雷鳴の王女、もう一人の私
雷を纏った影が、迷宮の広間に姿を現した瞬間、空気が張り詰めた。
黄金色の雷光。気品ある立ち姿。
――それは、セレスティア自身だった。
「……私?」
影のセレスティアは無表情で、淡々と告げる。
「王女セレスティア。
あなたが切り捨ててきた“弱さ”の集合体です」
雷属性同士の衝突は、相殺では終わらない。
むしろ、増幅する。
影が放った雷槍と、セレスティアの雷撃がぶつかり合い、
空間そのものが震え、床が砕け散る。
ルークは直感的に悟った。
これは“戦闘”ではない。
王女としての在り方を問う試練だ、と。
影の雷は、異様だった。
派手さはないが、正確で、容赦がない。
「王女は前に立つもの。
恐怖を見せてはならない」
影のセレスティアの言葉と同時に、雷が地を這う。
それはかつて、彼女が自分に言い聞かせてきた言葉そのものだった。
雷を防ぎながら、セレスティアは歯を食いしばる。
(違う……私は、そんなつもりじゃ……)
だが、影は容赦なく続ける。
「民を守るためなら、
誰かの感情を切り捨てる覚悟はあるのでしょう?」
雷鳴が轟き、セレスティアは膝をつく。
雷×雷――属性の優劣ではない。
心の在り方が、そのまま威力になる戦いだった。
影の雷剣が、セレスティアの喉元で止まる。
「試練、ここまでです」
その瞬間、雷が弾け、
セレスティアの身体は迷宮の結界に弾き飛ばされた。
――敗北。
命は奪われない。
だが、心にははっきりと刻まれた。
「私は……一人で立とうとしていた……?」
影の最後の言葉が、胸に残る。
「あなたは王女である前に、
ただの“一人の人間”であることを忘れている」
ルークとアリスが駆け寄る。
その手を見て、セレスティアは初めて理解した。
支えられることを、拒んでいたのは自分だったのだと。
再挑戦の刻。
今度の雷は、以前とは違っていた。
セレスティアの雷は、荒々しさを抑え、
周囲を守るように広がっていく。
影のセレスティアがわずかに目を細める。
「……変わりましたね」
雷撃同士が衝突する。
だが今回は、破壊ではなく、調和が生まれていた。
「私は王女です。
でも――一人で全てを背負う存在じゃない」
その言葉に、雷が共鳴する。
ルークの剣、アリスの風が雷を導き、
三人の力が一本の光となって影を貫いた。
影のセレスティアは、静かに微笑んだ。
「それでこそ、王女セレスティア」
雷は消え、影は光へと変わる。
「あなたは弱さを否定しなくていい。
それを受け入れた雷こそが、
王国を照らす光となる」
試練クリア。
セレスティアの中に、新たな力が芽生える。
新スキル獲得:
《王雷の加護(SS)》
味方と連携するほど雷属性が強化され、防御効果も付与
迷宮を出る道が開く。
セレスティアは振り返り、仲間を見る。
「……ありがとう。
私は、もう一人じゃない」
雷は、もはや孤高ではなかった。




