルークも優しく言った。「無理しなくていいんだぞ?でも、どうしても行きたいなら、付き添うよ。」
アリスはその言葉に胸が温かくなり、微笑んだ。「ありがとうございます、ルークさん、セレスティアさん。助かります。」
そして、3人は王都の神殿へと向かうことに決めた。その途中、ルークは神殿の話を聞いて、ますますアリスの家族に関わる秘密が気になってきた。アリスの家族が王都の神殿とどう関わっているのか、何か重要なことがあるのだろうか?
その疑問を胸に抱きつつ、3人は王都の神殿に足を踏み入れた。
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神殿の中は、思っていたよりも静かで神聖な雰囲気に包まれていた。白い大理石の柱が立ち並び、天井からは美しいステンドグラスが差し込んでいる。神殿の奥には祭壇があり、静かに神々を祀るための儀式が行われている様子が伺える。
アリスは神殿内をじっと見つめ、何かを探しているようだった。その表情は真剣そのもので、ルークは彼女の気持ちに寄り添うようにその背中を見守っていた。
「アリス、大丈夫か?」ルークが声をかけると、アリスは少し驚いたように顔を上げた。
「あ、はい。大丈夫です。」アリスは微笑んだが、目の奥には何かを追い求めるような強い決意が見えた。
セレスティアもその様子を見守りながら、少し距離をとって待つことにした。ルークはアリスが何を探しているのか、そしてそれがどんな秘密に繋がるのか、少し気になるところだった。
その時、神殿の一角から一人の神殿の僧侶が近づいてきた。彼はアリスを見て、微笑んだ。「お前さん、久しぶりだな。」
アリスはその声に驚き、振り向いた。「あ、シグマさん!」
その僧侶は、アリスが幼い頃に親しくしていた神殿の僧侶だった。